散策家・志歌寿ケイトが教える、本格的に街歩きを楽しむ方法
「街歩き」を本気で楽しんでみない？
名所や有名店がないから、家の近所は楽しくない……なんて考え方はもう古い！ 自宅近所の何気ない風景の中にも面白い要素はたくさんあり、突き詰めていくことでキラキラと輝いて見えることだってある。今回は、散歩の達人である「散策家」の志歌寿ケイトさんに街歩きの楽しみ方を教えてもらった。今日からぜひトライしてみよう。
散策家が語る、街歩きの楽しみ方
こんにちは、散策家の志歌寿ケイトです。私にとって街歩きは何が楽しいのか、そしてどうすればもっと散策が楽しくなるのか、少しお話させていただきます。
志歌寿さんが散策中に見つけた擁壁。吸い込まれそうな、独特の雰囲気がある
散策は「ほら見て、これ楽しいでしょ？」と向こうから何かを与えてくれる娯楽ではありません。そこにあるのはただの風景ですから、そこから自分で楽しさを見出していく必要があります。私の場合、「掲示物」「境界標」「擁壁」「石仏」など同じテーマを持つものを写真に記録したり、知らない街に行ったら必ずスーパーや商店街の様子を見ることにしています。
掲示物
ちょっとシュールな掲示物。このゆるさ・拙さがたまらない
たとえば掲示物からは作者の感情や工夫、素人ゆえの拙さを読み取ることができます。掲示した本人にとっては真剣ですが、見方を変えれば街を舞台にした掲示作品発表会としても鑑賞できると思います。日本の掲示物はストレートなものが多く、美的ではありませんが生々しい表現だといえるでしょう。
このストレートな物言い。一体何が販売されているのだろう？と想像が広がってしょうがない
境界標
このサイズでも立派な境界標。錆び方に歴史を感じる
境界標の場合は合併で変遷する自治体名や省庁名を見つけたり、中には個性的なデザインをしたものや個人名が書かれたものを発見したり、ちょっぴり邪魔なのだけど、独特の存在感（壁面に貼り付いていたり、杭が蹴られてボロボロになっていたり）を楽しむことができます。マニアックですが、路の昔の道幅を知るのに役立つこともあります。
もはや角がまるくなってしまっている
石仏
「普通の街で長い歴史を刻む何かを見つけようと思ったら石製のものに着目しましょう」（志歌寿さん）
石仏はもちろんですが、宅地の擁壁の多くが「石」でできています。比較的寿命が短い木造やコンクリートが建築の主流である日本の街のなかで、歴史を残すのは石が使われている部分です。城壁の石垣と同じですね。
商店街
商店街って、陽気だけどどこか物哀しい
街に存在するほとんどすべての人工物は、私たち人間の生活に必要なものか、過去に必要であったものです。それらを味わっていくことで、その地域の生活の歴史や様子が少しずつ見えてきます。自分の暮らす地域との違いを味わうという意味では、スーパーや商店街を覗くのもまた面白いものです。自分ならこの街でどう生活するだろうか、30年前ならこの街でどう暮らしていただろうか……そんな想像をするのも一興です。
志歌寿ケイトさんが「散策」に見出す奥深き魅力
私にとって散策を楽しむことは絵を描くことと似ています。目の前に紙とペンがあるだけでは楽しくありませんが、そこに自分で絵を描けば何かが出来上がっていき、繰り返し描くことで自分なりの画風が生まれたり上達したりしていきますよね。散策もそれぞれの歩行者の中にテーマを持つことによってその人だけの視点や理論を身に着けたり、積み重ねによってしかわからない発見や新たに挑戦したい課題がじわじわと生まれたりするのです。
ゴリラとバナナの距離感は一体なんなのか。そしてここは一体何スペースなのか
自分の足さえ動かせば風景が変わっていく、それだけでも散策はとても良いものです。そこからさらに楽しさを広げていくコツは、とにかく自分で「これだけは観察する・記録する」というテーマを持つことです。まずは比較的よく見かけるモノをひとつかふたつ選んで、街を歩いてみましょう。その成果を写真として蓄積したり、文章に残してみたり、地図にマッピングしてみたりすれば、あなただけの世界ができあがっていきますよ。
教えてくれたのは？
志歌寿 ケイト（しかすけいと）
散策家、地図制作者。東京23区の商店街をすべて踏破。独自の散策会「東京散歩革命」を主催。散策ガイド・ルート作成のほか架空地図の制作、メディア出演、講師、GIS業務などの分野で活動中。
オフィシャルサイト：http://shikasukeito.blogspot.com/
Twitter：https://twitter.com/shikasukeito
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