
引越したら住民票を移さないとダメ? ペナルティや例外はある?【CHINTAI法律相談所】
賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス
賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。
入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。
賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。
Q.引越して住民票を移さないと、どうなるの?
引越したけど住民票を移す時間がない! そのままにしていたらダメ? 転出届と転入届を提出しないと、どうなるの?
A.住民票異動を行わないでいると5万円の「過料」を課される
結論から言うと、住民票を移さないとペナルティを受ける。
住民票とは、住民基本台帳法に基づいて作られている帳票。住民に関する氏名や生年月日、性別などが記載されている。引越しした場合は住民票の異動を届け出る必要があり、転出届は引越しの前後14日以内、転入届・転居届は引越し当日から14日以内に役所へ提出しなければならない。
一連の手続きは住民基本台帳法で義務として定めており、届出をしなかった人は5万円以下の「過料」が課せられる。刑事事件による「罰金」と違って前科がつかないが、法律違反であることには違いがない。
14日を過ぎたからと言って、すぐに過料を課せられるわけではない。住民票を異動しなかった場合の対応は明確に定めてられていないため、各自治体によって対応は異なる。まずは住民票異動の催促に留まるケースもあるが、いきなり過料を課せられることも。いずれにせよ、期限内に住民票の異動手続きを済ませるのが安心だ。
住民票を移さなくても良い例外も定められている
基本的には引越しをしたら住民票は移さなければならない。しかし、正当な理由がある場合、異動する必要はない。例えば、短期間の住み込みといった一時的な転居や、進学・単身赴任で定期的に実家に帰るなど、生活拠点が変わらない場合は、住民票異動を行わない正当な理由として認められる。
また、虐待やDV被害による避難など、やむを得ない状況にある場合は、住民票異動を行わなくても問題ない。正当な理由として認められるかは引越し先の自治体によるため、不安なら役所に相談すると良いだろう。
住民票異動を行わないと不便、不利益を感じることもある
前述の通り、一時的な転居などは正当な理由として扱われ、住民票を移さなくても問題がない。とはいえ、住民票を移さないことによるデメリットもある。新住居がある自治体の行政サービスを利用できず、次のような不便が想定される。
- 選挙の投票は旧居の選挙区でしか行えない
- 運転免許の更新手続きが旧居の地域(住所地を管轄する公安委員会)でしかできない
- 新居がある地域の役所で公的な証明書を取得できない
- 本人確認の郵便を一部受け取れない可能性がある
- 新居と運転免許証など本人確認書類の住所が異なる
- 図書館など現住居の公共施設が利用不可能、または利用を制限される
最近では、マイナンバーカードを使えばコンビニで住民票を発行できるなど、一部の不便は解消されている。しかし、住民票を移した場合と比べると、やはり手間がかかる。引越し先に生活拠点が移るなら住民票異動を行ってしまった方が不便を感じにくい。
ここがポイント!
住民票異動の届出は法律上の義務です。手続きをしないと、5万円以下の過料を課せられます。また、住民票を移さないと日常生活で不便を被ることもあります。面倒に感じるかもしれませんが、転出届は引越しの前後14日以内、転入届・転居届を引越し当日から14日以内にきちんと提出しましょう。
覚えておきたい用語「住民票の異動」
住民票の異動は、住民基本台帳法で定められている。
住民基本台帳法22条
転入をした者は14日以内に市町村長に届け出なければならない住民基本台帳法23条
転居をした者は14日以内に市町村長に届け出なければならない住民基本台帳法24条
転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない住民基本台帳法52条2項
住民基本台帳法
正当な理由がなくて第22条から第24条までの規定による届出をしない者は、5万円以下の過料に処する
引越し先が同じ市区町村内なら役所で転居届を提出。異なる場合は旧居がある市区町村の役所で転出届、転居先の市区町村の役所で転入届を出す。
手続きの期限を超えた場合は過料を課せられる。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的に外出を控えている場合などは、14日を超えての手続きが認められている(2022年12月時点)。
なお過料とは、行政法に反した場合に制裁として金銭的負担を課すこと。つまり、秩序罰であり、刑罰の罰金とは異なる。また、同音異議語で、同じく金銭を徴収される「科料」も刑罰であるため、別ものとなる。
取材・文=綱島剛(DOCUMENT)
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