ヒラギノ游ゴの2兆個の趣味を1つずつ 第4回【トランスフォーマー】

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ヒラギノ游ゴの2兆個の趣味を1つずつ

第4回のテーマはトランスフォーマー

今回のテーマはトランスフォーマーだ。あのハリウッド映画の、乗り物がロボットに変形するおもちゃ、という程度の認識で止まっている人が大半なように思うが、実は40年近い歴史があり、世界中に強固なファンダムが確立しているディープなホビーだということを強く主張したい。

 
ロボット・メカ系の玩具の中でも変形機構に焦点が当てられた製品ゆえ、プラモデルのような組み立てや改造といった工程を楽しみたいギーク層が薄く、代わりにアメトイ文脈で楽しむ層や、親子で楽しむファミリー層が厚い、独自のファンダムが形成されているように思う。筆者自身、変形させる楽しさやプラモデルのように自分で作る必要がないカジュアルさ、アメトイのようなスタイリッシュな雰囲気に魅力を感じ、買い集めるようになった。

 
ちなみに、そもそも「乗り物がロボットに変形する」という認識自体正確ではなく、実際は「ロボットが乗り物に変形する」が順序としてより的確だろう。しかも、ロボットでありながらも彼らは地球人類同等の知的生命体だということも今一度周知しておく(早口オタク喋り)。
 

ざっくり概説

 
大まかに作品背景を説明すると、地球からはるか遠くにある「サイバトロン星」から地球にやってきたロボット生命体・トランスフォーマーの正義陣営「オートボット」と悪の陣営「ディセプティコン」との戦いを描いた物語だ。

 
初代の作品は1984年のアメリカのアニメで、そこから派生作品が次々作られ、2007年の実写映画でさらに大きく広がった。ちなみに先の「サイバトロン星」「オートボット」「ディセプティコン」という用語は、作品や国、時期によって細かに別の呼称が存在するのだが、その辺はまた別の機会に。今回は実写映画版の呼称に準拠する。

 
筆者は多くの同世代のファン同様、シリーズの1作品『ビーストウォーズ』を幼少期に観たのがトランスフォーマーとの出会い。その後、実写映画をきっかけにおもちゃを集めるようになった。ということもあり、今回は初代アニメ版から追っているベテランのファンにリスペクトを示しつつ、目を引きやすい変わり種を中心に入門者向け情報をお届けする。
 

チョロQ、靴、帽子型も オプティマスプライム

 
日本では実写映画版が公開されるまで永らく「コンボイ」の和名で親しまれてきた、主人公に該当するキャラクターでオートボットの司令官。基本的に大型トラックに変形する慣例があるけれど、動物モチーフの『ビーストウォーズ』シリーズでは「コンボイ」の名を持つキャラクターがゴリラ、ライオン、マンモスなどに変形(トランスフォーム)する。

 
シリーズを通じて多くの作品で作戦立案能力に難があり、彼が「私にいい考えがある」と口にするときはだいたい失敗する……といった話を堀り下げていきたいところだが、今回はあくまでおもちゃにフォーカスして紹介する。
 
トランスフォーマー SS-25 オプティマスプライム
 
こちらは実写映画版キャラクターの最新デザインモデルが揃った「スタジオシリーズ」というラインのオプティマスプライム。筆者は主にこのスタジオシリーズを収集している。

 
実写映画では変形機構の物理的な整合性を一切考えず、自由に変形前の姿と変形後の姿のCGをモデリングしたそうで、タカラトミーの開発チームは当初「どうやってこれをこれに変形させろって言うんだ……」と頭を抱えたという逸話が知られているのだけれど、見事技術力で課題をねじ伏せ製品化。以降、実写映画の続編が公開されるたびにマイナーチェンジして続々リリースされ、フォルムは年々洗練されているように思う。

 
この製品も非常に複雑な変形機構で、慣れるまでは変形させるのに10分以上かかるかもしれないけれど、少しずつ自分の手の中でかっこいいものができあがっていくその時間が何よりの醍醐味。
 
トランスフォーマー QTF01 オプティマスプライム
 
かわいいねえ。こちらは「キュートランスフォーマー(QTF)」シリーズのオプティマスプライム。タカラトミーの看板商品の1つ「チョロQ」同様の手のひらサイズから変形する(ただしチョロQの代名詞であるプルバック走行はできない)。

 
この「QTF」もそうだけれど、さまざまな年齢層やニーズに合わせた製品ラインが用意されていることもトランスフォーマーの大きな魅力の1つだ。

 
今販売されている実写映画版の製品は総じて変形機構が複雑で、子供には難しい。おそらくそういったユーザーの声から生まれたのであろう「ターボチェンジ」シリーズは超シンプルな変形機構を採用していて、QTFと並んで小さな子供へのプレゼントにおすすめ。
 
トランスフォーマー スポーツレーベル コンボイ featuring NIKE FREE7.0
 
こちらはナイキとのコラボ製品。スニーカーから変形する変わり種だ。スニーカーモードから変形させるときの初手がまず「靴紐をほどく」ところから始まるのがにくい。パッケージはナイキスニーカーの「あのオレンジ色の箱」を再現したもので、スニーカーマニアへの目くばせも小粋。変形後のロボットモードの足元をよく見るとスニーカーを履いていて、細部までこだわり抜いたメーカーの心意気が光る製品だ。
 
トランスフォーマー Cap Bots (オートボット)
 
かわいいねえ。続いても変わり種。今度は帽子、しかもニューエラだ。厳密にはオプティマスプライムならぬ「キャプティマスプライム」というキャラクター。頭頂部のボタンを押すと一発変形する。1つ前の製品同様、こちらも変形後の姿が帽子をかぶっていて仕事が丁寧。
 

ハイエンドモデルからベアブリックまで バンブルビー

 
今年単体主演映画も公開されたオートボットのムードメーカー。実写映画版では黄色に黒のストライプが入ったカマロに変形するあれだ。初代アニメ版『トランスフォーマー』ではフォルクスワーゲンビートルに変形した。ハチなのにカブトムシ。トランスフォーマーの中では小柄で、若く、人懐っこい。実写映画版では喋ることができないのでいまいち伝わりにくいけれど、初代では一人称が「オイラ」の典型的な末っ子キャラのムードメーカーだった。
 
トランスフォーマー MPM-03 映画10周年フィギュア バンブルビー
 
こちらは現状最もハイクオリティとされるモデル。これが発表されたときはあまりの完成度に度肝を抜かれた。実際に触っていると、再現度を高め、プロポーションをよりよくするための工夫が細部に施されていることが触覚で理解でき、感動を覚える。
 
ベアブリック x トランスフォーマー バンブルビー BUMBLEBEE タカラトミー
 
かわいいねえ。こちらはまた変わり種で、ストリートカルチャーの文脈で愛されるメディコム・トイのクマ型小型フィギュア「ベアブリック」とのコラボ製品。他にもオプティマスプライムやその宿敵・メガトロンなどもラインナップされていて、どれも同じ変形機構ながら絶妙なデフォルメ具合がぐっとくる。
 

あの頃の思い出がリファイン チータス

 
最後にどうしても語っておきたいのが『ビーストウォーズ』シリーズについてだ。筆者の世代にとってのトランスフォーマーといえば『ビーストウォーズ』だろう。

 
トランスフォーマーは基本的に乗り物に変形するが、この作品ではすべて動物(厳密には続編で植物が出てくる)に変形する。90年代当時としては革新的なフルCGアニメ、しかも今でも可視に耐えうる高いクオリティの映像だったのも大きな特徴だろう。

 
さらに言えば、カナダで制作された本作品が日本に輸入されるにあたり超豪華なベテラン声優陣が吹き替えキャストに起用され、彼らの自由すぎるアドリブ合戦が聞けたことも語り草になっている。
 
トランスフォーマー マスターピース MP34 チータス (ビーストウォーズ)
 
こちらはサイバトロン(原語ではマクシマルズ。他作品のオートボットに相当)軍のムードメーカー・チータスが、放送終了から時を経て新設計で生まれ変わったモデル。
 

アニメCGのクオリティは当時としては非常に高かったけれど、おもちゃのほうは正直、子供向け製品の価格帯の制限もあり、当時の技術力の限界を感じるものだった(それがいい味になっているのだけれど)。
 

しかしこの製品は「マスターピース」シリーズというハイクオリティなラインのもので、現在の技術を導入し、かつあの頃子供だった大人たちの購買を想定して割高の価格設定にしたことによって、変身前・後の表情やプロポーション、チーターの毛皮の模様に至るまでハイレベルに再現している。
 

放送当時に販売されていたものと比較すると精巧さが段違いで、この20年ほどの間のタカラトミー、ひいては玩具業界の技術力の向上には感服し胸が熱くなるし、それだけの時間を自分が生きてきたことも確かに感じさせる。
 

歴史あるコンテンツと一緒に歳を重ねること

 
先の段落で触れたようなことは、長く1つのコンテンツを追っているとままある。そういう感動を大事にしたい。技術力の向上や、ファンが年齢を重ねるにつれ価格帯や製品の形態にバリエーションが増えることで、シーンはより豊かになっていく。セーラームーンのコスメが好例だろう。おジャ魔女どれみも、高校生・大学生とライフステージを重ねていく姿が小説版で描かれた。デジモンもドラゴンボールも続編が作られ、封神演義やミュウツーの逆襲はリブートされた。
 

コンテンツの歴史はファンダムを構成するそれぞれの人の生活の歴史でもある。そこには連帯が生まれ、同好の士の間には共通の認識や言葉が育まれる。あなたが「乗り物がロボットに変形するおもちゃ」程度にしか認識していなかったカルチャーにも、少なくともここに書いた程度には豊かな土壌がある。そして、ここに書いたことは本当にごくごく断片的な情報にすぎない。あなたの好きなものもきっとそうなんだろう。そうやってお互いにお互いの趣味の奥深さを慮りあう、心地よく現代的な距離感の参考に、この記事が活かされたらうれしい。
 

文=ヒラギノ游ゴ

平成東京生まれのライター・編集者。多趣味。音楽・お笑いをはじめとするユースカルチャーについて寄稿。



イラスト=町田メロメ
Twitter:@qumolilon
HP:https://qumolilon.jimdo.com/

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