子供がお片づけしやすい部屋作りのコツとは?早稲田大学の佐藤先生に聞いてきた

公開日:2018年5月22日

「どうして子供部屋は散らかるの?」という永遠の問題を部屋作りで解決!

「子供部屋が片付かない」「子ども用のスペースが散らかる」という問題は、子供を持つ家庭なら誰もが抱える悩み。今回は、早稲田大学人間科学部の准教授であり、建築計画研究・こども環境学の専門家である佐藤将之先生に、子供が片付けをしやすいような部屋作りの方法ついてお伺いした。

子供が片付けをしやすい部屋作りのポイントは大きく4つ。

①子供の習性を知る
②子供の気持ちや行動に寄り添った収納の動線をつくる
③初心に戻り、子供をどう育てたいか考える
④正解をすぐに求めず、「急がば回れ」の気持ちを忘れない

以下で詳しく説明しよう。

①. 子供の動きの癖と習性を知る

「まずは子供が学校から帰ってきてからの、一連の動きと習性をリサーチして整理してみましょう。ランドセルやカバンを棚の上に置くか、床に投げ出すか。机の上には教科書やノートが散乱していないか。子供の“物の置き方の癖”や“どこに物が集中しているか”を知ることに、片付けのヒントが隠されていることが多いんですよ」と佐藤先生は語る。

「私の研究室の学生・有賀菜月さんが、子供が部屋にある物を子供自身がどう考えているかを調査した結果があります。たとえばフィギュアは“飾りたい”、“教科書や上着はすぐ手の届くところに置きたい”など、子供は自分の身の回りのものを、それなりに位置付けて考えていることがわかりました。大人は漠然と散らかっていると感じていても、子供にとっては意味があってそこに置いている場合もあるんです」(佐藤先生)

大人が勝手に「教科書は本棚に入れるべき」「ランドセルは机の横に掛けるべき」と考えて棚や収納を作っても、子供の行動や意思と反していたら、片付けは進まない。まずは子どもの気持ちも考慮しつつ、子どもの日常生活をよく観察して、動きの習性を把握しよう。

子供の習慣になっている動きや癖を知ることで、「きちんと収納」への一歩が踏み出せる
子供の習慣になっている動きや癖を知ることで、「きちんと収納」への一歩が踏み出せる

②.子供の気持ちや行動に寄り添った収納の動線をつくる

佐藤先生いわく、「子供が部屋にある物をどう捉えているか、そしてどこに置く癖があるかを把握してから、棚の収納などを考えはじめたほうが良いです。たとえば大切な人形やフィギア、昔もらったメダルなど“飾りたい”と感じているものは、目線より上の部分に集約させるのも方法です」とのこと。

手はじめに机に座った際子どもの目線の高さと同じになる棚の上部、壁面収納の胸より上の部分などに飾り棚やガラスケースなどを置いて飾ってみよう。

実際に目線上部に好きなフィギアを飾った部屋
実際に目線上部に好きなフィギアを飾った部屋

そしてランドセルやカバンなど帰宅して床に置きがちなものは、棚の一番下部分を開けておき、床に置く感覚でしまえる収納を作る。「無理にどこかに収納させずに、子供の動きの癖をふまえて収納場所を考えれば、ストレスなくそこにしまうことができます」(佐藤先生)

フィギュアなどは1000~1500mmの間に飾るのがベスト。床に置きがちなランドセルやカバンなどは、0~250mmの間が理想だ(有賀菜月さん提供)※「住宅における子どもの片付けに関する研究」,
この図だとフィギュアなどは1000~1500mmの間に飾るのがベスト。床に置きがちなランドセルやカバンなどは、0~250mmの間が理想だ(有賀菜月さん提供)※「住宅における子どもの片付けに関する研究」, 人間・環境学会(MERA)第25回大会, 2018年5月

「適切な収納場所さえ用意してあげれば、子供部屋であっても散らかることはありません」と佐藤先生は言う。教科書や参考書類も、使用頻度の高いものや現在進行形で使っているものは、机に座って手の届く範囲にまとめる。使用頻度の低い勉強道具や昔のプリント類などは、少し離れていてもスペースがあるところに収めればいい。

また物量を減らして、出し入れが困難なく行えることもスッキリ片付いた部屋には必須条件だ。今の生活に必要のないものは、子供部屋から撤去しよう。片付けやすい収納を考える前に、必要ないものを処分する習慣をつけることも大切だ。

③.初心に戻って「子供をどう育てたいか」を親が考える

「子供部屋だけに限らず、家全体の収納について考えるよい機会だと捉えましょう」と佐藤先生。たとえばキッチンの収納も、“子供と一緒に料理を作る場所”にするか“お母さんの城”にするのかで、キッチンタイプや収納方法、そろえるキッチン用具も異なってくる。

「子供と一緒に料理を作る場所にしたいと考えているのなら、手の届くところに危険ではない調理用具を置いたり、料理が身近に感じられるようなしつらえがいいでしょう」と佐藤先生。つまり「子供をどう育てたいか」「キッチンのあり方」という家族の考え方が、収納にも大きく関わってくる。これは家全体の収納においても同じことがいえるという。

佐藤先生は、「子供部屋が片付かないのは、必ず理由があります。子供が自分の部屋をどう思っているのか、親は子供部屋をなぜ片付けてほしいと考えているのか、心の中にあるさまざまな思いや感情を一度整理して親子で話し合い、収納について今一度考えてみることをおすすめします」と話す。

収納の問題を考える時、「親の思い」や「子育てに対する考え方」も一緒に整理してみよう
収納の問題を考える時、「親の思い」や「子育てに対する考え方」も一緒に整理してみよう

④何度も考え直しながら進める

振り返り、歩みを一歩戻してみる勇気も時には必要
振り返り、歩みを一歩戻してみる勇気も時には必要

「正解をすぐに求めない」ことは、家づくりで最も大切な点だと佐藤先生は話す。

「造り付けの家具をしつらえる時でも、棚板の幅や高さを変えられたり、取り外しができるものを選びましょう。合わなければ変化させられるフレキシブルなものを選べば、失敗しても取り返しがつきます」(佐藤先生)

まずは考えた収納方法をトライアルしてみる。そこで振り返って問題点が出れば、また変化させて様子を見る。という風に最短距離で収納を決めるのではなく、「変化」と「振り返り」繰り返すことが重要だ。

子供の大切な部屋だからこそ、焦らずに時間をかけて最適な収納を作ることが一番の近道。快適な家づくりの秘訣は「急がば回れ」の気持ちを忘れないことだと、佐藤先生は教えてくれた。

教えてくれたのは?

佐藤将之 准教授

早稲田大学人間科学学術院准教授。1975年秋田生まれ。秋田高校、新潟大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。江戸東京博物館委嘱子ども居場所づくりコーディネーター等を経て現職。2男児の父。

文=元井朋子
写真提供=有賀菜月

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