東京メトロ直通運転開始で便利になる街「北綾瀬駅」「方南町駅」周辺をサキドリ取材してきた
「北綾瀬」「方南町」 都心へのメトロ直通運転開始で便利になる街の生活環境を先取りレポート!
今、東京の2つの駅に注目が集まっている。東京メトロ千代田線の「北綾瀬駅」と、丸の内線の「方南町駅」だ。両駅はともに地下鉄の“支線”なのだが、2019年から“本線”へと格上げされることが決定。都心部へのアクセスがスムーズになり、通勤・通学の便が大きく向上する。
今はちょっと不便だけど、快適性が増す1年後は人気の街として一気に浮上してくるかもしれない。そんな注目の「北綾瀬」「方南町」をサキドリすべく、周辺の生活環境をチェックしてみた。

まずは「北綾瀬」から見ていこう
千代田線の「負」を一手に背負う北綾瀬
そもそも地下鉄の“支線”とは、いったいどういうことなのか? まずは北綾瀬駅の現状(2018年3月時点)からおさらいしておきたい。
東京メトロ千代田線は渋谷区の「代々木上原駅」から足立区の「北綾瀬駅」を結ぶ、全長24kmの鉄道路線。沿線には「日比谷」「大手町」といったビジネス街を擁し、都心部における主要な通勤路線の一つとなっている。
しかし、そのうち「綾瀬駅」~「北綾瀬駅」間だけはやや事情が異なる。この区間は千代田線本線の直通運転がなく、綾瀬駅でいちいち支線に乗り換えなければならないのだ。

実際に、大手町方面から北綾瀬に向かってみよう。



「0番ホーム」なんて初めて見た。RPGの隠しルートみたいでかっこいいが、やっぱり不便である。


同じ千代田線なのになぜこんなことになっているのかというと、単純に北綾瀬駅はホームが短く、3両編成以上の電車が発着できないからだ。いじわるで阻害されているわけではない。
そのため、10両編成の本線が乗り入れられるよう、北綾瀬駅ではホームの延伸工事が進められている。工事は2018年に完了予定。その翌年からは、晴れて直通運転がスタートする見込みである。

直通運転が実現すれば、北綾瀬から大手町、日比谷、表参道まで乗り換えなしで行けるようになり、さらには都心方面への「始発電車」になるため朝のラッシュ帯に座って通勤できる可能性も高くなる。
これまで千代田線の「負」を一手に背負ってきた北綾瀬が、一気に大きな「利」を得るわけだ。
北綾瀬ってどんな街?
前置きが長くなったが、そんな大注目の北綾瀬とはいったいどんな街なのだろうか? 駅から徒歩5~6分圏内を、くまなくチェックしてみたい。
まず、駅北側を出ると「環七」が目の前を横切っている。その両側には幹線道路沿いならではの大型店がいくつも点在しており、飲食店のほか、家電量販店、スポーツ用品店、ブックオフなど、生活者にとっても重宝しそうなラインナップだ。



飲食店はめちゃくちゃ充実している、というわけではないが、中華、焼肉、ラーメン、ファミレス、牛丼チェーンと、一人暮らしの若者が飽きずにローテーションを回せる程度のものはしっかりそろっている。
また、ファミリーに人気の「はま寿司」や「ブロンコビリー」などもあり、ステーキ&寿司というわかりやすいごちそうが安く食べられるのは、食べ盛りの子どもを抱える親御さんにとっても有難いのではないか。


スーパーは駅徒歩5分の「ベルクス」が、この界隈では最も大きい。品ぞろえ豊富かつ、何でも安く、真イワシは6尾199円、アジ4尾100円、国産若鶏ムネ肉100g48円、ほうれんそう1袋59円だった。北綾瀬に住んだら自炊しない手はないだろう。



豊かな自然と、謎のパンダゾーン
一方、駅の南側は住宅街。大きな公園もあり、子どもの姿が多く見られた。




また、北綾瀬といえば「しょうぶ沼公園」も有名だ。駅前の貴重な土地を惜しみなく使って整備された、広大な公園である。





しょうぶ沼公園を抜けてさらに南へと進む。このあたりにもポツポツと飲食店が点在していて、特にラーメン屋が多い。そのうちの一軒、「ラーメンパンダ」に入ってみる。


店内はスタンダードなラーメン屋の装いで、特にパンダっぽくはない。2人の店員は、どちらかというとスタンダードな霊長類顔だ。
それはさておき、ラーメンである。ニンニク激盛りの「元気ラーメン」も気になるが、ここはやはり看板の「パンダラーメン」でいきたい。

たっぷりの豚キムチとニラがどっさりのったラーメン。どこがどうパンダなのかは分からないが、うまい。味が濃くて、ライスが進む味だ。


そのまたすぐ近くには、「お好み焼きパンダ」もあった

パンダグループが局地的に幅をきかす一帯。もしや住所もパンダなのかと思ったら、そこは普通に「谷中」だった。


さて、最後はすっかりパンダの話になってしまったが、改めて振り返ると北綾瀬はいい街だった。
駅前のコンパクトなエリアに暮らしに必要な要素が集まっていて、過不足がない。物価も安い。自然環境も豊か。パンダ(の置物)までいる。
近隣の亀有駅や綾瀬駅周辺に比べ、ガヤガヤした雰囲気がないのもいい。盲腸線ならではのローカル感みたいなものが街全体に漂っていて、のんびりした雰囲気である。通勤利便性云々を抜きにしても、普通に住みたくなってしまった。
続いて「方南町」をチェック!
丸ノ内線の支線である「方南町」。今は中野坂上での乗り換えが必要
さて、続いては「方南町」である。方南町も北綾瀬同様、現状は丸の内線の“支線”となっている。都心方面へ向かうには、中野坂上駅で“本線”に乗り換えなくてはならない。


しかし、そんなもどかしさも間もなく解消される。さらに、直通運転開始後はこちらも「始発」のアドバンテージを得ることになる。住人はウハウハであろう。
方南町ってどんな街?
では、駅周辺の生活環境はどうなんだろう?
まず、方南町といえば駅前の交差点から東にのびる商店街である。肉屋、八百屋、ブティックから不動産屋まで何でもそろっていて、この商店街だけで衣食住ぜんぶいける。
飲食店もサイゼリヤなどのメジャーどころからトンカツの松乃屋といった渋めのチェーンまでそろっていて、外食派も満足できそうだ。


商店街をちょっと外れると、ホームセンターや大型スーパーもあって心強い。




このように、商店街と大型スーパーが共存している。競争は苛烈だが、利用者にとっては多様な買い物の選択肢があってありがたい。
以前、東京の街に詳しい専門家に取材した際、「暮らしやすい街とは『多様性のある街】である」と言っていた。大型スーパーひとつに依存していると、そこが潰れた途端に買い物難民になってしまうが、スーパーも商店街もあればリスクヘッジできるからだ。そういう意味では、方南町は多様性抜群である。
そろそろランチにしよう。商店街にはチェーン系以外にも、老舗っぽい定食屋や中華料理屋が多く、なかなか一つに絞り切れない。


熟考の末、ひときわ“雰囲気”がある「定食のヤシロ」に入ってみることにした。「ヤシロ」のカタカナが、なんとも昭和的で味わい深い。



サメフライも気になるが、一見客が頼むメニューとしてはトリッキーすぎるので今回は見送り(7回目くらいで頼もう)。「にしん丸焼き定食」をオーダーした。

にしんは脂がたっぷりのっていて、ライスのお供として申し分ない。にしん蕎麦はたまに食べるけど、こんなにうまい魚だったとは気づかなかった。
タケノコや厚揚げを炊いたものや、ポテトサラダ、漬物など、副菜もしっかり作ってある。味噌汁の具は、旬のキャベツだ。
ここまで手の込んだ定食は久しぶりに食べた。こんなお店が近所にある地元民がうらやましい。ぼくが独裁者だったら、権力にものを言わせてお店のおばあちゃんごとうちの前に移転させるだろう。
方南町はマンション建設ラッシュ
さて、改めて街を散策すると、ところどころでマンションの建設工事が行われているのが目に入る。

直通運転がスタートし人気が高まる2019年に向け、急ピッチで住環境が整備されている感じだ。本格的な方南町ブームが来る前に先んじてレポートしようとやってきたが、現地はすでにけっこう盛り上がっていた。


これはきっと人気が出てしまう
というわけで、北綾瀬、方南町ともに、現時点ですでに暮らしやすそうないい街だった。
直通運転開始が近づき注目が集まれば、きっと多くの人がその魅了に気づいてしまうことだろう。ライバルが少ないうちに少しでもよい物件を、青田買いならぬ「青田借り」するなら今である。
文・写真=榎並紀行(やじろべえ)
※雑誌「CHINTAI」2018年3月24日発売号の特集は「家賃・食費・光熱費 まるっと節約ガイド」。こちらから購入できます(毎月24日発売)
https://www.chintai.net/magazine/