芸術の都ウクライナの首都・キーウ(キエフ)ってどんな街? 文化や暮らしについて紹介

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バレエ大国・キーウ(キエフ)についてご紹介

キーウ(キエフ)の文化や暮らしについて

ウクライナの首都・キーウ(キエフ)といえばバレエは連想できても、ウクライナがどこにあるかと聞かれると、「ロシアの隣…?」と自信がなくなってしまう人は多いのでは?

実はウクライナは、ロシアの発祥の地であり、古代ギリシャの『オデュッセイア』にも登場する由緒ある国。「ロシアの母」ともいわれるウクライナへの愛が溢れて止まらない、日本ウクライナ文化交流協会 会長の小野元裕さんに、キーウの街のこと、ウクライナの文化についてお聞きした。

記事後半では、キーウを本拠地とするバレエ団「タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエ」のオンライン公演や、オリジナルイラストマップも公開している。ぜひあわせてチェックを!

教えてくれたのは?

小野元裕さん

日本ウクライナ文化交流協会立ち上げのため、2005年にウクライナの首都キーウへ。翌年帰国し、大阪で株式会社ドニエプル出版を設立する。2006年からは日本で様々なウクライナ文化紹介のイベントを手がけている。
日本ウクライナ文化交流協会 ホームページ

※本記事は2021年12月に、当時の情報をもとに制作したものです

新旧が美しく融合した文化・情報の発信地「キーウ(キエフ)」ってどんな街?

伝統と新しいものがほどよく調和するキーウの街

ウクライナの首都・キーウは、9世紀の終わり頃から当時の国家「キエフ・ルーシ」の中心地として発展した。今なお政治・経済・文化・芸術の発信地であり、歴史的建造物も大切に残されたキーウの街の魅力を小野さんは次のように語る。

「キーウは古いものと新しいものが美しく融合した街です。建物でも音楽でも、古いものを否定せず上手にミックスさせるのがウクライナ人。とにかく懐が深くて寛大です」(小野さん)

街の様子に目を向けると、聖ソフィア大聖堂や黄金の門などの観光名所や歴史ある建物が街に点在しながら、その間を縫っておしゃれで新しいカフェや雑貨店なども立ち並ぶ。

また森のように緑豊かで眺めのよい公園も多く、休日にはカップルや若者たちが散歩したりピクニックをしたりする様子も。ウクライナ人には女性に花を贈る習慣があるので、街には花屋がたくさんある。

公園といってもまるで森のように緑が溢れている

2014年に起きたマイダン革命の舞台にもなった「独立広場」は、市民もよく待ち合わせに使う場所。中央郵便局やホテル、デパートなどが集まるまさに街の中心。

ここから伸びる「フレシチャーティク通り」は、週末には歩行者天国になり、音楽を演奏する人や大道芸人が大勢集まるのだとか。

キーウの中心にある独立広場は市民にとっての憩いの場

「ウクライナにはヨーロッパなどではもう消えてしまった文化やフォークロア(民間伝承)も数多く残っている。それは歴史自体が古いということと、発展が遅かったという双方の理由がありますが、ウクライナ人のおおらかさや東スラブ文化発祥の地としての誇りと無関係ではないでしょう」(小野さん)

知ってびっくり! イメージがガラリと変わる底抜けに明るいウクライナの人たち

ではウクライナ人はいったいどんな国民性と気質を持っているのか、さらに詳しく小野さんに伺った。

美しいけど最強なウクライナの女性

「日本との一番の違いは?」との質問に、小野さんが第一声で挙げたのは「女性の強さ」。

「男性は家事を積極的にします。ウクライナの女性は綺麗な人が本当に多いですが、その美しさを陰で支えているのは男性です。仕事帰りに男だけで飲みに行くなんて、もっての外。仕事が終わったら一目散に帰宅して、奥さんと過ごします」(小野さん)

団欒の時間も会話の中心は「女性」。外食する習慣もあまりなく、親しい人たちと手作りの料理とお酒を楽しむのがウクライナ風なのだとか。

ボルシチはロシア料理ではなくウクライナ発祥のもの

市民の日々の生活ルーティンは?

平日も仕事はほどほどで、ワーカホリックのような人は少ないウクライナ。週末はダーチャと呼ばれる別荘へ家族で出かけて、農作業にいそしむ。ダーチャは旧ソ連時代、自給自足が推奨され無料で国民に割り当てられたもの。週末に車で30分〜1時間かけて赴くダーチャは、遊びに行くというよりも、農作業で食べ物を確保する場所だ。

「子どもも高校生くらいになるとダーチャに行くより、友達と過ごすようになります。日本よりも子どもの独立心が旺盛ですから、週末若者はキーウの街に残って遊び、家族持ちは郊外で過ごしています」(小野さん)

ダーチャは豪華な別荘風から手作りの小屋までさまざま

音楽と人の世話が大好きなウクライナ人

家に人を招く時にも大音量で音楽を流し、老いも若きも歌い踊るのが一般的。それでも近隣から苦情が出ることは、ほとんどないのだそう。音楽は生活の一部。戦争や虐殺、飢餓などの辛い歴史が多かったウクライナでは、音楽で悲しみを吐露しながら希望をつないだ土壌がある。

「ロシアからは圧力をかけられ、虐げられているので、嫌いな政治家の悪口を携帯の着信音にしたり、トイレットペーパーに印刷したり、ウクライナ人はユーモアとウィットで逆境を乗り切る知恵を心得ています」(小野さん)

小野さん自身、「ウクライナから日本に帰ってくると、人と人との距離が遠く感じられて寂しい」というほど、人懐っこいウクライナ人。温かくて優しい人柄は観光客にも同じだそうで、ますますウクライナに行ってみたい気持ちが高まる。

キーウ(キエフ)に行ったらここを見よ! おすすめ観光スポット

長い歴史を持つキーウの街には見どころが満載。ここからは、キーウで観光する際にぜひ訪れてほしいおすすめスポットを紹介する。

聖ソフィア大聖堂

東ローマ帝国の影響を受け、キリスト教を国境としていたキエフ・ルーシの時代に建てられたビザンチン様式の荘厳な大聖堂。ウクライナで初めて世界遺産に登録された建物は、緑色のドームに金色の装飾が施されている。美しいフレスコ画やモザイク画を見学できるほか、鐘の近くまで歩いて登ることができる。

ペチェールスカ大修道院

ロシア修道院の発祥の地であり、別名「キーウ洞窟修道院」とも呼ばれている。ペチェールスカ大修道院の創設者・アントニーや偉人・聖人のミイラが地下の洞窟におさめられており、ろうそくを持って見学できる。信仰心の深いクリスチャンたちが、数多く巡礼に訪れる場所。

黄金の門

黄金の門

11世紀、中世ヨーロッパにおいて最も発展した国のひとつだったキエフ・ルーシの時代。都の周囲に張り巡らせていた城壁の西の入口が、この「黄金の門」。1240年にモンゴル軍の襲来を受け破壊され、18世紀にはほぼ土に埋まっていたものを発掘し、史跡として保存した。

キーウ(キエフ)以外にもある! ウクライナのおすすめスポット

リヴィウの街

キーウから飛行機で1時間のところにある「リヴィウ」は、世界遺産に認定された歴史地区が美しく可愛らしい人気の街。おしゃれなカフェやチョコレートショップ、雑貨店などが並び、観光客(特に女性!)は誰もが夢中になる素敵な街。

「ウクライナで最もコーヒーが好きな市民」と自称するだけあって、街を歩くとどこからともなくコーヒーの香りが漂ってくるそうだ。

美しさに目も眩む…ウクライナの伝統工芸品

民族衣装 ヴァシヴァンカ

細かな幾何学模様や植物などのモチーフが細かく刺繍された、ウクライナの民族衣装「ヴィシヴァンカ」。緻密で美しい刺繍は魔除けの意味が込められており、袖や首、胸や裾など外から魔が入りやすいといわれる部分に多く刺繍が入れられている。

女性はこの刺繍のブラウスやワンピースの上にネックレスやベルトをつけたり、花などを頭に飾ったりする。男性用のヴィシヴァンカは襟元にベルト状に刺繍されたものが多い。

イースターエッグ ピサンカ

「ピサンカ」と呼ばれる、ろうけつ染めのカラフルな卵はお土産物としても大人気。ピサンカの歴史は3000年以上前と古く、当初は太陽や獲物として捕らえた動物などを卵に描いていたという。その後、イースターエッグのシンボルとして様々な図柄が描かれるようになり、現在のような美しく楽しいピサンカへと変化した。

【CHINTAI協賛】タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエについてご紹介♪

CHINTAIが協賛するバレエ公演イベントには、「キエフ・バレエ」(タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエ)の人気のソリストや、劇場を代表するダンサーが出演している。

ウクライナ国立バレエは、モスクワの「ボリジョイバレエ」、サンクトペテルブルクの「マリインスキーバレエ」と並び、旧ソ連の3大バレエに数えられるバレエ団。古典の名作から現代作品、ウクライナの特色ある作品まで幅広いレパートリーを誇り、多くの実力派ダンサーを輩出してきた。日本でも1972年以降公演を重ねており、成功をおさめている。

ちなみにタラス・シェフチェンコはウクライナの詩人・画家で、近代ウクライナ文学の始祖といわれている人物。本拠地であるウクライナ国立歌劇場は、約1650人を収容できる4層の円形劇場で、ネオルネサンス様式の美しい建築だ。

「キエフ・バレエ」のオンライン配信が決定!

残念ながら2021年12月に予定していた公演は、新型コロナウイルス「オミクロン株」に対する水際対策の強化により中止になってしまったが、「キエフ・バレエ」公演のオンライン配信が決定! 以下よりぜひチェックしてほしい。

最も有名なバレエ作品として知られる『白鳥の湖』

あらすじ

成人を迎えたジークフリート王子は明日の舞踏会で花嫁を決めなくてはなりませんが、結婚への実感が湧かず憂鬱になります。森へ迷い込んだ王子の前に、一羽の白鳥が現れます。美しさに心を打たれ弓矢を下ろすと、白鳥は乙女の姿に変わり、自分は悪魔によって姿を変えられた王女オデットで、夜の間だけ人間に戻れるのだと告げます。魔法を解けるのは“真実の愛”だけと語る彼女を王子は、救う決心をします。舞踏会が始まると、悪魔ロットバルトと娘オディールが現れます。黒鳥の姿をしたオディールはオデットにそっくりで、王子はオディールをオデットだと思い込み愛を誓ってしまいます。過ちに気づいた王子は宮殿を飛び出しました。王子が勇敢に戦い、遂にロットバルトを倒すと、魔法が解けて白鳥たちは人間の姿に戻っていきました。そして、オデットと王子は永遠に結ばれるのでした。

「キエフ・バレエ」が、2022年1月に現地で撮影した最新映像。来日公演でもお馴染みの人気ソリストや、劇場が誇る実力派ソリストたちが出演している。優雅に繰り広げられるバレエの名作を、チャイコフスキーの美しい音楽と共に楽しんでほしい。

チャイコフスキー不朽の名作『くるみ割り人形』

あらすじ

クリスマス・イブの夜、少女クララはくるみ割り人形をプレゼントされますが、弟のフリッツに壊されてしまいます。心配になって夜中に様子を見に行くと、ねずみの王様とねずみたちが現れ、くるみ割り人形が指揮する兵隊と戦いが始まりました。クララは靴を投げてくるみ割り人形を助け、魔法が解けて王子の姿になったくるみ割り人形は、お礼にクララを人形の国へ招待します。楽しく過ごしたクララですが、ふと目が覚めてクララは家の大広間にいました。クララはくるみ割り人形を抱きかかえて、楽しい時間を思い出すのでした。

チャイコフスキー最晩年の代表作『くるみ割り人形』。2幕の「金平糖の踊り」をはじめとする各国の踊りは、異国情緒たっぷりで見どころ満載。

日本未上演の「キエフ・バレエ」大人気の演目『雪の女王』

あらすじ

幼なじみのカイとゲルダは大の仲良し。しかしある冬の日、雪の女王がばらまいた鏡の破片がカイに刺さり、カイの性格は突然氷のように冷たくなってしまいます。雪の女王に連れさらわれたカイを探して、ゲルダは旅に出ますが、様々な困難に遭います。とうとう雪の女王の宮殿でカイを探し当て、雪の女王との戦いの末、ゲルダが流した涙によりカイに刺さった鏡の破片は溶けます。カイは優しさを取り戻し、2人で故郷に帰るのでした。

アンデルセン童話『雪の女王』に着想を得て、2016年に「キエフ・バレエ」で初演されて以来、人気を博している作品。表現豊かなバレエもさることながら、音楽監督であるオレクシィ・バクランが指揮するオーケストラの演奏にも注目だ。

ウクライナ国立バレエを招致した「光藍社」ってどんな会社?

今回ウクライナ国立バレエを招致した「光藍社」は、クラシックバレエやオペラ、室内楽やオーケストラなど芸術性の高いものから娯楽性に富んだものまで、さまざまな公演の企画・制作・運営管理を行う企業。

世界で活躍するトップダンサーや「キエフ・バレエ」、ミハイロフスキー劇場バレエなど、世界レベルの良質なバレエ公演を招聘し、充実した公演を幅広い人たちに提供できるよう工夫を凝らし、自社で一貫して企画・運営をしている。

【光藍社(こうらんしゃ)】公式ホームページ

キーウの街に「住んだら」? オリジナルのイラストマップを公開!

「キエフ・バレエ」の公演で配布を予定していた、キーウのイラストマップも公開! 栄えある歴史と伝統を抱く東欧の中心都市のひとつ、キーウに実際に「住んだら」どんな暮らしができるのだろう? と考えて制作したイラストマップ。

パンフレットとイラストマップは下記からダウンロードできるのでバレエ公演の配信とあわせてぜひチェックを!

イラストマップ監修=日本ウクライナ文化交流協会
イラスト制作=izumiさん (@izumi_chuchu)

「#住んだら手帳」とは?

「憧れの街に住んだら、どんな毎日が待っているのかな」だれもが一度は考えるそんな想像。#住んだら手帳 企画では、あの街に「住んだら?」をテーマに手書きの #イラストマップ を手帳に一発書きして紹介していきます!

行きつけにしたいカフェ、ふらっとよれる定食屋さん、週末のんびり過ごす公園など、その街に住んでいたらつい通いたくなるおすすめスポットをテーマに合わせてピックアップ! あなたの新たな暮らしのヒントが見つけられるかも!

イラストマップは、CHINTAI情報局のインスタグラムアカウント「#住んだら手帳(@sundara_techo)」にて更新中! ぜひフォロー&チェックしてみて。

実際にMAPに登場するお店や街を訪れたら、「#住んだら手帳」のハッシュタグをつけて投稿してね!

ウクライナ・キーウ(キエフ)の歴史や文化に触れ、魅力を知ろう!

ウクライナ鉄道のターミナル・キーウ駅

ウクライナの歴史を知り、「キエフ・バレエ」などの文化に触れることで、キーウの魅力をますます知ることができたはずだ。ウクライナのこと、キーウのこと、興味がわいたのではないだろうか?

最後に小野さんは次のように語る。

「ウクライナと日本には共通点がたくさんあります。例えばコサックダンスで有名なコサックは武装集団で日本の武士道とも通じますし、コブザを演奏するコブザールはまさに琵琶法師。また核による被害経験を持つのは、世界中でチェルノブイリと広島・長崎・福島だけ。今度は実際にキーウの街へ行って、みなさんもっともっとウクライナのことを知ってください!」(小野さん)

※本記事は2021年12月に、当時の情報をもとに制作したものです

取材協力=日本ウクライナ文化交流協会
取材・文=元井朋子


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