街エンジョイ勢に聞いた「引越し先の街を”わが街”にする15のヒント」

進学や就職のために引越しを行い、新しい街で生活を始める人が多い季節。新たな出会いや経験への期待に胸を膨らませる人も多いだろう。
しかし、引越しから日が浅いと
- 街のことをよく知らない
- どこに行けばいいかわからない
- お気に入りのお店や場所が見つからない
という方も多いのでは?
この記事を企画した編集部員Aは8年前、実家から高円寺に引越してきた。最初は新しい環境に馴染めずにいたが、おいしい飲食店やユニークなお店が多く、散歩のたびに新たな発見があることから、今では「わが街」と呼び、永住したいと思うほど毎日楽しく暮らしている。
家賃の高騰が続くいま、せっかく高いお金を払って住むなら、その街を楽しめたほうが人生がより豊かになる—— そんな想いから、この企画が生まれた。
今回は、街歩きが得意なライター・よざひかるさん(以下、よざさん)と、街の楽しみ方を熟知した「街エンジョイ勢」に話を聞き、「引越し先の街を”わが街”にする15のヒント」を集めた。
- 引越し先の街にまだ馴染めていない
- 街を楽しむってどういうこと?
- 引越し先の街で友人がほしい
という方は、ぜひ参考にしてほしい。
このページの目次
ということで、新しい街で暮らし始めた読者の方に向けて、街を楽しむヒントを伝える記事をつくりたいんです。
それなら、引越し好きの方に話を聞いてみるのはどうでしょう?
よざさん:30代に入り「家買った?買う?」という話題が周囲で増えてきて……!
でも世の中には、そんなライフイベントには目もくれず、物件サイトを見るのが趣味という「趣味:引越し」という方々って結構いるなと思いました。
そういった方に話を聞くと、引越しの経験値が高いだけでなく、何度も引越しているぶん“新しい街の楽しみ方”も熟知しているようなんです。
編集部員A:実用的な知見がたくさん集まりそうです。よろしくお願いします!
引越し経験が豊富で、街の楽しみ方を熟知した20〜40代の男女8名に「新しい街をエンジョイし、”わが街”にする方法」を聞いていく。
ヒント1~3.街を楽しむにはまず散歩
街を楽しむ方法として、取材した全員が口を揃えて挙げたのが「散歩」だった。とはいえ、ただ闇雲に歩けばいいというものでもないようで……。
朝、昼、晩と時間帯を分けて散歩してみる

時間帯を分ける発想はなかったですね。
朝は喫茶店に人がたくさんいたり、夜はバーが盛り上がっていたりなど時間帯によって街の魅力は変わります。
Yさん:朝はジョギング、昼はランチ回遊、夜は好きな飲み物片手に徘徊……といろんなパターンで街を愛でてみてください!
よざさん:1人目からガチすぎる。
他の方からも「最寄り駅+1駅くらいが”わが街”だと思って歩きまくれ」「少し遠くのスーパーを目指して歩くのもいいよ!」との意見が。
編集部員A:歩いている途中で新しいお店を見つけたり、素敵なお店に出会うとテンションがあがりますよね。
散歩は、お気に入りのお店や場所ができるきっかけにもなると思います。
ヒント4~8.あらゆるメディアから街の情報を収集!
街をエンジョイするには情報収集が欠かせない。街エンジョイ勢は、SNSやGoogleマップはもちろん、「紙媒体」や「地域の情報サイト」、「掲示板」まで駆使しているという。
SNSを駆使する

たとえば、昔住んでいた武蔵小山だと「むさこやま」というアカウントさんが地域の最新情報をつぶやいてくれていたので、フォローしていました。
他にも、「インスタで『#(街や最寄駅の名前)ランチ、グルメ、デート』などをタグごとにフォローして、おすすめに出てくるアルゴリズムを育てる」「Tiktokも意外と使える!」など、みんなSNSをフル活用している様子。
私が住んでいる街にも、お店の紹介をするインフルエンサー的な方が何人かいるのでフォローしてます。好きな飲食店ができると、街との距離がグッと縮まりますよね。
紙媒体は情報が厚い

Oさん:街の本屋さんに行くと、地元を取材した『散歩の達人』や地域の情報を集めた本や雑誌を見つけられるかも。
よざさん:『散歩の達人』!東京や都市圏に住んでいる人ならよさそう。
雑誌『散歩の達人』のWebサイトにも地域ごとの情報がたくさんある
【参考サイト】街を冒険する人へ。|さんたつ by 散歩の達人
Oさん:駅や役所に置いてある区報・市報やフリーペーパーもいいですよ。
区や商工会などが連携してお店や銭湯、お散歩スポットをまとめた観光パンフレットをつくっている地域もあり、住人でも参考になる情報がたくさんあります。
中央線沿線の魅力を紹介する観光パンフレット
【参考サイト】中央線あるあるPROJECT 観光パンフレット|なみじゃない、杉並! -中央線あるあるPROJECT
地域にまつわる”すべて”を読んでいてすごい……。
編集部員A:お店の方へのインタビューや施設ができるまでの経緯などが載っていると、読み応えがありますよね。
SNSと比べて紙媒体だと、より深く街を好きになれる情報が集められそうです。
求人サイトで、オープン前のお店の情報をゲット

求人サイトって、いちばん新店の情報が早いんですよ。オープン前からオープニングスタッフを募集してますから。
バイトする気ないのに?ストイックすぎる……。
他にも「地域ニュースサイト号外NET」や「品川経済新聞」のような地域の情報を集めたWebメディアを探して、定期的にウォッチするのも良いそう。
編集部員A:新しいお店の情報を集めるのに、求人サイトを見るのは盲点でした!開店前だと、看板に書かれたお店の名前で検索しても情報が出てこないことが多いですもんね。
また、猛者になると……

町内会の情報とかが載ってる、あの掲示板ですか?
そうそう!「町内会でバスツアーに行きませんか?」とかあって最高です!
よざさん:細やかな情報収集……。
「街の掲示板がどこにあるかわからない」って人も多いと思うのですが、街エンジョイ勢はすごい! 地域の情報を足でも稼いでるんですね!
ヒント9~10.イベントやスポーツで街に入り込む
お店だけにとどまらず、みなさん街のイベントにも積極的に関わっているようで……。
祭りで地域の雰囲気を掴む

よざさん:どうやって祭りの情報を手に入れるんですか?
地域の掲示板に貼ってありますよ。
ここで掲示板が効いてくるんだ!
地域のスポーツクラブやチームを推す

プロサッカークラブのFC東京が大好きなんですが、地域活性化のために商店街とのコラボイベントをやっていたり、ファン同士地域で交流したりしてます。街の情報もゲットしまくりです。
わ〜〜! 好きを追いつつ街も楽しくなるなんて最高。
Aさん:ファンはSNSで「○○(お店の名前)で祝勝会しました!」みたいなことをつぶやきがちなので、ファンが集まるお店に行ってみたり……とにかく楽しいです。
イベントに参加すると、地域の方と交流が生まれたり、友達ができたりしていいですよね。
編集部員A:ご近所付き合いとまではいかなくても、街に知り合いがいると安心できます。
ヒント11~12.地元の人とちょっとだけ仲良くなろう!
「地元の人と交流」と聞くと敷居が高く感じる人もいそうだが……どうやって仲良くなればいいのだろうか?
地域の情報は近所の美容室から

たしかに! 美容師さんは地元密着ですね。
人気のラーメン屋さんの混んでない時間とか、すぐ教えてくれました。
銭湯は地域のコミュニティ

よざさん:待つんだ。
にこやかにしていれば、大体、常連のおばあちゃんたちが声をかけてくれるので、そこから「引越したて」ということを伝えて、おすすめの店とかを聞きます。
手口が鮮やかすぎる。
Oさん:その後に銭湯のイベントを手伝ったら、地元の知り合いが増えたりして……銭湯はおすすめですよ!
銭湯とか、住人同士のちょっとした交流が生まれる「街の居場所」って貴重ですよね。
ここまで、下記の方法で街の情報を集め、エンジョイする方法を学んできた。
- 散歩
- あらゆるメディアを駆使した情報収集
- 地域のイベント参加
- 地元のつながりをつくる
「自分にもできそう!」という方法ばかりで目から鱗でしたね。
よざさん:もう一人、街エンジョイ勢に心当たりがあるので話を聞いてみましょう。
ヒント13~14.超街エンジョイ勢の上級テクニック

ライターのちぷたそさんは、なんと地域のお店、319店舗に行ったという。
よざさん:すみません、ちょっと数字がすごすぎたので詳しく聞かせてください。319店舗ってどういうことですか……? あとどうやって把握してるの……?
Googleマップで行ったお店をリスト管理
Googleマップに「行った店リスト」を作って新しいお店に行くたびに更新しています。ほら、これ。

多!!!!!!
全部のお店、ご飯の写真もリストで保管しています。

よざさん:「怖っ」て声が出てしまいました。でもそんなにたくさんのお店に行くと、ハズレのお店もあるんじゃないですか?
合わないお店とかはたまにあるんですけど、たとえばレビューを見てちょっと怖いかもって思ったら、ランチで行けばダメージが少ないのでおすすめです。
ちぷたそさん:ハズレでも、リストを埋めたいって気持ちがあるから「まぁリスト埋まったしいいか……」ってなります。
集める楽しみもあるってことか。
よざさん:ただそこまで網羅しちゃうと、仕入れる情報が尽きてきませんか?「もう知ってるよ」みたいな。
区議のツイートから穴場のお店の情報をゲット
最近のおすすめが「区議のツイート(Xのポスト)を見る」です。
区議!?
市区町村の議員さんって地域密着で、ちゃんと街でご飯を食べるので、穴場のお店の情報をつぶやいていることがあるんです。
街エンジョイ勢の鑑すぎる。
他の街を訪れて、住んでいる街と比較する
あとは最近、他を知らない井の中の蛙になりたくないから、他の街にも行って「街の比較」をするフェーズに入っています。
ちょっと待って、どういうことですか?
他の街と比較して、俯瞰で今の街を見ることで「より今の街を好きになれる」ことってあると思うんです。
ちぷたそさん:どの街にもスーパーとか惣菜屋とか既存のチェーン店、ローカルチェーンなどがあるので、きちんとチェックして「住みやすそう〜素敵〜」と理解しつつ、「でも、他の街と比べてもやっぱり今の街が好き!」って思い直すっていうか。
あまりのストイックさに声が出てしまいました。
いや、自分なんてまだまだです。界隈には600店舗行ってる人もいます。
よざさん:600!?!?!?なんていう世界……。
編集部員A:最後にすごい上級者テクニックが出てきましたね……。お店のリスト化はやや難易度が高いし、他の街との比較は引越したての方にはまだ早いかもしれませんが、議員さんとか地域密着で活動されている方のSNS投稿は参考になりそうです。
最後に、ここまでに集めた「引越し先の街を”わが街”にする15のヒント」をまとめた。
引越し先の街を”わが街”にする15のヒント
街を楽しむには、まず散歩
1.時間帯を分けて散歩
2.最寄り駅 + 1駅ぐらいが”わが街”と思って歩きまくる
3.少し遠くのスーパーを目指して歩く
あらゆるメディアから「街の情報」を収集
4.街の情報を発信するSNSアカウントをフォロー
5.SNSで「#○○(街や最寄り駅の名前)ランチ」などタグごとにフォローして、おすすめに出てくるアルゴリズムを育てる
6.地域の情報を発信するWebサイトを定期的にウォッチ
7.住んでいる街が特集された雑誌を読む
8.地域の掲示板を見る
「イベント」や「スポーツ」で街に入り込む
9.近所の学校や町内会の祭りに参加
10.地域のスポーツクラブやチームを推す
「地元の人」とちょっとだけ仲良くなる
11.近くの美容室に通い、美容師さんと仲良くなる
12.銭湯の常連さんに声をかけてもらうのを待つ
超街エンジョイ勢の「上級者テクニック」
13.Googleマップに「行った店リスト」を作って、新しい店に行くたび更新
14.区議のツイートをチェック
15.他の街を訪れて、住んでいる街と比較
こうして振り返ると、街をエンジョイするための方法を初級編から上級編まで集められたと思います。
初級:
情報を集めて、気になるお店に行ってみる
中級:
イベントに参加したり、地域の方と交流してみたりする
上級:
他の街を訪れて比較し、住んでいる街のよさを実感する
よざさん:引越し好きなら新しい街を楽しむ方法にも詳しいはず!と始めたインタビューでしたが、最後にお話を聞いた超街エンジョイ勢のちぷたそさん、引越し経験は少ないそうです。
「同じ場所に長く住んでいても、こんなに街を楽しめるんだ!?」と、日々適当に街を歩いていたことを反省しました。
長く住んでも飽きずに楽しめる街っていいですね。そういう街に住むと、人生をより楽しめると思います。
街を楽しむことは、必ずしも地域に深く入り込むことではない。散歩やSNSで気になるお店を見つけて入ってみる、地域のイベントを見に行ってみる、そんな小さな行動の積み重ねが、街を好きになることにつながる。
また、街を知ることは、その土地に「ただ住む」だけでなく、「自分らしく楽しく暮らす」ための第一歩になる。
ぜひみなさんも、できそうなものから試して、引越し先の街を”わが街”と呼べるまでエンジョイしてほしい。
文、イラスト=よざひかる