大家さんが賃貸物件を修理してくれない!対処法や家賃の支払い拒否について解説

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大家さんが修理してくれない際の対処法を押さえておこう!

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賃貸物件の修理は速やかに行ってほしいもの

賃貸住宅に住んでいる際、備え付けの設備が故障した場合にはすみやかに大家さんに報告する必要がある。しかし何らかの事情により、大家さんが修繕を行ってくれないケースがある。このような場合、入居者はどのような対処をすれば良いのだろうか。

今回は2020年に改正された法律の内容も踏まえて、具体的な対応方法を紹介する。

大家さんは法律によって賃貸物件を修理する義務を負っている

民法では、賃貸物件に関する大家さんの修繕義務について、次のように定められている。

  • 民法第606条(賃貸物の修繕等)
    賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う

賃貸の設備等が壊れた場合、基本的に大家さんはその修繕を行わなければならない。もし「修理してくれない」という場合、大家さんは民法上の義務を怠っていることになる。

では、大家さんはどの程度の範囲で修繕義務を負うのか。上記の民法606条によれば、「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕」ということになる。簡単にいえば「修繕しなければ本来通りに使えないレベルで破損している場合、大家さんは使用するのに必要なだけの修繕をしなくてはいけない」ということだ。

たとえば、雨漏りをしていて部屋の一角が使えないケースや、備え付けのエアコンが故障して使えないケースなどは、大家さんに修繕義務があるとされる。

大家さんに賃貸物件の修繕義務が発生しないケースもある

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一方、物件に不備や損傷がある場合でも、大家さんに修理する義務がない場合もある。以下のようなケースでは大家さんの修繕義務は発生しないことになる。

修繕義務が発生しないケース①:本来の用途に影響がない場合

たとえば、「壁紙が経年劣化で変色した」「エアコンが古くなり、黄ばんでいる」といった場合、大家さんに修繕義務は発生しないと考えられる。

壁紙が変色したり、エアコンが古くなったりしても通常使用ができるため、修繕義務の対象とはならない。

修繕義務が発生しないケース②:入居者の故意・過失で破損した場合

入居者側の故意・過失によって設備を破損させた場合は、大家さんに修繕義務はない。「許可を取らずに壁に大きな穴を開けた」「洗濯機のホースが外れて水浸しになってしまった」といったような場合が該当する。

故意・過失による破損の場合、修繕費は金額の大小にかかわらず入居者が負担するのが基本だ。

修繕義務が発生しないケース③:修繕に費用がかかりすぎる場合

修繕に費用がかかりすぎる場合も、大家さんの修繕義務が免除されることがある。たとえば、物件の築年数が古く、修繕に大規模な工事が必要となる場合だ。

過去の判例(裁判の事例)では、修繕にかかる費用と比べて賃料が安く、採算が取れない場合、大家さんの修繕義務はなくなると判断されている。古い賃貸物件に住んでいて、家賃も安い場合などには、修繕してもらえない事例があることを覚えておこう。

修繕義務が発生しないケース④:契約書に修繕義務を免除する特約が明記されている場合

物件の契約書の中に「修繕義務免除特約」が明記されている場合も、大家さんに修繕義務は発生しない。主に対象となるのは、日常的に使うもので、修繕にかかる費用が少額な消耗品だ。

<修繕義務免除特約に記載されるものの例>

  • 電球や蛍光灯、ヒューズの交換
  • 畳の取替えや裏返し
  • 障子紙やふすまの張替え
  • 給水栓や排水栓の取替え
  • 蛇口のパッキンやコマの取替え

修繕義務が発生しないケース⑤:前の入居者の残置物

前の入居者が残していった家具や家電等のことを「残置物」という。残置物の扱いについては、契約内容によって異なるため注意が必要だ。

大家さんの考えで設置した設備と異なり、残置物は前の入居者が置いて行ったものだ。このため、「残置物については大家さんが修繕義務を負わない」と特約に記載されている場合がある。

さらに、前の入居者が大家さんに相談せず、勝手に不要なものを置いていってしまうケースもあり、そもそも大家さんが残置物の存在を認識していないこともある。トラブルにつながりやすい残置物については、修繕費はどちらが持つのか、契約時に確認することをおすすめする。

大家さんが賃貸物件を修理してくれないときの対処法

家賃支払いの許可ってできるの?
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大家さんに修繕義務があっても修理をしてくれない場合、賃借人はどうすれば良いのだろうか?ここからは、2020年に改正された民法の規定をもとに解説していく。

考えられる対処法は次の3つだ。

大家さんが修理してくれないとき➀:入居者が自分で修理し、大家さんに費用を請求する

大家さんに修理を依頼したにもかかわらず、いっこうに対応してもらえないという場合には自分で修理手配を行うことが可能だ。。

2020年に施行された改正民法では、入居者による修繕について以下のように定めている。

  • 民法第607条の2(賃借人による修繕)
    賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
    一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
    二 急迫の事情があるとき。

つまり、大家さんに修繕を依頼したにもかかわらず、必要な修理をしてくれなかった場合、入居者が自分で修理しても構わないということだ。

ただし、大家さんへの連絡なしで勝手に修理をするのは控えよう。大家さんとのトラブルにつながる可能性がある。

なお、入居者が修理を行った際の費用は、民法608条に基づき大家さんに請求できる。修理業者から受け取った領収書は必ず保管しておこう。

  • 民法第606条(賃借人による費用の償還請求)
    賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

大家さんが修理してくれないとき②:家賃の減額を交渉する

大家さんが設備の修理を行ってくれない場合、入居者は家賃の減額を申し入れることができる。

2020年4月の民法改正で、賃貸物件の一部が使えなくなった場合の賃料減額について大きな変更があった。

  • 民法第611条(賃借物の一部滅失による賃料の減額等)
    賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

改正前は「賃料の減額が請求できる」という文言だったのが、改正後は当然に「賃料は減額される」と、よりシビアになったのだ。この法改正は、入居者側が有利になるものだ。

とはいえ、家賃全額の支払いを拒否することは難しい。設備の破損によって物件が使用できなくなった度合いに応じ、家賃の減額について個別に大家さんと交渉することとなる。

大家さんが修理してくれないとき③:消費者センターや国民生活センターに相談する

大家さんが修理をしてくれないときや、交渉がうまくいかない場合等には、消費者センターや国民生活センターへ相談するのも有効だ。賃貸物件に関する相談に応じており、トラブル解決に向けたアドバイスを得られる。

トラブルが起きたら、まずは各自治体に設置されている消費者センターへ相談してみよう。住んでいる市町村・都道府県によっては名称が異なることもあるため、相談する際は確認してから連絡しよう。

なお、お住まいの地域の消費者センターが休みだった場合等には、国民生活センターへ相談してみよう。同様に、大家さんとのトラブルについて相談ができる。

大家さんが賃貸物件を修理してくれないときは、法律を踏まえて交渉しよう

今回は、「大家さんが賃貸物件を修理してくれない場合の対処法」について紹介した。原則として、大家さんは賃貸物件の修繕義務を負っており、経年劣化などで設備が破損した場合は修理しなくてはいけない。

万が一トラブルに発展しそうな場合は契約内容などをよく確認し、法律を踏まえて大家さんと交渉することが大切だ。もし判断が難しいなら、今回ご紹介した消費者センターや国民生活センターに相談してみよう。

また、大きなトラブルに発展するおそれがある場合には、弁護士などの専門家への相談も検討してほしい。


文=市川剛史(株式会社YOSCA)
2022年3月加筆=CHINTAI情報局編集部

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CHINTAI編集部
CHINTAI編集部

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