ヒラギノ游ゴの2兆個の趣味を1つずつ 第5回【エクストリームショッピング】

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ヒラギノ游ゴの2兆個の趣味を1つずつ

第5回のテーマはエクストリームショッピング

うさんくさい VS 好奇心

Instagramでストーリーを見ているとき、海外の謎のブランドの広告が挟まってきたことがないだろうか? ネットで見かけていいなと思ったけど、英語サイトしかなくて買うのをやめた経験は? おもしろい雑貨を見つけたけど、購入ルートがTwitterのDMしかなくてまだメッセージを送ってないって人は?
 

そういうセキュリティ上で難がありそうなところに突撃して買い物するのを、筆者は「エクストリームショッピング」と呼んでいる。
 

そもそもお金を使うことには快感が伴うものだけど、エクストリームショッピングによるそれは通常の買い物の比じゃない。購入自体がイベント化してる分、それが完遂できた=商品が届いたときに一層ヴォルテージが上がる。というかまず「詐欺じゃなかったんだ」って安心が来る。筆者は仕事柄、ヤバいサイトを見分けるリテラシーは高いほうだと思うけど、エクストリームショッピングを続けるうちにさらに少しずつ精度を上げていき、詐欺に遭ったことは未だない。一部まだ届いていないものはあるが、まだ届いていないだけだ。まだ届いていないだけだ。
 

今回はすでに届いたものの中からいくつか紹介しながら、安心安全なエクストリームショッピングのポイントをかいつまんで説明する。読み終えたらぜひチャレンジしてみてほしい。届かなくても大丈夫、まだ届いていないだけだ。
 

“暴走茨城”ジャケット

“暴走茨城”ジャケット
“暴走茨城”ジャケットの裏側

筆者にとって最初のエクストリームショッピング。これがすべての始まりだった。
 

Instagramのストーリーで友達の実家の犬や転職匂わせ投稿を眺めてると、突如現れた謎のインチキくさいファッションブランドの広告。何の気なしにクリックしてみた先のサイトでこれを見つけた。ブランド名すらよくわからないが、とにかくインパクトがすごい。
 

おそらく中国のブランドなのだけど(判断材料が少なすぎて断言はできない)、この4文字の意味がわかってるのか? 誰に吹き込まれたんだ?
発見した日はまあ買おうとは一切思わず、とりあえずスクリーンショットだけ撮って眠りについたが、翌朝起きて顔を洗っているときにはもうすでに暴走茨城のことを考えていた。恋だ。
 

意を決してECサイトに飛ぶ。価格はドル表記だったので日本円に換算してみる。1万円弱。程よい……。しかしこのどこの国ともわからないサイトに自分のカード情報を渡すのはかなり気が引ける。けどよく見るとPayPalでの支払いも受け付けていたのでふっと気が楽になった。セキュリティ上どれくらい差があるものかはわからないが、直でこのうさんくさい会社に送るよりは、世界中で使われている決済サービスであるPayPalを間に噛ませるほうがずっと安心だ。
 

商品自体について言うと、このジャケットはポケットが甘い。どういうことかというと、
 

“暴走茨城”ジャケットのポケット

ご覧の通り、ボタンの凹のほうだけがあって、凸のほうが付いていないのだ。サイト上では確認できないところで予想外の手の抜き方をしている。
そのほか、縫製も全体的に非常に大味と言わざるをえず、筆者はこの服を買ってはじめて、日本の街中で売られてる衣料品の縫製がいかに丁寧かというのを体感した。
 

Amazonで発見! 低レベルすぎるパクリ商品

いきなり海外の謎サイトで買い物するのは怖いという人のために、ここで一度Amazonで買えるヤバ商品を紹介しておく。実はAmazonにも眉唾なアイテムがかなりの数眠っているのだ。
 

バレンシアガのトリプルSというスニーカーがある。近年のダッドスニーカームーブメントの象徴的な品で、十万円以上する高級品だ。
 

直接リンクを貼るわけにいかないので、ちょっと各自一旦調べてみてほしい。パクリの酷さを味わうために、別タブで本物の画像を開いておいて見比べるのをおすすめする。開いた?
さて、そのトリプルSが、中国のパクリブランドの手にかかるとこうなる。
 

バレホイアガのスニーカー

あんまりだ。
 

本家トリプルSはそれぞれ異なる特性のソールが3層重なっているのだけど、これは雑に塗り分けただけ。ちなみにバレンシアガではなくバレホイアガらしい。
 

バレホイアガのスニーカー

sportsじゃないんだよ。靴紐は地味にがんばって本家に寄せてるのが逆にイラつく。
 

ちなみに自宅に届いて早速履いて家を出ようとした矢先、靴紐を締めたら一瞬で靴紐を通すフープが千切れた。爆笑しながらもう1足注文した。
 

バレホイアガのスニーカー42

壊れた初代バレホイアガはこの爪先の数字が43だったのだけど、この2代目はなぜか爪先の数字が1つ減っていた。なんで?
 

使用感としては、とにかくインナーソールが薄っぺらくて毎歩毎歩底が抜けるんじゃないかと思う。楽しい。
 

こちらの商品はAmazon本体サイトで買ったが、Amazonに登録した情報を外部のECサイトで流用できるAmazon Payというサービスもある。
海外謎ECサイトではPayPalに次いでAmazon Payが使えるところもよく見かける印象で、普段使っているAmazonのアカウント情報をそっくりそのまま使って買い物ができるので安心。
 

“極楽世界”マウンテンパーカー

“極楽世界”マウンテンパーカー
“極楽世界”マウンテンパーカーの裏側

こちらもブランド名が判然としない海外の謎ブランドのもの。暴走茨城もそうだけど、筆者は背中に元気のいい四字熟語が書いてある服が大好きだ。
 

“極楽世界”マウンテンパーカーのフロント

 
DISINTEGRATION
極楽世界
自由にふるまうこと。
 

パワーだけは伝わってくる。背景のルネサンスっぽい絵画は大丈夫なんだろうか。権利的に。
 

“極楽世界”マウンテンパーカーのベルト

今回の記事に掲載していないアイテムも含め、海外謎ブランドの服はやたらポケットとベルトが多く、こういったサイバーなテイストのデザインが主流らしい。このベルトなんかはひどくて、長さの調節もできず、付けても何も締まらないのでマジで何の意味もない飾りだ。
 

購入時の思い出としては、日本語で登録してあるPayPalの情報を自動でECサイトに入力し、つつがなく注文を完了したのだけど、翌日「ハロー! カスタマーサービス担当のジェシカよ。ごめんなさい、もう一度アルファベット表記で住所を送ってくれないかしら? ほら、私たちって漢字読めないのよね」的なメールが届いた。ごめんね。
似たような経験は2度3度あって、海外ECでエクストリームショッピングする際のあるあるといえる。そういったコミュニケーションも手間と思わず楽しむのがエクストリームショッピングの醍醐味だ。

ドイツからの送料込み2万円のギター

ハーレー・ベントンのジャズマスター

一見何の変哲もない、いわゆるジャズマスタータイプのエレキギターだけど、ギターを弾く人なら違和感に気づくはずだ。ざっくり言うと、あるべきパーツがない、あるいは拍子抜けするほど簡略化されてる。それにボディの面取りが甘く、本来のものより角ばっていてなんともチープに見える。こちらも「ジャズマスター」で画像検索して本家と比較してみてほしい。

ハーレー・ベントンのギター

ブランドはハーレー・ベントン。なんだか一流っぽい響きだけどドイツの超安価ギターブランドらしく、thomannという海外の音楽周辺機器ECサイトで取り扱われている。伝わる人にしか伝わらないと思うけど、ドイツ版サウンドハウスで売っているドイツ版プレイテックみたいなものだと思っている。ドイツからの送料込みで2万円しない破格の逸品! その価格設定と絶妙なチープさに惹かれて購入してみた。
 

高級感のある音色じゃないが問題なく使えるレベルの音が出てくれるし、安い割に日本では超レアなので、同じ価格帯のギターを買うときにはぜひ選択肢に入れてみてほしい。
 

ソ連のトイピアノ

ソ連のトイピアノ

Reverbという海外の中古・ヴィンテージ機材の売買をおこなうサイトで入手した珍品。旧ソ連の玩具メーカーが子供向けに開発したチープなおもちゃのシンセサイザーだ。
 

さすが亡国の忘れ形見、タッチの反応が悪くてぜんぜん意図したタイミングで鳴ってくれないけど、うらぶれたブーミーな出音がローファイ好きの心をくすぐる。サンプリングしてどうにか作曲に活用しようと思ってる。
 

Reverbには他にもこういった骨董品レベルの機材がたくさん眠っていて、眺めているだけで楽しいし、眺めているだけでは済まなくなることもしばしば。マジの沼だ。怖くてこれを買って以降はなるべくアクセスしないようにしてる。
 

ブレードペン

ブレードペン

最後は届いたばかりの「ブレードペン」。ペン先がナイフのように広がった特殊な形の万年筆だ。ペン先が広いので、ペンを滑らせる向きによって線の太さが大幅 に変わる。Dan Berry氏というUKのイラストレーターが個人で作っているものらしい。下のツイートを偶然見かけて、1分後には注文が終わっていた。
 

Twitterで「Blade nib fountain pen」を検索窓に入れると、このペンを使って描かれた絵がいくつかヒットするので見てみてほしい。筆者はイラストレーターの友達にプレゼントしようと思っている。
 

不必要という豊かさ

 
ここまでざっと現時点で届いているものを紹介した。
 

届いていないものはいくつかあり、例えばナイキのスニーカーを改造して売っている怪しいサイトや、背中に「滑走公園」と筆者の大好きな元気のいい四字熟語が書いてあるTシャツを売っている怪しいサイトからは、注文後2ヶ月以上が経とうとしてる今も音沙汰がない。けどまだ届いていないだけだろう。これまでも気長に待ってると大概はある日突然エアメールが来た。
 

以前はこんな余裕はなかった。間違いなく自分に必要なものだけを吟味して買っていた。けど、要不要ではなくプラスアルファで「これがあったら豊かだ」と感じるものを求める買い物は、必要に駆られていないぶん気楽に到着を待っていられる。
 

こういうことができるようになったのは、生々しい話だけどキャリアを重ねて金銭的に余裕が出てきたことが非常に大きい。世の一般的なお金の遣い方からすれば単なる浪費でしかないのだろうけど、筆者はこういった不必要な買い物にいちばん精神的な豊かさを感じるし、世の中的に浪費とみなされるような買い物にこそ、その人の本質が出ると考えている。なので、直近で「これは世間の人からすれば浪費なんだろうなあ」という買い物をした覚えのある人は言える範囲で教えてほしい。そういう話を聞くのが大好きだ。

文=ヒラギノ游ゴ

平成東京生まれのライター・編集者。多趣味。音楽・お笑いをはじめとするユースカルチャーについて寄稿。



イラスト=町田メロメ
Twitter:@qumolilon
HP:https://qumolilon.jimdo.com/

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