賃貸物件の仮押さえってできるの?キャンセル可能な期間やかかる費用、マナーなどの注意点とは

公開日:2018年6月25日

賃貸でも仮押さえは可能? 不動産業界でのルールやマナーはあるの?

気に入った物件をキープしたいときに使う「仮押さえ」という言葉がある。賃貸物件において「仮押さえ」は可能なのか、実際にどんなシーンで使えるのかわからないという方も多いのではないだろうか。

今回は、不動産業界における仮押さえの概要について解説していく。また、方法や期間、費用なども詳しく解説していくので、これから物件探しを進めていくという方は参考にしてほしい。

賃貸物件は予約できない
賃貸物件にも「仮押さえ」制度はある?

賃貸物件の「仮押さえ」とは、入居申込みと同じ意味

部屋探しを行う際、一度の内見では入居したい物件を決めきれず、「返事を保留にしたい」と思うこともあるだろう。ただ、迷っているうちに気になっていた物件に他の人から申込みが入ってしまうこともありえる。賃貸物件において「仮押さえ」ができるのかどうかは非常に気になるところだ。

実は、正確に言えば、賃貸物件では物件の「仮押さえ」という制度はない。ただし、不動産会社の営業さんが「仮押さえしておきましょう」という言い方をすることがある。この場合の「仮押さえ」という言葉は、いわゆる「予約」のことではなく、入居申込みのことを指す。「賃貸物件では仮押さえ=入居申込みのこと」と覚えておこう。内見を済ませて入居申込書を提出することで、入居審査を受けている間は物件が押さえられた状態となる。

賃貸物件の仮押さえを行う場合に必要な費用

入居申込書提出の際、不動産会社によっては申込金が必要な場合がある。申込金の扱いについては、東京都都市整備局のサイトに記載されているので引用する。

“物件を見学して気に入ると売主業者や媒介(仲介)から購入申込書とともに申込金の支払を求められることがあります。申込みをキャンセルしたときに、申込金の返還をめぐりトラブルになることがありますが、申込金を預かった宅建業者は、申込者が申込みをキャンセルしたとき、当該申込金(「預り金」)の返還を拒むことを禁止しています”

“したがって、申込金は返してもらえますが、申込金を支払うときは、キャンセル(撤回)の際、返してもらえることを確認しておきましょう。”

出典:「東京都都市整備局サイト内「不動産取引の手引き」

このように、もし入居申込みをキャンセルする場合には、申込金は返却される。一方、賃貸契約が成立した場合には、支払った申込金は敷金や礼金などの支払いに充当される。このことも、念のため支払い時に不動産会社へきちんと確認しておきたい。

申込金として支払う金額は家賃1ヶ月分までが通例だが、持ち合わせの金額で大丈夫、という不動産会社も多い。

申込金を支払う場合は「預かり証」を確実にもらうこと

申込金を渡す場合は、必ず「預かり証」を発行してもらおう。発行の際、会社印や日付、金額に間違いがないかの確認も忘れずに。申込金のことは、預かり証の上では「預かり金」と書かれていることも確認する。「手付金」と書かれていると、支払ったお金の意味合いが変わり、返金されないので注意しよう。

申込金が返却されずに困っている場合は、各都道府県の不動産相談窓口に相談しよう。

入居申込み後のキャンセルは可能?

一度行った入居申込みのキャンセルについて、多くの人ができないと思ってしまいがちだが、入居申込書を提出してから賃貸契約を結ぶまでの間に、入居申込みをキャンセルすることは可能だ。ただし、契約書を交わしていなくても、入居審査を通過して「重要事項説明」を受けると契約の意思があるものとみなされる。

重要事項説明とは、物件の状態・契約条件などについて宅地建物取引士からなされる詳しい説明のこと。消費者が契約内容を十分に理解してから契約を結べるよう、宅地や建物に関する取引の際には必ず行うよう定められている。

重要事項説明を受けた後は、預かり金を返金不能な「手付金」として処理される場合がある。この場合は入居申込みをキャンセルしても、支払った申込金は戻ってこない。

このように重要事項説明を受ける・受けないは重要なポイントなので、キャンセルの可能性がある場合は、重要事項説明を受ける前、できれば可能な限り早く不動産会社に連絡しよう。

キャンセルができるか、申込金が返ってくるのかは状況によって対応が異なるため、どのようなケースであれば可能なのかをあらかじめ確認しておくことが重要だ。ここからは、入居審査に落ちた場合と、自己都合である場合の違いを見ていこう。

入居申込みの際に申込金(預かり金)が必要な場合もある
入居申込みの際に申込金(預かり金)が必要な場合もある

入居審査に落ちた場合

賃貸物件を借りる際に行われる入居審査に落ちた場合は、申込み後であっても自動的にキャンセル扱いになる。不動産業者が審査する基準は、申込書に書かれた職業などの情報によって判断する支払い能力の有無と、不動産会社の担当者による人物評価などである。

また、家賃保証会社と契約する場合には不動産会社による審査とは別に、家賃保証会社による審査も行われる。

自己都合の場合

何らかの理由で入居申し込みをキャンセルしたい場合は、速やかに家主側に伝えなければならない。キャンセルを申し出たタイミングが契約前であれば申込金は戻ってくるが、契約後だと返金されなくなってしまう恐れがある。

仮押さえが可能な期間とは

仮押さえが可能な期間は、入居申込書の提出から入居審査が行われる間の2日~1週間程度。入居審査にかかる時間は人それぞれなので、この期間には幅がある。ただし、この期間は基本的に申込者から「この期間は押さえておいてほしい」と指定できる性格のものではない。

仮押さえにまつわるマナー

ここからは仮押さえにまつわるマナーについて説明しよう。複数の不動産会社で別々の物件を仮押さえ(入居申込み)する行為はマナー違反となるのを知っているだろうか。

マナー違反に注意|【賃貸物件】仮押さえってできるの? 可能な期間やかかる費用、マナーなどの注意点
マナー違反に注意


申込み側は物件に迷った際、いずれかをキャンセルすることを踏まえて、複数の物件へ入居申込みをしていることもあるだろう。一方、不動産会社では、審査の間いったん物件の公開を取りやめており、契約が成立するまで便宜を図っている場合が多い。審査をしている間は、契約の機会を逸しているため、そこでキャンセルをされてしまうと不動産会社や大家さんにとっては大きなダメージとなってしまうのだ。どうしてもやむを得ない場合を除き、安易な入居申込みは止めておこう。

また、キャンセルをした物件の大家さんが同じエリアに多くの賃貸物件を所有していた場合、次に入居申込みをした物件も同じ大家さんであった、ということがあり得てくる。その場合、入居審査通過が難しくなってしまう可能性も出てくるため注意したい。

賃貸物件の仮押さえにおける注意点

仮押さえした賃貸物件の部屋
仮押さえに関する3つの注意点を紹介

仮押さえは便利な仕組みだが、安易に行うのは禁物だ。契約書ができていない段階であっても、入居申し込みが入れば不動産会社側は契約の予定で動いてくれている。賃貸物件で仮押さえをする際の注意点を紹介するので、しっかりと確認しておこう。

賃貸物件の仮押さえにおける注意点①:複数の物件の申込みをしない

仮押さえ=入居申し込みは入居の意思を示すものであり、気軽に利用できるものではない。そのため、一度に複数の物件を仮押さえすることは控えよう。

物件を契約する意思がある場合にのみ使うことができる。実際には入居しない可能性が高い物件に対して仮押さえを行うと、信用問題に発展してしまう恐れもある。トラブルの元にもなるので気をつけよう。

賃貸物件の仮押さえにおける注意点②:申込金を支払う場合は、預かり証を必ず受け取る

物件の仮押さえを希望する際に、申込金の支払いを求められることがある。申込金は、万が一キャンセルをしたときには返金されるお金だ。

申込金を支払う場合は、預かり証を発行してもらうのを忘れないようにしてほしい。証明書がないといざというときに不利になってしまう恐れもあるので、必ず受け取ろう。

賃貸物件の仮押さえにおける注意点③:キャンセルの連絡は早めに

物件探しで悩む人は多いはずだが、キャンセルをすると決めた後はすぐに不動産会社や大家さんに連絡しよう。もしも、仮押さえをして申込金まで支払っていれば、あっという間に契約の段階に進んでしまう。また、仮押さえをしているままではほかの人に入居のチャンスが渡らなくなってしまい、賃貸経営で生計を立てている大家さんにも迷惑がかかる。できるだけ速やかに伝えるようにしよう。

賃貸物件の「仮押さえ」とは、入居申込みと同じ!「仮」という言葉に惑わされないこと

賃貸物件を探すおだんごヘアの女性
仮押さえ=入居申込み

賃貸物件における「仮押さえ」の意味と、可能な期間・かかる費用やマナーなどについて説明した。もう一度簡単におさらいしておこう。

  • 賃貸物件では「仮押さえ=入居申込み」であり予約という概念はない
  • 仮押さえ期間は入居審査通過までの2日~1週間
  • かかる費用は家賃1ヶ月分までが目安
  • 入居申込みをキャンセルするなら重要事項の説明前までのできる限り早いタイミングで行う

仮押さえの期間に何らかの事情でキャンセルしたいと思ったら、すぐに連絡して、可能な限り検討期間を短縮しよう。魅力ある物件をすべて確保しておきたい気持ちもわかるが、申込金が返ってくると安心して、複数の不動産会社で入居申込みをして回る行為はマナー違反となる。ほかの人のことも考慮しつつ、気をつけながら物件探しを進めていこう。

文=墨染みすず
2021年8月加筆=CHINTAI情報局編集部

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CHINTAI編集部
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