子育てにいい賃貸物件は? 育児中の家族の部屋探しのポイントを早稲田大学の佐藤先生に聞いてきた

公開日:2018年4月20日

子育て中の家族に優しい&うれしい部屋選びとは?

「育児中は庭がある一軒家の方がいいの?」「何階を選ぶべき?」……

子育てにあたっての部屋選びは、いろいろな迷いがつきもの。子どもを育てている期間だからこその、お部屋選びの基準があるはず!

今回は早稲田大学人間科学部の准教授であり、建築計画研究・こども環境学の専門家である佐藤将之先生に、育児中の部屋の選び方についてお聞きした。

悩み多き子育てファミリーの部屋選びのポイントを早稲田大学の佐藤先生に教えてもらおう!|子育てにいい賃貸物件は?育児中の家族の部屋探しのポイントを早稲田大学の佐藤先生に聞いてきた
悩み多き子育てファミリーの部屋選びのポイントを早稲田大学の佐藤先生に教えてもらおう!

安全を確保できる部屋を選ぶ

10年前から比較して、現在はメゾネットや一軒家の賃貸物件が増え、子育て中のファミリーからの人気も高まっている。

「子どものために庭がある一軒家がいいかも」なんて思いがちだが、佐藤先生によれば、0~1歳までのハイハイ~ヨチヨチ期、2~3歳のイヤイヤ~ギャングエイジ期においては、家のなかに階段や縁側がない方が落下の危険がなくて安全だという。

階段にセイフティゲートを設置していても、ロックがかからずに開いてしまったり、それで指を挟んだりと、ケガや事故のもとになることもあるので要注意だ。またリビングとキッチン、寝室や子ども部屋の階層が離れているのも目が届かなくて心配のもとになる。

「親から遊んでいる姿が見える距離、お昼寝から目覚めたことがわかる距離、つまり子どもから見た時に、お母さんの姿が確認できる場を担保するのが理想ですね」と佐藤先生。

マンションやアパートの一室であれば家のなかに階段もなく、気配を身近に感じられるので、乳児期の子育てでは安心しやすい。最近はバリアフリー構造でフラットな造りなっている部屋も多いため、つまづいたり、段差から落ちることもなく安心だ。幼い子がいる時期は、親子が安心感を得やすい部屋がオススメのようだ。

子育て中は「子どもがいつの間にか階段を上っている!」ということも。子どもがケガをしないためにも、乳児期間の住まいはフラットな造りのものがベター|子育てにいい賃貸物件は?育児中の家族の部屋探しのポイントを早稲田大学の佐藤先生に聞いてきた
子育て中は「子どもがいつの間にか階段を上っている!」ということも。子どもがケガをしないためにも、乳児期の住まいはフラットな造りのものがベター

部屋選びの2つのポイント

佐藤先生によれば、安心できる、かつ安全性を確保した上で、他に部屋選びでチェックするポイントは2つあるという。

・子育て中は低層階がベター
・DIY可物件にメリットが多い

以下で詳しく説明しよう。

①.子育て中は低層階がベター

佐藤先生によれば、実は、高層階で子育てをするのを避けた方が良いとされるデータや研究事例が、いくつかあるという。

まず、東海大学医学部講師の逢坂文夫氏の研究から(※1)、妊娠中の流産・死産率は、1~2階では6.0%、3~5階では8.8%、6階以上になると20.8%と急激に高くなるというデータが出ており、その後の継続的な調査でも、ほぼ同じ数値が確認されている。

また高層マンションでは頭痛やめまいなどを起こす「高層マンション症候群」の症状を訴える人も増えている。

それに加え福島学院大の織田正昭教授(福祉心理学)が指摘しているように、高所に慣れすぎて恐怖感が欠落してしまう感覚「高所平気症」(※2)の子どもによる転落事故が増えており、高層マンションでの育児が懸念されているのも事実だという。

戸数の多い高層マンションでは、顔見知りができづらくコミュニティの形成も難しいといわれ、外出機会が少なくなり運動不足になりがちというデータも。

家のなかの遊びも大切だが、子どもは外で思いっきり体を動かすことが精神的・肉体的成長には欠かせない。

エレベーターだけでなく、階段を利用して外出できる環境づくりが子育て中には必要で、高層階は絶対にNGではないが、選べるなら妊娠~子育て中の期間は5階以下の低層階を借りる方がよいと教えてくれた。

※1「生活環境が子どもの健康や心身の発達におよぼす影響に関する研究 平成6年度研究報告書」(厚生省)
※2「高所“平気”症の子供たちが急増中? 高層マンション暮らしで怖さ薄れ…転落事故も続々と」(産経ニュース)

高層マンションのメリットもたくさんあるが、子育て中は低層階を選びたい|子育てにいい賃貸物件は?育児中の家族の部屋探しのポイントを早稲田大学の佐藤先生に聞いてきた
高層マンションのメリットもたくさんあるが、子育て中は低層階を選びたい

②.DIYで手を加えられる部屋を

近年増えつつあるDIY可物件だが「子どもがいればそういった部屋を選ぶのも賢い選択」と佐藤先生。

あらかじめ壁紙を貼っておけば、いたずら書きされた時も現状復帰が簡単で、子どもの成長度合いに合わせて棚の高さを変えたり、リビングに間仕切りをしたりと気軽に模様替えができるのも魅力的だ。

また、家の中をDIYで工夫して変化をつけられるので、引越しをしなくても気分転換や配置変えができ、結局安上がりに済むことも。自分たちで作った部屋には愛着がわくせいか、長く住み続ける傾向もあるそうだ。

週末のDIY作業を子どもと一緒に楽しむことで、部屋を自分で創造する喜びを感じたり、大工仕事の大変さを理解したり、子どもにとってもよいこと尽くしのDIY。お父さんが子どもと過ごす時間も、倍増するかもしれない。

子どもと一緒にDIYをすることで、家族の絆も育つ!|子育てにいい賃貸物件は?育児中の家族の部屋探しのポイントを早稲田大学の佐藤先生に聞いてきた
子どもと一緒にDIYをすることで、家族の絆も育つ!

賃貸だからこそ家族に合わせた部屋選びを

子どものためと思っていたことが危険をはらんでいたり、DIYが家族の絆を強くしたり、子育て中の部屋選びには意外なポイントがあった。

賃貸物件のよさは、家族の現状に合わせて住み替えられるところにある。その時々の家族にとってのベストな部屋選びをしよう。

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監修=佐藤将之 准教授

早稲田大学人間科学学術院准教授。1975年秋田生まれ。秋田高校、新潟大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。江戸東京博物館委嘱子ども居場所づくりコーディネーター等を経て現職。2男児の父。

文=元井朋子

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