礼金は値下げ交渉できる?敷金・礼金の意味と値下げ交渉を成功させる3つのコツ
敷金や礼金の意味・役割って何?値下げ交渉は可能?

「減額できる家賃の目安は、1,000~2,000円程度」と話すのは不動産会社のエイブル心斎橋店の臼井店長。最近の物価上昇や家賃上昇により、家賃交渉が難しくなっていると感じているそう。
賃貸物件に入居する際、契約時にかかる初期費用は、礼金の有無で変わるものの「家賃の3ヶ月〜6ヶ月分」が目安だという。関西と首都圏といった地域差もそれほどないそうだ。それ以外にも引越し代や家具の購入代などがかかることを考えると、初期費用を少しでも抑えたいのが正直なところ。
そもそも敷金・礼金とはどういったもので、なぜ契約時に支払う必要があるのだろうか。また「敷金・礼金の値下げはできる?」といった疑問が寄せられることもある。この記事では、敷金・礼金の意味をご紹介するとともに、値下げ交渉のポイントをお伝えする。
このページの目次
値下げ交渉の前に知っておきたい知識①:敷金、礼金の意味とは
値下げ交渉の前に、まずは敷金・礼金が何のためにあるのかを理解しておこう。
敷金の意味と役割
敷金は、物件や設備を故意に(わざと)または過失(うっかり)で破損させたり、汚してしまったりしたときの修繕費用や、家賃の支払いが滞ったときに貸主が未払いの家賃に充てるお金(※)。
※ただし、借主からの申し出では、相殺できないことが一般的
保証金としての意味合いを持っており、賃貸物件を契約する際、あらかじめ支払うことにより信頼を得るデポジットのようなものだ。関西などの地域によっては敷金を「保証金」と呼ぶこともある。
敷金は、退去時に借主が支払うべき原状回復などの費用を差し引かれたあと、借主に戻される。また、2020年の民法改正により、敷金の返還ルールがより明確になった。契約が終了し、物件が貸主に返された時点で、貸主は借主に敷金から必要な費用を差し引いた残額を返還する義務を負う。
さらに、賃貸借契約書に特約を設けて敷金の一部を返還しない仕組み「敷金の場合=敷引き」「保証金の場合=解約引き(または償却金)」を採用することもある。
礼金の意味と役割
礼金は、賃貸物件の大家さんに支払う文字通り「お礼」の意味を込めたお金だ。これは敷金と違い、一度支払うと借主に返されることはない。慣例として支払われることが多い初期費用だが、最近では「礼金ゼロ」という条件の賃貸物件が増えてきた。
「昨今の家賃上昇の影響や、早期入居を希望されている大家さんのお考えもあり、初期費用を抑えるために、礼金を控えめにしている物件が増えているように感じます」(臼井店長)
敷金・礼金についてより詳しく知りたい方はこちら
値下げ交渉の前に知っておきたい知識②:敷金・礼金の相場とは
敷金・礼金の意味を理解できたら、次に気になるのはその金額の相場だろう。相場を上回っているのか、それとも低いのかわからなければ値下げ交渉もうまく進まない。敷金・礼金の相場は地域や物件によって異なるものの、一般的に敷金も礼金も「なし(ゼロ)~家賃の2ヶ月分程度」で設定されていることが多い。
「近年、家賃保証会社による『退去時の原状回復に関する補償内容』が手厚くなっています。家賃保証会社の費用(保証料)は敷金とは別に借主(入居者)さんが負担するため、初期費用を抑える目的で、敷金についても控えめにしている物件が増えている印象があります」(臼井店長)
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敷金・礼金や家賃の値下げ交渉は可能?
初期費用を大きく左右する敷金・礼金・家賃のうち値下げ交渉しやすいのはどれなのか。
「敷金は大家さんへの預り金のため、退去時の返却を考えると減額もしくは0円にすることもありますね。礼金が大家さんへのお礼代とされている場合は、減額が難しいのが基本。ただし、入居時期が申し込みからすぐであれば、多少の減額の可能性はあります」(臼井店長)
「一方、家賃を下げることは厳しいです。特に、大家さんが将来その物件の売却を考えている場合、家賃収益や表面利回りが重要な評価基準になります。そのため、下げたくないという気持ちが強いですね」(臼井店長)
基本的に家賃の値下げ交渉は難しいものだと認識しておいた方がよいだろう。家賃と比べれば、敷金や礼金など初期費用の方が値下げ交渉の余地がありそうだ。ここからは臼井さんのお話を参考にしつつ、値下げ交渉のポイントについて解説していく。
交渉ポイントを1つに絞る
「全部を下げようとするのではなく、いずれか1つにポイントを絞った方がよいですね。その方が、不動産会社の営業担当も家主さまに交渉しやすくなります。」(臼井店長)
敷金・礼金のうち、どちらか1つの項目について交渉するとよいという。たとえば、空室が長く続いている部屋の場合、大家さんは「礼金をもらえなくても、家賃を支払ってくれれば良い」と考えるかもしれない。
交渉が成立したらすぐに入居する意思を見せる
「『この条件を飲んでくれれば即決する!』というように、借主さまもその物件に対する本気度が高ければ担当も熱意を持って伝えられます」(臼井店長)
大家さんの気持ちを考えてみれば、長い時間をかけて交渉したとしても、実際に契約を結んでくれなければ時間の無駄遣いになってしまう。入居希望者が熱意を持っていて、特定の条件を飲めば確実に契約してくれる状況にあれば、大家さんとしても交渉に応じやすくなるのだ。
オフシーズンに物件を探す
また、値下げに応じてくれるかは時期も重要になるとのこと。5月~8月などのオフシーズンは比較的交渉に応じてくれやすいものの、9月以降は企業の秋の人事異動を受けて物件の動きがあるため、減額には慎重になりやすいそう。また、年明け~3月のピーク時は物件の需要が高まるため、減額は難しいという。
オフシーズンになるとフリーレント(一定期間の家賃無料)といった条件の物件も増えてくる。フリーレントの物件を契約すれば、仮に敷金・礼金がかかったとしても、フリーレント分で相殺できる。
敷金・礼金の値下げを成功させてお得に入居しよう
敷金は保証金のようなもので、礼金は大家さんへのお礼として支払うものである。相場としては、敷金も礼金も「なし(ゼロ)〜家賃の2ヶ月分程度」支払っている人が多い。確実に成功するとは限らないが、大家さんとの交渉で敷金・礼金の値段を下げる交渉自体は可能だ。
敷金・礼金の値下げは、交渉のポイントを絞ることや、すぐに入居する意思を示すこと、そしてオフシーズンを狙うことで成功を導きやすい。初期費用を浮かせられれば新居でもゆとりを持って生活できるので、値下げ交渉のポイントを覚えてから理想の部屋を探していくとよいだろう。
(南澤悠佳/ノオト)
2025年6月加筆=CHINTAI情報局編集部