
敷金が返ってこない! 返金してもらうのに有効な方法は?【CHINTAI法律相談所】
賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス
賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。
入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。
賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。
このページの目次
Q.敷金が退去後しばらくしても返ってこない! どうすれば返金される?
先日、引越しをした。入居時に預けた敷金は、退去時の修繕費を差し引いて返ってくると聞いていたが、退去後しばらく待っても返金されない! 敷金を返してもらうには、どうしたらいい?
A.敷金の返還は大家さんの義務。怯まず返金を請求しよう
賃貸物件を退去する際は通常、大家さんや管理会社と入居者が立ち会いのもと修繕費の見積もりを行い、後日敷金精算書が送られてくる。精算書が送られてきたのに敷金が返還されない場合、または精算書が送られてこない場合は、まず賃貸借契約書を確認しよう。一般的には契約書に敷金の返還時期が記載されている。
敷金返還の期日は法律では定められていないが、預かり金である敷金は遅滞なく返還する必要があるため、退去から1〜2ヵ月以内としているケースが多い。
もし返還期限を過ぎていたら、敷金の返還を請求。民法622条の2第1項では「原状回復費を差し引いて余った敷金は返還するのが義務」と定められている。
入居者が退去した時から、大家さんは敷金返還の義務を負う。一方で、入居者は敷金の返還を請求できる権利を有すことになるのだ。
敷金の返還に応じてもらえないなら「少額訴訟」が最終手段
敷金の返還を求める場合、まずは大家さんや管理会社と話し合うこと。地域の消費生活センターなどに意見を聞きにいくのも良いだろう。
話し合いを重ね、合意を得られなかったなら、書面で正式に敷金返還を催促する。
書面には金額や期日などに加えて「支払いに応じない場合は法的措置をとる」と明記。さらに、日本郵便のサービスである「内容証明郵便」で送付すると良い。配達証明も付けてもらおう。「誰が」「いつ」「どのような」内容を送ったかを証明できるので法的な証拠となるからだ。
それでもなお、敷金が返還されなかった場合は、より強力な手段で訴えるしかない。弁護士に依頼するのも良いが、敷金の額が大きくない場合は自分で簡易裁判所に「少額訴訟」を起こすのも手だ。
少額訴訟は、60万円以下の支払いを求める場合のみ利用可能。1回の審理で判決を得られるので、早急に解決したいなら有効な手段となる。もちろん、訴訟は最終手段。できる限り、話し合いで解決を図るのが望ましい。
なお、敷金の返還を請求できる権利は原則的に退去から5年以内が有効。それ以上に長引くことはごく稀だが、念のため覚えておこう。
ここがポイント!
敷金は通常、原状回復に必要な修繕費用などを差し引いて、余った金額を返還してもらえます。契約書で定められた期限を超えても支払われなかった場合、返還を請求。内容証明郵便を利用して書面で催促し、それでも対応してもらえなかったら少額訴訟も検討しよう。
覚えておきたい賃貸用語「少額訴訟」
原則として、1回の期日で審理を終えてその日のうちに判決を得られる特別な訴訟手続き。60万円以下の金銭の支払いを求める場合にのみ、利用できる。支払いを求める金額に応じて手数料が発生し、収入印紙で納付。金額は下記の通りだ。
請求額 | 手数料 |
---|---|
10万円未満 | 1000円 |
10〜20万円未満 | 2000円 |
20〜30万円未満 | 3000円 |
30〜40万円未満 | 4000円 |
40〜50万円未満 | 5000円 |
50〜60万円未満 | 6000円 |
審理は、基本的に裁判官と丸いテーブルに着席する形式で進行。当日に提出できない証拠や当日出廷できない証人は取り調べせず、即時解決を目指す。
判決書または和解調書に基づいて、強制執行を申し立てることができるので、敷金返還を求める訴訟には最適だろう。
ただし、少額訴訟は審理が迅速だが、正確さや慎重さに欠けるという短所もある。また、訴訟を起こされた相手(被告)が少額訴訟による審理を拒否すれば、通常訴訟に移行することになる。通常訴訟は少額訴訟より時間がかかるので、注意が必要だ。
取材・文=綱島剛(DOCUMENT)
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