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香取慎吾出演のSF映画『ジュブナイル』の魅力を改めて考察する【祝・『凪待ち』公開】

今から18年前の2000年7月に公開された映画『ジュブナイル』を紹介

本連載では、月イチで名作映画を、過去に公開された月に合わせて紹介していく。3回目となる今回は、今から18年前の2000年7月に公開された『ジュブナイル』。

『ALWAYS 三丁目の夕日』や『DESTINY 鎌倉ものがたり』など大ヒット作を続々と世に送り出す山崎貴監督のデビュー作で、当時SMAPのメンバーであり『透明人間』『ドク』『いちばん大切なひと』など続々とテレビドラマで主演を務めていた香取慎吾のキャスティングも話題を集めた作品だ。その魅力と見所がどこにあるのか、解説していこう。

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少年少女たちとロボットがひと夏の冒険を繰り広げる!

タイトルの“ジュブナイル”の本来の意味は「少年期」。もともとは仮題だったのだが、他には思い浮かばなかったということでそのままタイトルがつけられたそうだ。物語の内容はまさに少年期。『スタンド・バイ・ミー』などと同様に少年(少女)たちのひと夏の冒険を綴った作品となっている。

2000年の夏休み、4人の少年少女はキャンプ場で謎の超高性能ロボット・テトラと出会い、押入れで飼い始める。知識を増やしたいというテトラの要望を聞いた彼らは成り行きで物理学者の青年の協力も得ることになるのだが、その頃に地球には未知の宇宙人も降り立っていた……というのが基本のプロット。可愛らしいロボットが登場するSF要素と、宇宙人がそのロボットを狙っているという陰謀、そして“秘密”の冒険と、大人から子供までワクワクできる要素が揃っている。

さらに、子供たちが主人公となっていることだけでなく、レトロフューチャー的なセットもあって、随所で「あの頃はこうだったなあ」とノスタルジーを喚起させられる作りにもなっている。2019年の今に観ると、当時では最先端だった“初期型のプレイステーション2”などのアイテムにも懐かしさを覚えることができるだろう。

また、山崎貴監督は過去の名作映画にオマージュを捧げる、または引用することにてらいのない作家であり、今回は岩井俊二監督の出世作にして後にアニメ映画化もされた『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の他、『E.T.』をはじめとするスティーブン・スピルバーグ監督の冒険活劇映画にも影響を受けたとも明言しており、実際にそれらのエッセンスが随所に感じられる。とにかく、“子供が活躍する映画”を観たい、あの頃のことを思い出したい、知りたいという方に『ジュブナイル』は掛け値なしにおすすめできるのだ。

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何重にも『ドラえもん』の影響を受けていた!

宇宙人が何やら怪しい企みをしており、やがて地球が危機に陥る……という物語運びであるはずなのだが、全体的な雰囲気は良い意味で緊迫感がなく、ほのぼのとしている。少年少女は可愛いロボットのテトラと無邪気に交流していて、大人の物理学者や従姉妹のお姉さんへの対応もどこか危機感がなく、中盤からの宇宙人と少年少女たちとの会話ややりとりもどこか間が抜けていてクスッとさせられたりもするのだ。

実はこの「地球の危機のはずなのに緊迫感がない」というのは完全に意図的なもの。脚本も担当した山崎貴監督は「“のんき”な戦いを描きたかった」と明言しており、それはあの『ドラえもん』にリスペクトを捧げたことも理由にある。具体的には、「完全にSFの設定であるが、身の回りの範囲での冒険が描かれる」「いきなり宇宙に行くなどでなく、日常の延長線上での物語になっている」といった『ドラえもん』の作品構造を、この『ジュブナイル』で踏襲するというねらいが山崎貴監督にはあったのだ。

さらに、本作は1998年頃に『ドラえもん』ファンが発表した“最終回”の同人マンガが下敷きになっている。その内容は当時インターネット上で大きな反響を呼んでおり、その話を友人から聞き、実際に読んだ山崎貴監督が、“居ても立っても居られない”ほどに感動したことがきっかけで『ジュブナイル』の企画がスタートしたのだ。当初は脚本にもこの同人マンガが原作であると明記されていたのだが、著作権上の問題や同人マンガの作者の意向から、実際のエンドクレジットにはその作者名と「for Mr. Fujiko・F・Fujio(藤子・F・不二雄先生に捧ぐ)」というメッセージが添えられるようになった。

つまり、『ジュブナイル』は『ドラえもん』の“日常の範囲での冒険”という作品構造を踏まえていると同時に、その『ドラえもん』から派生した同人マンガがストーリーのベースになっているという、何重にも『ドラえもん』からの影響がある作品なのだ。

もちろん山崎貴監督は『ドラえもん』をはじめ『エスパー魔美』や『パーマン』など藤子・F・不二雄作品のファンであり、2014年には原作マンガの有名エピソードを再構成した3DCGアニメ映画『STAND BY ME ドラえもん』の共同監督および脚本も勤めることになる。実写映画を主とする監督で、ここまで『ドラえもん』とゆかりのある作家も珍しいだろう。

その『ドラえもん』の同人マンガの内容を知っていると、この『ジュブナイル』の結末部分には納得できることが多いはずだ。そこには、藤子・F・不二雄作品にある、サイエンスフィクションとしてのSFではない、“すこし・ふしぎ(SF)”としてのジャンルの魅力も間違いなく内在している。『ドラえもん』はもちろん、藤子・F・不二雄のファンという方にとっても『ジュブナイル』は必見作だ。

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山崎貴監督の作家性が存分に表れたデビュー作だ!

正直に言って、『ジュブナイル』は決して洗練されている作品とは呼べないだろう。緊迫感がないのは意図的だとは前述したが、それにしたって宇宙人の『ターミネーター2』を思わせる擬態能力をサスペンスに生かせていないのは勿体無い。主人公の成長物語も十分に描けているとは言い難く、脚本に未整理かつ甘いところがあるのも否めない。宇宙人のまさかの“弱点”の設定には、良い意味でも悪い意味でも苦笑してしまう方もいるだろう。当の山崎貴監督も『ジュブナイル』は作品としては大成功したと自負している一方、「主人公をもっと“のび太的なダメ人間”にして成長させるべきだった」という反省もあったそうで、小説版でそれを踏まえた修正や変更が加えられている。

しかしながら、『ジュブナイル』にはそうした欠点を補って余りある魅力がある。遠藤雄弥鈴木杏など現在も活躍する俳優の子供時代や、“オタクっぽいけど気の良い青年”を演じた若々しい香取慎吾など、当時でしか表せない俳優の魅力を切り取っている。CGやVFXも十分に世界観や設定に説得力を持たせているし、何より、SFの設定を日常に落とし込み、少年少女の冒険を描いている日本の実写映画は今では貴重な存在だ。『ドラえもん』をがベースにあり、多くのオマージュがあるとはいえ(だからこそ)、実写映画ならではの確実に“他にはない魅力”を備えているのは間違いない。

また、「デビュー作にはその人の作家性が全て詰まっている」というのは良く聞く言説であるが、この『ジュブナイル』も山崎貴監督の価値観や“やりたいこと”が存分に表れた作品とも言えるだろう。山崎貴監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』の大ヒットのため“泣かせる人情系大作映画”のイメージが強いかもしれないが、オリジナルのSF映画を予算の厳しい日本の環境でやりきった『Returner リターナー』や、人気マンガを実写映画化しハードな残酷描写からも逃げなかった『寄生獣』などSF路線の映画も手がけており、こちらのほうが本来の資質や作家性に合っているのかもしれない

『ジュブナイル』はセットから映像表現まで山崎貴監督のSF(サイエンスフィクションだけでなく藤子・F・不二雄的なすこし・ふしぎ)への愛情がいっぱいで、その作家としての個性も光っており、多少の拙いところがあっても微笑ましく観られるという……デビュー作ならではの“初々しさ”も含めて味になっている、やはり愛してやまなくなる作品なのだ。

余談ではあるが、ロボットと少年少女の交流を描いた日本映画には2005年の『HINOKIO』もあり、ジュブナイル(少年期)ものでは2014年の『瀬戸内海賊物語』や『ハロー!純一』なども挙げられる。いずれもまずまずの評価を得ている一方、広く知られた作品とは言い難い。しかし、アメリカでは80年代のジュブナイルものの魅力を現代で蘇らせることが一種のトレンドになっており、Netflixオリジナルドラマの『ストレンジャー・シングス』は大反響を呼び、スーパーヒーロー映画の『シャザム!』や、少女とロボットの交流を描いた『バンブルビー』も往年のスティーブン・スピルバーグ作品を彷彿とさせる作風になっていた。この機会に、『ジュブナイル』のようにノスタルジーを喚起させる日本映画も製作されないだろうか……、と淡い期待を抱かずにはいられない。

なお、山崎貴監督は2019年だけで『アルキメデスの大戦』(7月26日公開)、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(8月2日公開)、そして先日発表されたばかりの『ルパン三世 THE FIRST』(12月6日公開)と、3本も監督(『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は総監督)と脚本を務めた作品が公開されるという大活躍ぶりだ。さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは開幕式・閉幕式の演出を手がけることも決定している。今後も日本を代表する映画監督として、ビッグプロジェクトを任されることになりそうだ。

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香取慎吾主演作『凪待ち』も要チェック!

『ジュブナイル』は香取慎吾が印象に残る好演をしている。子供たちを導く物理学者の大人……と言うには語弊がある幼さや頼りなさがあるのだが、それも含めて香取慎吾でしかなし得ない、親しみやすいキャラクターを見事に体現できている。

『ジュブナイル』から19年の月日が経った、2019年7月上旬現在、香取慎吾主演作の『凪待ち』が公開されている。表面上はギャンブル依存症のダメ男を演じるのだが、それでも「本質的には良い人間」ということを、その人間としての魅力で説得力を持たせている、「香取慎吾でなければこうはならなかっただろう」と思える存在感と演技に惚れ惚れとできるほどに、役者として成熟した姿を観ることができるのだ。

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その『凪待ち』の香取慎吾に感動したという方も、ぜひ『ジュブナイル』を観てみてほしい。当時20代前半だった香取慎吾の、本質的な魅力を最も前面に押し出したような愛らしさがあるからだ。『凪待ち』との役のギャップを踏まえると、より俳優としての実力を思い知ることができるだろう。『ジュブナイル』は香取慎吾の魅力を再発見できることはもちろん、彼の親しみやすさは少年少女たちの冒険物語という題材および、山崎貴監督の作家性とも相性が良いということを存分に感じられるはずだ。山崎貴監督の最近の作品しか知らないという方も、その原点にこの機会に触れていただきたい。

文=ヒナタカ
インディーズ映画や4DX上映やマンガの実写映画化作品などを応援している雑食系映画ライター。“シネマズPLUS”や“All About”などで記事を執筆している他、“カゲヒナタの映画レビューブログ”も運営中。『君の名は。』や『ハウルの動く城』などの解説記事が検索上位にあることが数少ない自慢。
カゲヒナタの映画レビューブログ
Twitter @HinatakaJeF

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