賃貸物件を借りるときに必要な「連帯保証人」と「保証会社」の基礎知識

公開日:2016年2月8日
賃貸借契約書の連帯保証人の欄

家を借りる時に不動産会社から必要と言われる「連帯保証人」もしくは「保証会社」。

これらは何故必要なのか、またそれぞれの違いや、保証会社が行う審査内容などについて解説する。

賃貸住宅契約時の連帯保証人とは

賃貸借契約書とハンコ

連帯保証人とは、借主が設備を壊してしまったり、家賃の支払いを行わなかった場合など、なんらかの問題が生じた時に、借主に代わってその家賃や修理代を支払う人のことを指す。

そのため、基本的には連帯保証人と借主は同等の責任が課せられることになる。

賃貸住宅契約時の連帯保証人とは

連帯保証人制度は、単なる商習慣ではなく民法で定められている法的な効力を持つ制度である。

一般的には、「借主が貸主に対して負う債務について保証する」ことを指す。

過去、連帯保証人が実際に保証する金額に関しては、契約書に明記をする必要がなかったが、今現在は民法の改正に伴い、限度額を記載する必要がある。

▽連帯保証人の制度についてもっと知りたい人はこちらをチェック!
賃貸物件の連帯保証人の条件 ~みんなは誰にお願いしているの?~

保証人と連帯保証人の違いとは?

賃貸物件を契約する際、借主に求められる保証について、「保証人」と「連帯保証人」という2つの種類がある。基本的にはどちらかの保証があればOKだが、物件によっては両方の保証を求められることもある。

保証人と連帯保証人は、どちらも「借主(契約者)が家賃を滞納したりした場合に支払いを請求される」という立場だが、保証の内容に少々異なる点があるのだ。

保証人は「まずは契約者へ請求してほしい」と言うことができる権利を持っている。反面、連帯保証人は契約者と同等の責任が課せられているため、上記のように主張する権利がないのである。

借主にとっては、金銭的にカバーしてくれる連帯保証人がいれば心強い。

連帯保証人と保証人は、言葉の響きは似ているものの、その保証内容や範囲はかなり異なる。余計なトラブルを防ぐためにも、賃貸契約の際には両者を混同しないようにしたい。

賃貸住宅契約時に必要になる保証会社とは

保証会社のイメージ

保証会社とは、連帯保証人の代わりに連帯保証人と同様の責務を負うことをビジネスにしている企業のことを指す。

何らかの事情で連帯保証人を立てられない人物が利用をするケースもあるが、最近では連帯保証会社の利用を契約の際に義務として定めている不動産会社も多く存在する。

保証会社とは

保証会社の審査が通れば、借主は保証会社に保証料を支払うことで保証会社に連帯保証人の役割を担ってもらえる。

保証会社登場の歴史

本来連帯保証人となるべき親がすでに存命していない、親が高齢で保証が困難など、さまざまな理由で連帯保証人を立てられない借主が存在する。連帯保証人の代わりを務めてくれる存在として、「家賃保証会社」が最近は多く見かけるようになった。

国土交通省が発表している「家賃債務保証の現状」によると、平成18年から平成22年にかけてさまざまな会社が設立したと言われている。

平成29年から「家賃債務保証業者の登録制度」が開始

平成29年より、家賃債務保証業者を国に登録する制度スタートした。これは5年ごとの更新制となっている。

なお、あくまで任意の登録制度で、登録がなくとも家賃債務保証業を営むことは可能だ。国に登録があることは一定の条件を満たしている証明であるので、信頼できる会社を選ぶ際の判断材料と言える。

保証会社を利用するメリットとは

保証会社を利用する場合、借主(契約者)におけるメリットにはどんなものがあるのだろうか。

保証会社を利用するメリット①審査が通りやすくなる

賃貸契約を結ぶ際には入居審査が行われる。「この人に物件を貸しても大丈夫か」「滞りなく家賃を支払ってくれるか」を判断するために実施されるもの。審査の際には本人の職歴や勤務年数だけでなく、万が一家賃の支払いが難しくなった際に代わりに支払ってくれる連帯保証人の収入や年齢なども大きく影響する。

特に初めての一人暮らしであれば親を連帯保証人として立てる場合が多いが、親の収入が低かったり、定年退職後であったりする場合、入居審査に通らなくなってしまうケースもある。そんなときに助かるのが保証会社の存在だ。親戚などお金絡みのお願いはしにくいものだが、保証会社であれば手数料を支払えば利用でき、入居審査も通りやすくなるのだ。

保証会社を利用するメリット②家賃が払えない場合に立て替えてもらえる

借主が家賃を支払えない状況になったときには、保証会社が代わりに貸主へ家賃を支払ってくれる。もちろんこれで終わりではなく、後日保証会社から借主へ立て替えた分が請求される形だ。

保証会社に立て替えてもらった家賃分の返済については、保証会社から借主へ電話もしくは文書にて支払いの請求がくることになる。返済の期日は各保証会社の規定によりそれぞれ異なるが、家賃の立て替えから約1ヶ月が目安だと考えよう。また、保証会社へ返済の際には、延滞分に手数料がプラスされることになることも覚えておきたい。

なお貸主側の視点でいえば、「ビジネス」として家賃の立て替え等を行ってくれる保証会社は非常に心強い存在。連帯保証人に連絡をとって家賃の支払いを請求するよりも手間が少なく済み、確実に家賃収入を得られるためだ。

貸主側はより安心できることから、賃貸借契約の際に「保証会社の利用必須」という条件が付けられている物件も多い。

保証会社を利用するメリット③支払い方法を選ぶことができる

保証会社を利用する際に、借主が恩恵を受ける点は支払い方法を選択することができるだろう。

連帯保証人で物件を契約する場合、支払い方法の多くは貸主や不動産会社への口座へ振込だ。しかし、保証会社を利用した場合は、保証会社が貸主への支払いを立て替えをしてくれるため、借主は基本的に保証会社への支払いを行うことになる。

家賃の支払い方法は、直接振込を行うだけでなく、引き落としやクレジットカードの利用を選択して支払いすることが可能だ。

利用する保証会社によって、選べる支払い方法が違うため事前にどのような支払い方法があるのか確認しよう。

賃貸住宅契約時に保証会社を利用すると発生する料金とは

お金

「賃貸保証会社の利用必須」という契約条件の賃貸物件は増加しているが、保証会社を利用するのに料金はどれくらい発生するのか見てみよう。

契約時に発生する保証料

一般的に、契約時の保証料は、初回時月額賃料の50%と設定している事業者が多いといわれている。

1年(毎月)ごとに発生する更新料

上記調査によれば以後一年毎に1万円としている事業者が多い。また、上記調査では割合は多くはないが毎月一定額発生する場合もある。

保証会社を途中解約した場合、返金はされるのか

保証会社を途中解約しても、支払った保証料は原則返金されない。

費用や料金に関しては保証会社によって異なる

保証対象は、家賃滞納・原状回復費用・訴訟費用・残置物撤去費用等が多く、その詳細な内容は事業者により異なるため、費用・料金も保証会社により異なる。

保証会社が行う審査内容

審査のイメージ写真

実際に保証会社を利用する場合、審査はどのように行われるのか見てみよう。

何を審査されるのか

一般的には以下の書類の提出を求められ、その内容を審査される。

  • 申込書
  • 運転免許証(裏表)
  • 健康保険証(裏表)
  • 住民基本台帳カード(裏表)

※住民基本台帳カードの発行は、平成27年12月で終わっており、その有効期限は発行から10年とされているので注意が必要。

さらに、マイナンバーカードを発行した場合は、その時点で住民基本台帳カードの効果は失われる。

また、下記が追加で必要になるケースもある。

  • 収入証明書類(給与明細書・源泉徴収など)
  • 内定通知書(社判のあるもの)

審査にかかる日数(期間)

一般的には申込内容に虚偽があったり、無職で収入がない、家賃やクレジットカードに滞納履歴がある、収入が不安定、家賃に対して年収不足などが挙げられる。

ただし、保証会社は民間企業であるため、審査基準は個々に差があり統一されていない。

賃貸住宅契約に保証会社が必須と言われた場合、断れるのか?

賃貸住宅契約に保証会社が必須と言われた場合、契約条件なので基本的に断れない。

前述したように貸主にとって大きな安心材料となるため、必須として契約に盛り込まれているので、断れる性質のものではない。

不動産のプロに連帯保証人について聞いてみた

賃貸契約を結ぶときに必要な連帯保証人。大学生や新社会人の一人暮らしならば、親が連帯保証人となるケースが多いだろう。

連帯保証人不要の物件もあるが、契約費用が高くなることも…。

ただ、親が働いているうちはいいが、定年退職をしたら連帯保証人を頼むことはできるのだろうか?

「数年後に定年退職をされる場合や年金所得の親御さんでも、問題ありません。むしろ実家や血縁関係は連絡が取りやすいため、連帯保証人には親族関係が望ましいです」

こう話すのは、エイブル高田馬場店の店長・赤池英樹さん。しかしあまりにも高齢だったり、認知症などの病気を持っていたりすると、場合によっては保証能力がないとして却下されることもあるのだとか。

「もし親族関係で連帯保証人がつけられない場合は、賃貸保証会社との契約になります」(赤池さん)

賃貸保証会社とは、連帯保証人に代わって借主に家賃の滞納などがあった際に、貸主へ立替払いをしてくれるサービスのこと。近年は核家族化が進んだことで親族に頼みにくい、少子化で兄弟がいない、外国人で一人身といった理由から連帯保証人を立てられず、保証会社を利用する人が増えているという。

保証会社を利用するには、もちろん手数料がかかる。一般的に、初回保証料と更新料が必要で、料金は会社によってまちまちだ。赤池さんによれば、エイブルの初回保証料の相場は、賃料と共益費を足した額の50%だそうだ。

「とはいえ、賃貸契約の条件は各物件のオーナーが決めています。そのため『連帯保証人だけでいい』場合もあれば、『連帯保証人+保証会社』や『保証会社だけ』など、条件はさまざま。保証会社だけの物件でも、場合によっては保証会社を利用するための連帯保証人が必要となるケースもあります」(赤池さん)

連帯保証人の審査基準などの条件は物件によって異なる。気に入った部屋があれば、まずは担当者に相談してみよう。


文=名久井梨香+ノオト
2021年8月加筆=CHINTAI情報局編集部

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