シンプリスト・エヌケンさんの余白のある一人暮らしの部屋
自分を苦しめない、シンプリストになるための心得
エヌケンさんの部屋を見るとわかるが、ドライフラワーやプロジェクター、フレグランスグッズなど、「趣味のモノ」が部屋にあることに気づく。
「テレビは見ないけど映画は大画面で観たい。だからプロジェクターはマストアイテム。ドライフラワーは教室に通うほど好きだし、香りフェチなのでお香類も捨てません。僕はモノを最小限にしたミニマリストではなく、生活要素を簡素化・単純化したシンプリスト。日々の生活は豊かで充実したまま、無駄だけを省きます」と話す。

そのモノのおかげで快適に楽しく暮らしていたのに、「捨てなきゃ」と突き詰めすぎると苦しくなる。「捨てること」「持たないこと」に拘泥し過ぎるのは、時にはストレスにもなる。
「でも残し過ぎれば、当然シンプル暮らしは手に入りません。残すなら“なぜ残すのか”を徹底的に自分に問うて、他のモノで代用できるなら残さない。シンプリスト生活は、この“残す”と“捨てる”のバランスが肝」ときっぱり言い切る。
好きなモノは常に増えていくので、“好き”という気持ちにも優先順位をつけて、下位のものから削除していけば増え続けることはないという。

ちなみにエヌケンさんは100通以上あった手紙(大切な宝物だった)を捨てた時に、「俺にはもう捨てられないものはない」と無敵状態になったという。
「なぜ手紙を保管しているのかを突き詰めて考えたら、過去の頑張った自分・褒められた経験を捨てられないだけだった。それを捨てて未来の自分に向き合おうと思えた時、自分の中の執着心がスーッと消えたのを感じました」(エヌケンさん)
ここまで来るとモノの取捨選択というより、人生哲学の領域だ。「どう暮らすか」は「どう生きるか」。ただ闇雲にモノを捨てるのではなく、自分がどうなりたいかを考え、判断を重ねて実現していく。その過程にシンプル暮らしがある。
エヌケンさんと話していると頻出する「徹底的に考える」「自分に問う」という言葉の意味が何となくわかるような気がしてきた。
目に入る情報を最小限に。集中力アップの部屋で人生が変わる!
エヌケンさんの部屋の話に戻そう。この部屋を作るうえで心がけたことを聞いてみると…。
「殺風景で余白があること。モノが視界に入ると、脳が疲れて集中力が散漫になり、やりたいことができなくなる。だからこの部屋では余計なモノが目に入らないようにしました」(エヌケンさん)
人は1日で9000回ほど選択・決断をしているらしい。
だからせめて自宅にいる時だけは「選択回数」を減らせるように、目に触れる情報を制限したいのだという。
「例えばティッシュケース。普通は色がついて英語の名前が入っている。それが目に入るだけで、“何でこの色なんだろう”とか“この英語は和製英語なのかな”とか、さまざまな連想が始まります。脳にその連想をさせないために、無印の箱に入れました。“そんなことまで”と思うかもしれませんが、この積み重ねでしか選択回数は減らせないので」と徹底している。

エヌケンさん一番のお気に入りの場所は「ソファ」。
インスタの原稿を書く時も、スマホで情報を検索する時も、全ての作業はこの大好きなグリーンのソファの上でする。
「ソファは14畳の部屋の時にさえ持たなかったアイテムですが、この部屋では絶対に欲しいと購入したもの。あえてグリーンにしたことで、部屋全体が重くならずにまとまりました。ソファとテーブルなどの大きなアイテムを置いてはいますが、部屋に余白は必ず作るようにしています。部屋にも人生にも、余白は絶対に必要です」(エヌケンさん)

決して広くはない6畳だが、余白の持たせた心地よい部屋は確かに落ち着く。
ここでエヌケンさんが学び、インプットしたことは、この部屋のように美しく整理整頓されて多くのフォロワーたちに知恵を授けている。やはりオーガナイズされ余裕のある部屋は、住人のアウトプットや日々の生活、そしてその後の人生にまで影響を与えるのかもしれない。
次のページでは、エヌケンさんにシンプリストの黄金ルールを伺った。実際にエヌケンさんの収納を見せていただき発見した驚きの○○とは!?