散歩の達人編集部&ブックスルーエの書店員がオススメする、東京がもっと好きになる本8選

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この街にきっと住みたくなる! 書店員&街情報誌編集部が推薦する物語とは?

街の情報を知り尽くした街情報誌の編集部と、その街の書店員に、読んだらその街に住みたくなる本を紹介してもらうこの企画。

今回は言わずと知れた首都圏の散策マガジン・散歩の達人編集部のみなさんと、吉祥寺にある大型書店・ブックスルーエの書店員に、読んだら東京がもっと好きになる、オススメの本を教えてもらった。

街情報誌編集部が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

散歩の達人 編集部
編集長 武田憲人さん
編集部 土屋広道さん、渡邉恵さん、町田紗季子さん
言わずと知れた首都圏散策マガジン。新しい、オシャレという概念だけでなく、散歩の達人独自の目線でその街の魅力を多方面に伝える。
web:http://www.kotsu.co.jp/magazine/sanpo/

散歩の達人 編集長 武田憲人さん推薦本:大正幻影(著・川本三郎)

大正幻影 (岩波現代文庫)

時代と時代のはざまにあった大正という「幻影」の世界

佐藤春夫、谷崎、芥川、荷風などの作品を論じた評論集。大正時代を「幻影」としてとらえた美しい一冊。佐藤春夫の『美しき町』が全編を通して通奏低音のように扱われる。

1919年に発表されたこの作品は、隅田川の中州に理想の街を造ろうとする男たちの奇妙な物語だ。これを「幻影」とも言うべき街だとし、大正期の作家たちや東京という街について、独自の視点で論じている。大正期の作家について詳しくなくても、東京という街を振り返るうえでとてもおもしろい一冊だ。

江戸でもない、西洋でもない、宙ぶらりんだった大正期の東京を思い浮かべると、現在の深川、森下、門前仲町あたりの海辺の下町が、なんとも味わい深く見えてくる。(編集長 武田さん)

散歩の達人編集部 土屋さん推薦本:小さな男*静かな声(著・吉田篤弘)

小さな男*静かな声 (中公文庫)

味わうように読んでほしい「男」と「声」の物語

百貨店に勤務しさまざまなこだわりに満ちた「小さな男」と、ラジオのパーソナリティで「静かな声」をもつ女性。そんな2人の物語が交互に続く。

大きな展開はなく、ただ穏やかに各々の日常の話が綴られるのだが、それらが徐々に積み重なり、静かな余韻を生む。2人の語る等身大のエピソードがなんとも趣深く、いちいち共感したり、思いをめぐらせたりするのが楽しい。

今はなき渋谷の小劇場・ジァン・ジァン以外は実在のスポットは出てこないが、金色の手帳を買ったアメ横の店や下北沢のはずれの詩集屋など、登場するモチーフに街のイメージが重なり、ゆるやかな世界観を形作っている。少しずつ、幾晩にも分けて読みたいような作品だ。(編集部 土屋さん)

散歩の達人編集部 渡邉さん推薦本:焼き餃子と名画座―わたしの東京味歩き(著・平松洋子)

焼き餃子と名画座―わたしの東京味歩き (新潮文庫)

食都・東京を巡る垂涎必至のグルメエッセイ

エッセイスト・平松洋子氏が東京の街を歩いて見つけたとびきりの味を案内する。さくっ、じゅわあ、とろーっと溶けるとんかつ、時折なつかしくなるけなげな冷やし中華、季節ごとに足を運ぶ老舗酒場、ほっとなごむいちごのショートケーキ……さまざまな味の記憶を綴る。

作中には色々な街が登場するが、「みなそれぞれに自分の町の地図を持っている。歩いたぶん、暮らしたぶんの歳月が降り積もってできあがった地図」と書かれているように、著者のホームタウン・西荻窪がひときわ魅力的に描かれている。

喫茶店、定食屋、本屋、路地。すてきなスポットがたくさんある西荻窪に「自分の地図」を持ったら楽しいだろうなと思った。(編集部 渡邉さん)

散歩の達人編集部 町田さん推薦本:駅物語(著・朱野帰子)

駅物語 (講談社文庫)

毎日正確に、繰り返される駅という名の小さな奇跡

東京は人が多いと常々思う。この物語は、その最たる場所の一つ、東京駅で働く新人駅員の成長物語。

毎日100万人以上が乗降する東京駅に駅係員として配属された若菜は、駅で起こるアクシデントに七転八倒。酔っ払う乗客、鉄道マニアの同期、全自動化を目論む副駅長に、圧倒的な個性をもつ先輩たち。臨場感あふれる筆致で、駅を支える人と行き交う人を描いた作品だ。

「物語と物語は時に衝突しすれ違い、組み合わさり、新しい物語を生む」。駅はそれが交差し、接続する世界。その世界に浸れば、満員電車の通勤も、人が入り乱れる中での乗換も、上手くいかない日も、なんだか頑張れる気がしてくる。(編集部 町田さん)

書店員が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

ブックスルーエ 山田正広さん(仮名)
吉祥寺の大型書店。昭和11年に創業し、吉祥寺と共に歴史を歩んできた。サンロード商店街を進んだところにある。オリジナルのブックカバーが好評。
web:http://www.books-ruhe.co.jp/

ブックスルーエ書店員 山田さん推薦本①:もう一つの「バルス」 ―宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代(著・木原浩勝)

もう一つの「バルス」 -宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-

名作『ラピュタ』に隠された天才監督の苦悩の日々

あの名シーン「バルス」にはもう一つのアイディアが存在した。『天空の城ラピュタ』の制作進行という役割を務め、最も間近に宮崎監督を見続けた著者が明かす名作アニメの創作秘話。

天才と名高い宮崎監督の、重圧に苦しむ意外な素顔。会社の存続を懸けた『ラピュタ』完成までの日々が制作過程、作品考察を交えて描かれている。フィルム完成から公開までわずか10日だったという緊迫した現場の様子には息を飲んだ。

この本を読めば「『ラピュタ』は何度も観たよ」と言う人でも、また見たくなること請け合い。宮崎監督が引退撤回を発表した今、一読をオススメしたい一冊。作中には旧スタジオジブリの吉祥寺井野ビル、茶房武蔵野文庫などが登場。(山田さん)

ブックスルーエ書店員 山田さん推薦本②:吉祥寺の朝日奈くん(著・中田永一)

吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫)

夢やぶれた青年に訪れるほろ苦くもさわやかな恋

話題の覆面作家・中田永一が贈る、切ない5つの恋愛模様。上から読んでも下から読んでも、山田真野(やまだまや)という、美しい女性。そして、吉祥寺の喫茶店に勤める彼女目当てにその店に通い詰めていた「僕」。2人はある事件をきっかけに急激に仲良くなっていくものの、彼女には何か秘密があって……。(表題作)

ミステリー仕立ての切ないラブストーリーが静かに胸を打つ。タイトルの通り吉祥寺が舞台となっていて、井の頭恩賜公園をはじめ、サンロード商店街、メンチカツが有名なミートショップ・サトウなど、吉祥寺民ならニヤリとしてしまう場所がたくさん登場するのもポイント。これを読めば、吉祥寺に暮らして恋がしたくなるはず!

ブックスルーエ書店員 山田さん推薦本③:東京吉祥寺田舎暮らし(著・井形慶子)

東京吉祥寺 田舎暮らし (ちくま文庫)

吉祥寺で「田舎」暮らし?素朴な生活の楽しみ方

著者が愛して止まないイギリス流の生活の原点は武蔵野吉祥寺にあった。吉祥寺のユニークな住まい方を著者目線で紹介した本。

著者の井形さんは、英国流の暮らしを紹介する著作で有名な作家。そんな彼女の原点は、実は武蔵野吉祥寺に。格安家賃の昭和の家屋、路地に佇む老舗店のおいなりさん、週末の朝のスタバでのひととき、畑で採れる無農薬野菜……節約と少しの贅沢、そしてシンプルな考え。

“住みたい街NO.1”として名高い吉祥寺を、あえて「東京の田舎」と呼ぶ井形流のスローライフが伺える。英国流生活にもつながる暮らしを楽しむエッセンスが満載。オシャレなカフェや雑貨店だけではない、吉祥寺の素朴な一面を知ることができる一冊。

ブックスルーエ書店員 山田さん推薦本④:昼のセント酒(著・久住昌之)

昼のセント酒

昼から「湯上がりの一杯」背徳と至福の大人の嗜み

『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』の原作者・久住昌之の趣味である、銭湯巡りと飲酒の日々を書いたブログ・エッセイが原案のエッセイ。

「風呂」×「飯」という提案の魅力的なこと! 銭湯で体を流し、明るいうちから一杯やる―名付けて「昼のセント酒」。読んでいるだけで、東京下町の風景、銭湯の湯の匂い、喉を通るビールの冷たさが再現されるよう。銭湯で出会う人々の人間模様にもしんみりと感じ入る。幸せは案外自分たちの身近にあるということを教えてくれる、大人のための作品だ。

作中に登場する銭湯・飲み屋は東京下町を中心に実在するので、気になったらすぐにでも行けるのがミソ。手ぬぐいひっさげ、「昼のセント酒」に繰り出そう!

本を読めば、街がわかる!

今回は本のプロたちに街の雰囲気がわかるものからグルメまで、首都圏を舞台にした街本を紹介してもらった。職場からの距離や設備を条件にするのももちろん大事。でももっとロマンチックに部屋を探したいなら、本から住む街を探す、なんてのもいいかもしれない。

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※「CHINTAI2017年9月号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています
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