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ヒラギノ游ゴの2兆個の趣味を1つずつ 第3回【ジャンプ短命漫画】

ヒラギノ游ゴの2兆個の趣味を1つずつ

アンケートの海に沈んだものたち

今回は週刊少年ジャンプの漫画を取り上げる。ただし『ONE PIECE』や『DRAGONBALL』といった看板作品ではなく、それらの影に消えていった作品たちだ。
 

『バクマン』でその詳細が語られ広く知られるようになったが、それまでもその後も公然の事実としてあった週刊少年ジャンプのアンケートシステム。読者アンケートで一定の基準を満たす結果を残せなければ、新連載は10週で、10週を生き延びても不調が続けば打ち切りとなる。
この過酷なサバイバルを勝ち残った作品だけがアニメ化、実写映画化といった機会に恵まれ、後の世でも名作として語り継がれる。
 

前回は「スキマ音楽」と称して、J-POP史の中であまり顧みられていない音楽を取り上げた。今回もそれと似たアチェチュードで、アンケートシステムに愛されなかったもののジャンプに新しい価値を提案していたり、独自の存在感を持っていたり、振り返ると意義深いと思える作品などの「ジャンプ短命漫画」を、絞りに絞って4作品だけ紹介する。
 

ZOMBIEPOWDER.(ゾンビパウダー)

ZOMBIE POWDER. 1 (ジャンプコミックス)

『BLEACH』の久保帯人先生の初連載作品。系譜としては『るろうに剣心』同様、主人公が”最初からレベル100″のパターンで超強い。
西部劇をベースにしつつも近未来的なテクノロジー描写もあれば魔術的な要素もあり、”強さの原理”が「気」や「チャクラ」「念」「波紋」などによって規定されておらず、描きたい能力、描きたい武器を自由に描くおおらかな世界観設定。やりたいことを詰め込んで雑然と並べた色鮮やかさが楽しい。
 

特筆すべきは敵キャラの死に様のグロさやおまけページにしれっと書いてあるキャラクターの生い立ちのしんどさなどのウルトラヴァイオレンスな側面。そのどれもがさらっとこともなげに描かれていて、その圧倒的な”命の軽さ”がヒリヒリするようなスリルとスピード感を生んでいる。
 

スピード感についていうなら、後から仲間になりそうな敵・ド派手な技・のちのち使えそうなエピソード、そのどれもを容赦なく使い捨てていく思い切りのよさもまたスピード感を加速させている。あらゆる要素が初発でドカンと見せ場を作ってその場でさっと名称+α程度の説明、以降のシナリオには特に絡まない、の繰り返しで、もったいない気がする反面、中だるみする暇もない。
 

伏線と呼べるほど脚本的にテクニカルなものは特に用意されていないとは思うが、主人公の過去にしろ、最終回直前に大量投入された新キャラ、思わせぶりなセリフ・カットにしろ、最後の最後まで風呂敷を広げに広げたままの勢いでゴールテープを切った作品。後年『BLEACH』で見せたポエティックなセンスもこの頃から片鱗が覗いていて、最終巻の巻末おまけのラフ画と数行の詩で構成された数ページは、風呂敷を広げきって終わった作品のその後へのわくわくをさらに高まらせる。高まらせたからには続編でもリブート版でもいいから描いてほしいのだけれど。
 

「気」「チャクラ」「念」「波紋」といったジャンプ異能バトル漫画に定番の「万能エネルギー(と筆者は呼んでいる)」を設定していないことでキャラクターそれぞれの”強さ”がのびのびと自由に表現されているのがこの作品の最大の魅力の1つでもあるのだけれど、「万能エネルギー」システムに慣れたジャンプ読者にとっては不慣れで、票が伸びづらかった面もあるのかもしれない。
 

Ultra Red(ウルトラレッド)

Ultra Red 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

週刊少年マガジン『七つの大罪』でアニメ化を果たした鈴木央先生がジャンプに在籍していた頃の連載作品。鈴木先生はジャンプの後サンデーを経てマガジンに移り、日本で唯一3大少年誌で連載を持った漫画家だと言われている。
 

その前に連載していたゴルフ漫画『ライジングインパクト』もまた名作だが、より自分の世代が肌で感じていたものとしてこちらを挙げる。極私的な体験だが、最終回が掲載されたジャンプ発売日は学校中で「なんで終わったの?」という声が聞かれた。少なくともうちの中学ではそれほどまでに予想外の連載終了だった。
 

あらすじだけ言えば、最強を目指す少年が主人公の格闘技漫画、というベタもベタな設定なのだけれど、とにかくこの作品の魅力は主人公の使う古流武術・破傀拳(はかいけん)の絶対に真似したくなる視覚的なポップさ。
人差し指と中指の第2関節を突き立てた構えから繰り出され、相手の手首の関節を外す「鞍突」、指を突き立てて相手の肩関節を外す「球突」など、絶妙に中学生の心をくすぐる技が揃っていた。
 

思わず真似したくなる技があり、アクションの構図もおもしろく、主人公の求心力も充分、魅力的なキャラクターもたくさんいて、今後ますますおもしろくなっていく期待しかなかったのだが、全34話で終了。
 

当時中学生だった筆者は、小遣いが食費以外にほとんど与えられておらず、ジャンプは何号かに1回しか購入できなかった。立ち読みで済まさず買う号が稀にあり、その決め手の多くは「『Ultra Red』が盛り上がる号だから」だった。ただ、アンケートハガキを出すことはしなかったので、もしあのときハガキを出していれば……と未だに悔やむ夜がある。
 

ものの歩

ものの歩 1 (ジャンプコミックス)

プロ棋士を目指す若者が集まるシェアハウスを主な舞台とした将棋漫画。
藤井聡太棋士が注目を集めはじめる直前の時期に連載が始まって終わった、あまりにも不運な漫画だ。
 

この漫画の推しポイントは、明言こそされていないものの、主人公に過集中・こだわりの強さ・あいまいな指示が理解できないなどのADHD・アスペルガー傾向が見られ、同様の傾向を持つ人をエンパワメントする眼差しを感じられる作品だという点に尽きる。
 

少年漫画的なお色気描写が随所にあり、その点が筆者のかなり苦手とする部分なのだけれど、それを度外視すればこんなに真心を感じる漫画はそうそうない。
 

主人公は学校の勉強ばかりしてきた高校生だが、あまりにも要領が悪く努力の質が低いので、成績は決してよくない。テストで難しい問題を飛ばして次の問題に移ることがどうしてもできず、解けるはずの問題に取りかかれないまま終わってしまう。クラスメイトから話しかけられても、返答を考えているうちに次の話が始まってしまう。
 

集中的にテスト勉強した数学がなんの努力もしていない国語よりも低い点数だったり、どれだけ時間をかけても英単語が覚えられなかったり、といった経験をしたことがある人なら胸が締めつけられるようないたたまれない描写が丁寧に丁寧に描かれる。
 

過度に集中してしまうことは「集中力」として活かし、自分の考えをまとめるのに時間がかかってしまうことはそもそも自分のペースで次の一手を熟考する時間が与えられる将棋のシステムにうまくフィットし、主人公は生まれて初めて打ち込めるものを見つける。
のだけれど、やはり要領が悪く努力の質が低いので結果が出ない。おまけに周りは天才揃い。
 

この作品のテーゼとも言える印象的な台詞がある。
「プロ目指すやつなんて全員天才で努力家だ 何で差がつく? 行動の質だろ」
とにかく、要領の悪い人が少しずつ少しずつPDCAを回しながら努力の軌道修正をしていく姿を誠実に描いた漫画だ。読んでいてつらくなるほどに。
 

主人公以外にも、自分の美学を捨てられず、捨てない代わりに仲間に迷惑をかけないよう必死に手を尽くすキャラクターや、実力はありながらも自分の過去への執着ゆえに最短ルートでプロになる道を選ばないキャラクターなど、”要領の悪い”キャラクターは主人公に限らない。そして、それぞれの認知の歪みととられかねないこだわりの経緯が誠実に説明される。
 

この作品をはじめとして、同時期の誌面には『火ノ丸相撲』や『背筋をピン!と〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜』など、”敗者”への眼差しの優しさが印象的な作品が多い。
そういった眼差しは、当時『ONE PIECE』『NARUTO』『BLEACH』『銀魂』といった看板作品がランキング上位を占め、ジャンプ内で王道に躍り出ることが非常に困難なことを前提として連載を始めたであろうそれらの作品たちとリンクするのかもしれない。
 

左門くんはサモナー

左門くんはサモナー 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

誰にでも優しく、誰からも好かれる高校生・天使ヶ原さんと、そんな天使ヶ原さんの生き様を否定したいひねた男子高校生・左門くんを中心としたファンタジー・コメディ作品。
 

設定だけ見るとラノベ感があり、絵柄を見てもやはりラノべ感があるのだけれど、この作品は間違いなく、『ピューと吹く!ジャガー』や『ボボボーボ・ボーボボ』『Mr.FULLSWING』『銀魂』といった前の世代のギャグ漫画陣以降、久しぶりにジャンプにおけるユーモアの新しいパターンを提案した作品だ。
 

作中で描かれるツッコミは、言葉選びにレトリックやたとえをたっぷり凝らしたもの。ツッコミの機能を持ちつつ中身はボケているフレーズだ。フットボールアワー後藤輝基を、そのたとえツッコミのフレーズの妙によってツッコミの歴史の転換点の一人として考えるなら、まさに後藤輝基以降のツッコミが見られるのがこの作品。
 

また、キャラクター造形としての白眉は「茨木童子」だ。
「てメー…俺と”戦争(トラブ)り”てーらしーナ…!?」みたいな口調など、諸々の古式ゆかしいヤンキー漫画のマナーを徹底的にメタ化・小馬鹿にして1人のキャラクターの性質として落とし込んでいる。こういった形で、ある意味でパターンが出尽くしたとも言える現代の漫画市場そのものをメタ視点で見て、一捻り加えた新しいユーモアを発明しようという気概の感じられる作品だ。
 

また、この作品はラブコメとしても実は相当に深い。といっても直接的にロマンティックな色恋沙汰が描かれることはなく、あるときは憎悪、あるときは畏敬の形を借りて表出して「愛とは?」を問うている。
 

高橋留美子のラブコメのラストはなかなか「愛してる」をストレートに言わない。
『らんま1/2』なら「乱馬…あたしのこと好きなんでしょ?」だし、
『うる星やつら』なら「(愛していると)一生かけて言わせてみせるっちゃ。」「いまわの際にいってやる。」だ。
この作品にもそういった小粋にこまっしゃくれた愛の表現が散見され、その点も大きな魅力の1つだろう。
 

「なんで終わったんだよ」と言わないために

『ソワカ』『少年守護神』『グラナダ -究極科学探検隊-』『切法師』『戦国乱破伝サソリ』『キックスメガミックス』『逢魔ヶ刻動物園』なんかの話もしたいのだけれど、キリがないのでまたの機会に。
 

『Ultra Red』についてのくだりでも書いたが、筆者が一番熱心にジャンプを読み、退屈な街で思春期を送る飢餓感から救われていた時期、筆者はあまりジャンプを買っていなかった。ジャンプの発売日になると、近所のコンビニ3軒を数分ずつはしごして、1箇所に集中して迷惑をかけないよう渡り歩きながらジャンプを端から端まで立ち読みで読破していた。
 

時は経ち、働きはじめて経済的に余裕もできた。筆者は2年ほど前から毎週ジャンプを買っている。
14歳の頃と同じ熱量で楽しめているかというと違うとは思うが、ありがたいことに今でも入れ代わり立ち代わりすばらしい作品が掲載されていて、毎週楽しみに発売日を待っている。毎週購入するのは少なくともきっかり6年は続けるつもりだ。一番ジャンプに助けられていた中高6年間、ろくに買って売上に貢献できていなかったことの埋め合わせと、そしてたった1票でも、好きな漫画を存続させるために行動を示したいから。
 

大人になってよかったのは、子供の頃に納得いっていなかったことに落とし前をつけられることだ。あの頃は到底無理でも、大人になった今ならたやすくできることはたくさんある。もし自分が贔屓の漫画の掲載順がだんだんと後ろのほうになってきたら、あとになって「あのとき俺は何もしなかった」と思うくらいなら、アンケートハガキを投函してみてほしい。
 

文=ヒラギノ游ゴ

平成東京生まれのライター・編集者。多趣味。音楽・お笑いをはじめとするユースカルチャーについて寄稿。Twitter:@1001second

イラスト=町田メロメ

Twitter:@qumolilon
HP:https://qumolilon.jimdo.com/

 

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