日本一遅いジェットコースターで有名な遊園地のある街・荒川区西尾久に安らぎを求めて散策してみた
東京23区唯一のスタバ空白地帯として知られる荒川区。〝オシャレな東京ライフを夢見る人には無縁な街ランキング〟なんてものがあったなら、間違いなく上位に入るだろう。
しかし、馬鹿にするのはそこまでだ。荒川区には日本一のものがある。〝日本一遅いジェットコースター〟があるのだ!

西尾久ってどんな街?
東京都荒川区の西端に位置する「西尾久」。昔ながらの情緒を残す住宅と手工業系中小企業が集まる、いわゆる東京の下町だ。
エリア内には都電荒川線の停留場が4駅あり、都バスは本郷三丁目駅、御茶ノ水駅、大手町などを経由する[東43]が運行している。また、わずかにエリア外ながら徒歩圏にJR高崎線・東北本線尾久駅もある。その尾久駅は2015年の上野東京ライン開業で東京駅まで直通(最短約12分)でアクセスできるようになった。
日用品はスーパーバリュー、どらっぐぱぱす、東武ストア、オリンピックなどでそろえられ、東京女子医科大学東医療センターをはじめとした高度な医療機関も備わっている。
通勤にも生活にも便利、そして何より落ち着いた雰囲気の「西尾久」はファミリー層を中心に人気の街だ。




癒やし系遊園地「あらかわ遊園」で〝日本一遅いジェットコースター〟を体感
その西尾久には都内唯一の区営遊園地「あらかわ遊園」がある。昭和25年(1950年)開園、つまり東京オリンピック開催の2020年には開園70周年を迎える、お達者ご長寿な遊園地だ。
その「あらかわ遊園」には、区をあげて〝日本一遅い〟と公称しているジェットコースターがある。何もかも高速化している現代において〝日本一遅い〟ことをアピールしているなんて、もはや癒やしの予感しかない。
スピード社会に疲弊気味の編集部は安らぎを求めて、さっそくチンチン電車に乗り込んだ。











約300mのプロムナードは公園やアートなどの見どころ満載で、飽きることなく遊園地入り口にたどり着いた。〝わくわくメルヘンランド〟のキャッチフレーズにふさわしい、とんがり屋根が見守るかわいいゲートをくぐって入園だ!
入園料は高校生以上200円、65歳以上100円、中学生までは無料(土日祝・春・夏・冬休みは100円)。子どもの日(5/5)や都民の日(10/1)などは大人も入園無料になる。






さて、お目当ての〝日本一遅いジェットコースター〟はどこにあるのだろう。入り口でもらったリーフレットを確認すると、現在地(メリーゴランド前)は〝のりもの広場〟であることがわかった。そしてメリーゴーランドの左上にクネクネしたレールのイラストが描かれている。このクネクネが〝日本一遅いジェットコースター〟である可能性が高い。
了解!とリーフレットから顔を上げ、メリーゴーランドから歩くこと30秒。〝日本一遅いジェットコースター〟こと「ファミリーコースター」に到着だ。



平日の午前10時にジェットコースターで興じようとする者は我々のみ。定員24名のところを貸切状態でライドオン! 先頭と後方の二手に分かれて乗り込んだ。写真に収めようとスマホを構えたところで「スマートフォンやカメラのご使用はご遠慮くださ~い」とスタッフさんの声。そうだよね、最高時速15㎞(ママチャリ級の速度)とはいえジェットコースターなんだもの。危ない、ダメ、絶対。素直にスマホをしまったら、出発進行!
「出発しま~す」のアナウンスとともにガタガタガタ……と座席が振動し始め、ゆっくりと動き出す。想像どおりの癒やし系コースターだな……と思った瞬間にレールが急降下、すぐさま急上昇。上下に波打つような動きにお尻がムズムズしてくる。
そしてほぼ直角の第1コーナーを加速しながら曲がり、レールの高度はどんどん上がっていく。地上4mまで上りきるとスピードはガタンゴトンとゆっくり減速し始め、園内を見渡す余裕も生まれる。
時間にして15秒ほどのほんわか運行が続いた後、再びお尻ムズムズのウェーブが襲来。そして、急激に高度を下げ、最高時速をマークしながらスタート地点に戻ってきた。これをもう1周繰り返す。所要時間は約3分だ。












噂の〝日本一遅いジェットコースター〟に乗車した個人的感想は「楽しい! もう1回!」。身長80㎝以上、3歳から乗車できるとのことだが、それなりにスリルを味わえるポイントも用意されていて、親子で楽しむには最適なコースターだと思った。
高さ32mの観覧車から西尾久エリアを一望
続いて、我々は観覧車にも乗り込んだ。〝最高32メートルの上空から西尾久の街並みをチェックする〟というミッションを果たすため……とかなんとか理屈をこねつつ、久しぶりの遊園地にワクワクが止まらない!







人懐っこい動物たちのモフモフに癒やされまくり
ちなみに「あらかわ遊園」には入園料だけで楽しめるエリアがいくつもある。
動物好きにオススメなのが「ふれあい広場」と「どうぶつ広場」。ヒツジやヤギのモフモフした毛並みに触れたり、カピバラやサルに餌(のりもの券1枚または100円)をあげたりできるのだ。どの動物も驚くほど人懐っこく、グイグイ近寄ってくるのが印象的だった。







「あらかわ遊園」だけじゃない! 親子で楽しめそうな西尾久のスポット
ストレスフリーな癒やし系遊園地でハートウォーミングなひと時を過ごして、我々は思った。もしかしてだけど、西尾久は〝親子で楽しめるスポット〟の宝庫なんじゃないの? そんな先入観を抱きつつ西尾久エリアをブラブラしていたら、ちょっと気になる店をいくつか見つけたのでご紹介しよう。
子どものお小遣いで買える〝たこせん〟が大人気の「ふく扇」
あらかわ遊園のプロムナードから横道に入ったところにある、昭和57年創業のたこ焼き屋さん「ふく扇」。ふんわり柔らかい食感のたこ焼き(14個入り・500円)は、ダシも調味料もソースも大阪から取り寄せて作っているという。名物お父さんが繰り出すマシンガントークも遊園地のアトラクション並みに楽しい。
住所:荒川区西尾久6-29-7




ママ目線の工夫あふれる「プラレールが走るカフェ 小鉄」
1児の母である加藤栄美子さんが〝子連れでも気兼ねなく食事に出かけられる場所を〟と2016年にオープンした「プラレールが走るカフェ 小鉄」。調理師として保育園で給食を作っていた経験を生かし、安心安全で栄養面も考えたメニューを提供している。店内を走るプラレールは、鉄道好きの息子さんとともに家族で集めた私物とのこと。
住所:荒川区西尾久7-19-11
HP:https://ameblo.jp/kotetsu-cafe/





荒川区認定の子育て応援店「洋菓子セキヤ」
西尾久で50年愛され続けるケーキ屋さん「洋菓子セキヤ」。カルピスバター(カルピスを製造する過程で分離した乳脂肪由来のバター)を使ったロールケーキやマドレーヌなど、他では味わえないオリジナルの洋菓子にこだわっている。
荒川区認定の子育て応援店として、ベビーカーのまま入店できるほか、あらかわ家族の日(毎月第3土・第3日)に来店した子ども(※)にはお菓子をプレゼントしてくれる。
住所:荒川区西尾久7-10-3
HP:http://www.p-sekiya.com/
※荒川区民であることを証明できるものを要持参





もしも西尾久に住んだなら……
今回は〝日本一遅いジェットコースター〟をきっかけに荒川区西尾久を訪れてみたが、この街には子育て世帯にやさしいスポットが多いと感じた。
「洋菓子セキヤ」のような子育て応援店は西尾久エリアに7ヵ所あり、なかには授乳やオムツ交換スペースを提供する「あらかわベビーステーション」に認定されている店もある。もちろん「あらかわ遊園」にもベビーカー貸出、授乳室、オムツ交換台などが完備されていた。
荒川区は共働き子育てしやすい街ランキング(日経新聞社調査)で、2015年は全国1位、2016年は全国8位、2017年は全国11位と常に上位にランクインしている。交通の便も良く、物価も安く、認可保育園に入れなかった世帯には手厚い支援を行なっていることなどが評価されているようだ。
下町ならではのアットホームな環境で子育てしたい。そんな暮らしにあこがれるなら、ぜひ「西尾久」で部屋を探してみよう。
文=野中かおり
写真=編集部
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