賃貸保証会社(家賃保証会社)をプロが解説!連帯保証人とのメリット・デメリットを比較
「家賃保証会社」をプロが解説!
賃貸物件を契約する際、家賃滞納などの場合に備えて借主の保証人代わりになってくれるのが「保証会社(以下、家賃保証会社)」。
この十数年で一気に利用者が増えたと言われている。今や賃貸物件全体の約7割が、家賃保証会社の利用を前提にしている(※1)。でも、「実際には何を保証してくれるの?」「審査基準は?」「自分で家賃保証会社を選ぶことができる?」等、詳細についてはよく知らないという人が少なくないはず。
この記事では“不動産契約のプロ”である宅建士監修のもと、家賃保証会社の成り立ちからメリット、デメリット、利用する際の注意点までを詳細に解き明かしていこう。
※1(公財)日本賃貸住宅管理協会「家賃債務保証の利用状況調査」2018年版
今回監修してくれたのは?
不動産業界歴14年の宅建士で、不動産仲介「ラシックエステート」の相馬さん。
お客さまからよく質問されることなど、実際に経験したやりとりをベースに解説をいただいた!
賃貸物件契約時に登場する「家賃保証会社」とは?
借主が何らかの理由で家賃等の支払いを行わないと、大家さんは一方的に損してしまう。それでは困ってしまうので、家賃の滞納、支払い拒否等が発生したときに、借主にかわって支払う責任を負ってくれるのが、保証人(連帯保証人)や家賃保証会社という存在だ。
連帯保証人は家族や親戚に引き受けてもらうのが一般的だったが、近年、社会全体で核家族化と高齢化が進み、「連帯保証人としての審査基準を満たせる知り合いがいない」「親族とは疎遠で、頼みにくい」といった事例が増えてきた。そこで、借主が一定の料金を払うことで、保証人のかわりになってくれる家賃保証会社が登場した……という経緯がある。
家賃保証会社に加入するには審査があるものの、借主にとっては料金さえ払えば保証してくれるため面倒がなく、大家さんにとってもリスクが少ない、という利点があるため、一気に普及した。
なお、平成29年から、「家賃債務保証業者を国に登録する制度」が始まったが、あくまで任意の制度であり、登録がなくても家賃債務保証業を営むことは可能。ただ登録されている会社は国が定めた一定の条件を満たしているということなので、判断材料のひとつにはなるだろう。
そもそも連帯保証人とは?
連帯保証人とは、借主が家賃を支払わなかったときや設備を壊してしまい弁償できないなどの場合に、借主に代わって支払いを肩代わりする人のこと。単なる「保証人」と異なるのは、借主と全く同じ責任を負う点だ。例えば、「借主と連絡がとれない」といった場合には、連帯保証人に連絡が行く。また、たとえ借主が財産をもっていたとしても、家賃が支払われなければ、大家さんは連帯保証人に直接請求することができる。非常に重い責任が課されるので、家族など借主と関係の近い人に頼むのが一般的だ。
借主と同様に連帯保証人になるにも審査がある。基準は大家さんや不動産会社によって異なるが、安定した収入があることは重視される条件。無職の人、年金生活者や生活保護受給者はなれないことが多い。
なお、2020年の民法改正により、連帯保証人に関するルールが変わった。責任を負う範囲を「債務の元本」「債務に関する利息」「違約金」「損害賠償」「その他に発生する債務」に限定。その上で、保証すべき限度額の上限=極度額を賃貸借契約書に明記することが必要になった。ちなみに極度額が保証の範囲を超えている場合には、連帯保証契約そのものが無効となる。
連帯保証人か、家賃保証会社か?
入居時の条件として、連帯保証人が必要か、家賃保証会社への加入が必要かは、物件ごと、または大家さんや不動産会社の判断によって異なる。
「どちらか一方でOK」な場合、「両方必要」な場合、ごく希に「両方必要ない」ケースも。現在では家賃利用会社の利用が進み、「家賃保証会社のみ」を条件とする物件が5割近く、「連帯保証人と家賃保証会社への加入、両方必要」な物件が2割近くにまでなっている(上記※1)。
家賃保証会社、連帯保証人、それぞれのメリットとデメリットをまとめてみよう。
保証会社と連帯保証人のメリット・デメリット
家賃保証会社のメリット
- 保証人を頼める人がいなくても、保証料さえ払えば保証人の代わりになってくれる。
- 万一、家賃を滞納してしまっても、家族等に迷惑がかからない。
- 仮に借主の収入が十分に高くなくても家賃保証会社の審査に通れば、部屋を借りられる可能性がある。
家賃保証会社のデメリット
- ○円を加入時や更新時に支払ったり、賃料の○%を毎月支払ったりなど、保証料が発生するため、借主の金銭的負担が増える。
- 審査に通らないと加入できない。
連帯保証人のメリット
借主の金銭的負担が発生しない。
仮に借主の収入が十分に高くなくても連帯保証人の社会的信用が高ければ、部屋を借りられる可能性がある。
連帯保証人のデメリット
- 重い責任を負うため、引き受けてくれる人が限られる。
- 万一、借主が家賃等を滞納すると、連帯保証人に多大な迷惑がかかる。
- 借主と連帯保証人、両方が審査に通らなければ部屋を借りられない。
上に挙げたのは、借主にとってのメリットやデメリット。家賃保証会社は、大家さんや不動産会社にとって「自ら入居申込者を審査する手間が省ける」「審査の信用性が高い」「万一、家賃が滞納されたときにも、相手に催促したり、訴訟を起こしたりする労力が要らない」など、ほとんどメリットしかない。近年、家賃保証会社が急速に普及した理由のひとつだろう。
家賃保証会社が保証してくれる範囲は?
保証範囲は家賃保証会社によって異なる。単に滞納家賃のみ、というところもあれば、共益費や管理費、更新料の滞納分、違約損害金や退去時の原状回復費まで含むところもある。保証範囲が広いほど、保証料も高くなるのが一般的だ。
家賃保証会社は借主が選べる?
家賃保証会社自体は数多く存在するが、大家さんや不動産業者は特定の会社と契約していることが多く、その場合、借主が自由に家賃保証会社を選ぶことはできない。ただ、不動産業者によっては複数の家賃保証会社と提携している場合があり、借主が選べるケースもあり得る。
家賃保証会社に支払う料金は?
料金体系は事業者によって異なるが、まず初回時(契約時)に家賃月額の○%(もしくは一定額)を支払い、その後、一年ごとに定額更新料を支払うスタイルが一般的。
国土交通省の「(公財)日本賃貸住宅管理協会(平成28年6月)家賃債務保証会社へのアンケート調査」によると、「初回時月額賃料の50%、以後一年毎に1万円」と設定している事業者が最も多く、全体の42%。次いで「初回時月額賃料の50%、以後一年毎に2万円」が12%程度となっている。初回時の料金を月額賃料の100%としている事業者も少なくない。割合は少ないが、年毎ではなく月毎の定額保証料がかかるケースもある。
加入するときの審査基準は?
家賃保証会社に加入するためには、事業者による審査に通る必要がある。事業者が保証人に代わる役割を引き受けるにあたって、借主が信用できる人物か否かを判断するためだ。
審査基準、審査対象は事業者によって様々だが、一般的には収入や雇用形態(正規雇用or非正規雇用)、職種、勤続年数等。つまり入居時の審査と同様で、収入が安定している正規社員や公務員、一社への勤続年数が長い人ほど審査に通りやすい傾向にある(ただし、60代以上では通りにくい)。収入については家賃との比率で判断され、「家賃が月収の1/3以内に収まっていること」が一般的な目安となる点も、入居審査と同様だ。
また「過去の滞納履歴」も重視される。全国賃貸保証業協会(LICC)に加盟している家賃保証会社では入居者の賃料支払状況が共有されており、滞納歴があると新たに加入するのが難しくなってしまうのだ。
家賃保証会社の申し込みに必要な書類
家賃保証会社に申し込む際に必要となる書類は、主に以下のような内容となる。
・家賃保証会社への申込書
・本人確認書類(運転免許証、健康保険証)の複写
・収入を証明するもの(源泉徴収票や給与明細書など)
上記の書類を提出した上で、事業者が申込者の勤務先に「在籍確認」の電話をする場合が多い。審査に通りたいからといって、くれぐれも虚偽の申告はしないように。
申し込みから審査を経て、審査結果が出るまでの日数は「数日〜一週間程度」が一般的だ。無事、審査に通れば、入居の手続きへと進むことになる。
家賃を滞納したらどうなる?
家賃保証会社に加入しているから、多少、家賃を支払うのが遅れても大丈夫……なんて考えるのは絶対NG! 家賃保証会社は借主がやむを得ない事情で家賃等を支払えないとき、一時的に立て替えてくれるだけ。つまり借金となるのだ。家賃保証会社に肩代わりしてもらうと後日、請求書が送られてくるので、その費用を速やかに支払わなければならない。
もしも請求を無視した場合、相手事業者から再度、催促の通知がある。滞納から時間が経つと元本だけでなく利息も発生するので注意が必要だ。
それでも通知を無視したなら、訴訟を起こされ、最悪の場合は銀行口座を差し押さえられたり、強制退去させられたりすることも。家賃保証会社はあくまで不測の事態が起きたときの保険と考え、もしも家賃を支払えないことが分かったら、その時点で大家さんや不動産業者に相談しよう。
困った時は公的制度の活用を
職を失ってしまった場合など家賃が払えないときには、家賃を滞納する前に公的制度の利用を検討してみよう。
住居確保給付金
「住居確保給付金」は厚生労働省が実施している救済制度で、「離職・廃業から2年以内の人」または「休業等により収入が減少し、離職・廃業と同程度の状況にある人」が対象。
受給には条件があり、「直近の世帯収入が、基準額(市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12)と家賃(上限あり)の合計額を超えていないこと」となっている。また支給される金額にも自治体ごとに上限が設定されているが、家賃全額でなくても給付が受けられるのだ。支給が受けられるのは原則3ケ月間まで(×2回=合計9ケ月までの延長可能)、支給は自治体から大家さんに家賃相当額が直接支払われる。
●住居確保給付金相談コールセンター
電話番号:0120-23-5572
個人向け緊急小口資金・総合支援資金
また、新型コロナウイルスの影響で休業したり、収入が減ったりした人向けに「資金を借し付ける」制度もある。緊急かつ一時的な生計維持のための生活費を貸してくれる「緊急小口資金」と、生活を立て直すために必要な、一定期間(3ケ月)の生活費のための「総合支援資金」だ。いずれも貸し付けには条件があるので、利用したい人は下記の窓口に相談してみよう。
●個人向け緊急小口資金・総合支援資金相談 コールセンター
0120-46-1999
家賃支援給付金
新型コロナウイルスの影響で仕事の売上が減り、事務所として借りている場所の賃料を支払えなくなった場合には、中小企業庁が実施している「家賃支援給付金」を利用するといい。賃料の2/3程度の金額(法人は最大600万円、個人事業者は最大300万円)が給付される。詳しくは下記に問合せを。
●家賃支援給付金 コールセンター
0120-653-930
家賃の支払いは滞りなく!
賃貸物件の利用シーンにおいて、借主からも大家さんからも、ますますニーズが高まっている家賃保証会社。上手に利用すれば、安心できる存在であることは間違いない。ただ、滞納して家賃保証会社に立て替えてもらうと、後々まで記録が残り、他の部屋に引っ越すときに影響が出ることもあるので、その点には十分注意されたい。
写真=国土交通省「賃貸住宅標準契約書・家賃債務保証業者型 平成30年3月改定版、AdobeStock
監修=ラシックエステート
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