
マンションの隣室からくさいニオイが! 悪臭トラブルの対処法を教えて!【CHINTAI法律相談所】
賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス
賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。
入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。
賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。
Q.隣の部屋からくさいニオイが漂ってきている。悪臭トラブルはどうやって解決すべき?
マンションの隣の部屋から悪臭が漂ってきて、我慢できない! どうにかしてニオイをなくしたいのだけど、どうしたら良い? 大家さんに言ったら、対応してくれる?
A.大家さんや管理会社に対処してもらおう
悪臭や騒音などの隣人トラブルは、相手に直接改善を求めるのは避けるのが基本。話がこじれて、より大きなトラブルに発展してしまう恐れがあるからだ。隣室から悪臭あるいは異臭が漂ってきたら、まずは大家さんや管理会社に相談しよう。
大家さんには「使用収益させる義務」がある。簡単に言うと、大家さんは入居者が問題なく生活できるようにしておかなければならない。このため、大家さんや物件の管理会社は、悪臭トラブルに対応する義務がある。
管理会社によって対応の仕方は異なるが、隣室あるいは住民全体にニオイに対する注意喚起を行ってもらえることが多い。それで悪臭トラブルが改善されれば良いが、解消されないようなら再度管理会社に連絡すること。より強い注意喚起を促すだけでなく、賃貸契約書に「近隣への迷惑」や「悪臭など衛生上有害とさせる行為」が禁止事項として記載されているなら、然るべき対応を要求するのも手だ。
一方で、水道管や設備など建物の不具合が原因であれば、隣室を中心に原因を調査し、対応してくれるはずだ。
大家さんや管理会社に相談しても十分な対応してもらえない場合は、各自治体に相談するのも手。役所の生活課などに相談すれば適切な助言をもらえるだろう。なお、悪臭が危険物によるものであると思われる場合は、すみやかに警察署に連絡。もしガス漏れが原因だと思われる場合は、ガス会社に連絡しよう。
悪臭で健康被害を被った場合は慰謝料の請求も可能
悪臭トラブルは大家さんや管理会社に連絡するのがベター。ただ、悪臭があまりにヒドく、体調不良など直接的な被害を伴う場合は、隣人に慰謝料を求めることも可能だ。
悪臭や騒音に該当するかどうかは「受忍限度」を超えているかどうかで判断する。受忍限度とは、過去の判例によると「社会生活を営むうえで我慢するべき限度」のことだ。
ただ、悪臭の受忍限度については明確な線引きが難しい。例えば強烈な悪臭で気持ち悪くなったと考えられる場合、「受忍限度を超えている」と認められそうだが、体調不良など他の原因も考えられる。そのため、悪臭が直接の原因だと証明することは難しく、明確な証拠が必要となる。
健康へ悪影響がある根拠を提示する一つの手段として、専門業者に依頼して「臭気指数」を調べる方法がある。悪臭の程度を数値化することによって、客観的な証拠として提示できる。悪臭の原因を探るために隣室に入ることを許可されたなら、相手の承諾を得て、臭いを発していそうな物を撮影しておくのも手だ。悪臭によって深刻な健康被害を受けた場合は、慰謝料の請求も視野に入れると良いだろう。
もちろん、慰謝料の請求はあくまで対応後に改善されなかった場合の事後策であり、最終手段だ。健康被害が発生する前に、話し合いによって悪臭トラブルを解消することがベスト。悪臭を感じたなら、すぐに大家さんや管理会社へ相談し、スムーズな解決を図ることが重要だ。
ここがポイント!
隣室から悪臭が漂ってきたら、大家さんや管理会社に相談しましょう。住民への注意喚起をはじめ、適切に対処してくれます。また、自治体の専門窓口に助言を求めるのも有効でしょう。危険物によるにおいなどの場合は、直ちに警察署に通報しましょう。いずれにせよ隣人に直接クレームを言うのでなく、第三者を交えて解決を図ることが大切です。
覚えておきたい法律用語「慰謝料請求」
悪臭トラブルの場合では、慰謝料を請求することが可能。今回のケースでは隣人との個人間トラブルとして扱うのが妥当であり、訴訟に発展する場合がある。慰謝料請求は民法710条に定められている。
民法第710条
民法 – e-Gov法令検索
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
ニオイによる健康被害は財産以外への損害なので、慰謝料請求に該当。当然「健康を害したか否か」が争点となり、ニオイと健康被害の因果関係を立証する必要がある。
ニオイは専門業者によって数値化可能。一般的な数値を大きく超えている場合、証拠として認められる。ただ、それは公害レベルの強烈なニオイ。生活臭が漏れ出す程度では認められない。
取材・文=綱島剛(DOCUMENT)
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