【解説・考察】『プラダを着た悪魔』すべての仕事人に捧ぐ。キャラクターから学ぶ人生と仕事

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映画『プラダを着た悪魔』の魅力を仕事目線で解説!

映画『プラダを着た悪魔』キービジュアル
(C)2006 Twentieth Century Fox Film Corporation and Dune Entertainment LLC. All rights reserved.(C)2010 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

10月16日(金)に、映画『プラダを着た悪魔』(2006)が日本テレビ・金曜ロードSHOW!で地上波放送される。視聴者から放送作品を募集する「金曜リクエストロードSHOW!」の第3弾で、女性からのリクエストが最も多い作品だったとのこと。

その中身は「憧れのファッション業界でのし上がっていくサクセスストーリー!」という“理想”を描くものではない。むしろ、憧れとは正反対の「仕事への向き合い方」をエンターテインメントとして描いた、”教材”とも言える物語になっている。

ここでは、主要キャラクターである、主人公のアンディ、アートディレクターのナイジェル、先輩アシスタントのエミリー、そして鬼編集長のミランダという4人それぞれの視点から、映画『プラダを着た悪魔』の具体的な仕事での学びを記していこう。

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映画『プラダを着た悪魔』解説1:アンディから学ぶ「仕事を始めたばかりの人に必要なこと」

映画『プラダを着た悪魔』場面写真
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大学を卒業しニューヨークへやってきたアンディは、超有名ファッション雑誌”ランウェイ”の編集部の面接を受ける。しかし、彼女の志望は元々ジャーナリストであり、ファッションに興味はなく、鬼編集長のミランダの名前すら知らなかった。

そんなアンディが、アシスタントの仕事を”踏み台”としか考えていないのは明らか。例えば、先輩アシスタントのエミリーに「ミランダの元で1年仕事をすれば、どこの出版社でも通用する。誰もが憧れる仕事よ」と言われて、「それはすごいですね。ぜひ採用されたいです」と率直に答える。アンディの向上心の高さを示しているようにも聞こえるセリフだが、実際は「自分が本当にやりたい“次”の仕事」、キャリアアップのことしか考えていなかったのだろう。

アンディに突きつけられたのは、度を超えた量の雑務と、無理難題の数々。彼女は必死に奮闘するが、やがて解決できなくなり、アートディレクターのナイジェルに弱音を吐く。そこでの彼の返答は、「君は努力をしていない。グチを並べたてているだけだ。甘ったれるんじゃない!」という手厳しいものだった。

アンディは“具体的な解決策”として、ナイジェルの助けによってファッション業界にふさわしいシャネルで全身を身に包む。さらに、ファッション業界の知識のみならず、ミランダが会う膨大な人数の業界人の情報も頭に叩き込むなど、しっかり“勉強”をする。働き始めた当初は、エミリーからの「デスクにずっと張り付いているように」という指示だけを守り、その場所で与えられた雑務に応えていただけのアンディが、能動的に努力をするように成長して行くのだ。

これは“社会人1年目”を経験するほとんどの人が通る道なのではないだろうか。初めは責任のある仕事は少なく、先輩からの指示に応えたり、雑務をするばかり。アンディはプライドだけは一人前でいるため、ただ目の前の業務をこなしているだけの仕事はつまらないし、グチもこぼしたくなる。

だが、アンディが自分をファッションから変えようとしたように、何か1つだけでも具体的な解決策を講じてみたらどうだろうか? 自分が興味のない仕事でも、面白くするため、そして誰かの役に立つためにできることはあるんじゃないか?

序盤のアンディの“うぬぼれ”からの成長ぶりは、「仕事を始めたばかりの人に必要なこと」を教えてくれる。それは、与えられた仕事をただこなしたり、文句を言ったりすることではなく、能動的な努力や勉強なのだ、ということだ。

映画『プラダを着た悪魔』解説2:ナイジェルから学ぶ「仕事への敬意」

映画『プラダを着た悪魔』場面写真
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前述した、アンディを叱咤激励したアートディレクターのナイジェルは、こうも続けている。「ファッションは美術品よりも偉大だ。日々身にまとうものだから」「雑誌は輝かしい希望の光なんだよ。6人の兄弟と共に育ち、サッカーの練習だと偽り、実際は裁縫部に通って、毛布の中でランウェイを読んだ少年にとってはね」と。

この作品を通して、ナイジェルからは「仕事に敬意を払うこと」の大切さを何よりも教えられる。「誰もが命を投げ出してでも就きたい」ほどの、子ども時代からの“希望の光”であったファッション雑誌での仕事を、アンディに「どうでもいいもの」と捉えられては、たまったものではないだろう。

ナイジェルは、そんなアンディに皮肉たっぷりに「この超巨大産業の本質は、内なる美(Inner beauty)だ」とも言う。この時のアンディはまだファッションだけなく、その内面さえもダサいのだと、暗に訴えていたのだ。

個人的に、ナイジェルの仕事で大好きだったのは、朝一番に、鬼編集長のミランダが来る直前に「戦闘態勢につけ!」と社員に告げることだった。それは大袈裟でもあるが、全員に緊張感を高めるための重要な仕事でもある。

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映画『プラダを着た悪魔』解説3:反面教師的にエミリーから学ぶ「プライドの高さ」

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エミリーはアンディに仕事を引き継ぎ第1アシスタントに昇格した先輩だ。彼女は仕事熱心ではあるが、プライドが高すぎるばかりに“自分のこと”しか考えられないような節があった。

例えば、序盤にエミリーはこう言う。「いい? 私とあなたの仕事は違う。あなたはコーヒーや雑用の担当で、私はミランダのスケジュールやアポイントや経費の管理をする。秋のコレクションシーズンにはパリに同行する。オートクチュールを着て、ショーやパーティーに参加して、デザイナーたちにも会う。最高よ」と。エミリーはアンディの“その先”を考えようともせずに、一方的に自分の仕事を押し付けるばかりか、理想像をあけすけに口にする。

エミリーは「ミランダ宅への本の届け方」などをアンディに伝授するが、それも詰まるところは「あなたがちゃんとしないと私の首が飛ぶから」という、自分本位な理由が大半を占めていたのではないか。その時の「(家の人間には)誰にも話しかけないで!あなたは透明人間!」というアドバイスも、トラブルを第一に避けたいがための言い分にも聞こえてくる。物語を通して示唆に富んだアドバイスをくれたナイジェルとは対照的だ。

そもそも、エミリーには“見る目”もなかったのだろう。面接にやってきたばかりのアンディに「これって人事部の悪い冗談かしら?」と言い放ち、ミランダにも「私が観た限り問題外です」と決め付けているが、ミランダ本人は「面接は私が自分でやるわ。あなたが通した2人は全然使えなかった」と言っていたりもするのだから。

そんなエミリーは体調を崩し憔悴していき、モニターに向かって「私は仕事が大好き仕事が大好き仕事が大好き」と呟いたり、スリムに見せるために絶食するばかりか「倒れそうになったらチーズをかじる」とまで言い張る。目標が第一になりすぎるが故に、他のことが見えていない、空回りしているような印象もある。

プライドが高すぎたり、後輩の能力を過小評価してしまうことで、結果的に自分の首を締めてしまう、というのは、先輩になった多くの人が注意しなければいけないことではないだろうか。アンディ以上に、エミリーの姿は反面教師的に学べるところが多い。

映画『プラダを着た悪魔』解説4:無茶苦茶にも思えるミランダの「ポテンシャルの引き出し方」

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鬼編集長のミランダは、今の基準からすればはっきり言ってパワハラし放題の迷惑な上司だ。帰社のたびに上着をアンディの目の前に脱ぎ捨てたり、雷が轟く嵐の中でも「こんなのただの霧雨でしょ」と言って娘たちの発表会へ行く飛行機のチャーターを頼んだり、犬の散歩という完全にプライベートな仕事を部下に押し付けたりする様は、デフォルメしたものだとしても“やりすぎ”に思えてしまう方も多いだろう。

だが、その最たるものとも見える「まだ出版されていない『ハリー・ポッター』の最新刊を娘たちに届ける」という命令については、アンディの“可能性”を見据えたうえで、「この編集業界で必要な人脈を築けたのか?」ということをテストしたようにも見えた。むしろ、重要な自身の仕事に直結しない、娘のためというプライベートであることが、テストであるという証拠なのではないだろうか。

アンディは嵐の時の飛行機のチャーターはできなかったが、見事に『ハリー・ポッター』の最新刊を、しかも製本して電車の中で双子に読んでもらうという配慮もできていた。さらには、ミランダが飲むためのコーヒーも用意していて、いつものように「以上よ」と口癖を言ったミランダは、振り返って自然にそのコーヒーを飲む。この時、アンディはミランダの期待を完全に上回った。ミランダの言動は無茶苦茶に思える時もあるが、実は部下のポテンシャルを引き出すこともできているのだ。

また、物語の序盤、デザインの違いを理解しようともせず失笑をしてしまったアンディに対して、アンディが着ている大衆向けのセーターは「大市場と無数の労働の象徴」であり「私たちが選んだもの」だと、ミランダらしい言い回しでそのバックグラウンドを告げるシーンがある。この時のアンディは「周りの人間を不愉快にしないと気が済まないのよ!」とミランダを批判していたが、実のところアンディは自分の“無知”ぶりに気付いていなかった。ミランダは、ナイジェル以上に(嫌味ではあるが)誰かの浅はかさに気づかせる話術に長けているとも言えるだろう。

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映画『プラダを着た悪魔』解説5:アンディとミランダ、それぞれの選ぶ道が示すもの

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※以下は映画の結末に触れています。観賞後に読むことをおすすめします。

アンディとミランダのいちばんの違いは、仕事のために家族や恋人や友人を犠牲にできるか、ということだった。アンディは恋人とケンカをするものの、最終的には仕事を捨てて彼の元へと戻った。一方で、ミランダは終盤にメイクもしていない姿のまま涙を流し、「マスコミは夫を追い出した“雪の女王”だと書き立てるわ。私はどう書かれようが構わないけど、子どもがかわいそう」と口にする。

この「仕事と、家族や友人や恋人、どちらを優先するか」ということは、多くの人が必ずぶつかる、永遠の難題だろう。

アンディと恋人の関係を横で見ているナイジェルには、恋人や家族との関係性が壊れることをむしろ「昇進の証」のようにとらえているような節がある。それは、ナイジェルがすぐ側で見てきたミランダの人生そのものだったのかもしれない。

最後のアンディとミランダの会話は、その究極の選択の1つの答えだ。
「もしも、この世界を望んでいなかったら?」
「バカを言わないで、誰もが望んでいることよ。誰もが憧れているの」

ミランダは、大切な家族(や恋人や友人)を犠牲にしてでも(ファッション業界での)成功を掴むということを、「誰もが望み憧れていること」と肯定する。だが、アンディは「自分はそれを望んでいなかった」のだと、改めて気づく。

アンディは「1年はあそこで我慢する。そうしたら望みの仕事につける」と豪語していたが、実際は1年に満たなくても、ミランダからの(やはり皮肉まじりの)推薦もあって、自分の望む仕事に就くことができた。理不尽なことを経験し、自分とは真逆の価値観でいた人物の生き様を知り、思いがけない形で夢を実現する……これも、人生にはよくあることなのかもしれない。

また、最後のシーンでアンディは今までの高級ブランド服ではない「自分のお気に入りの服」を着ている。これは、彼女が成長していないということではなく、「自分らしい生き方を見つけた」という証だろう。『プラダを着た悪魔』は様々な局面で仕事への向き合い方を教えてくれる映画であるが、「どのような生き方を選ぶか」という大局的な人生の選択に至るまで、重要な知見を与えてくれている。

『プラダを着た悪魔』の放送情報

2020年10月16日(金)よる9時~日本テレビ系にて放送! ※一部地域を除く
番組公式サイト

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ヒナタカ

>インディーズ映画や4DX上映やマンガの実写映画化作品などを応援している雑食系映画ライター。過去には“シネマズPLUS”で、現在は“ねとらぼ”や“ハーバー・ビジネス・オンライン”などで映画記事を執筆。“映画レビューブログ”も運営中。『君の名は。』や『ハウルの動く城』などの解説記事が検索上位にあることが数少ない自慢。

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