【2021年冬】この冬観たいNetflix(ネットフリックス)おすすめ映画20選!
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重いが重要な知見を与えてくれるドラマ映画2選
続いては、重い題材ではあるが、だからこそ現実に活かせる重要な知見を与えてくれる、見応えのあるドラマ映画2作品を紹介。どちらも実はホラー的な、震え上がるほどの恐ろしさもある。
8:『ファーザー』(2020)
アカデミー賞で6部門にノミネートされ、主演男優賞をアンソニー・ホプキンスが史上最高齢の83歳で受賞し、脚色賞も受賞した、絶賛に次ぐ絶賛で迎えられていた作品だ。パッと見のイメージでは「認知症の父と介護をする娘の愛を描いた感動作」と思われるかもしれないが(そうでもあるが)、本編は意外にも「2度観たくなるサスペンスミステリー」や「自己の認識が不確かになっていく戦慄のホラー」という印象もあった。
本作は「認知症を疑似体験」できるような内容でもある。初めの「家に見知らぬ(観客にとっても知らない)男がいる」ことから早くも戦慄するだろう。そのことが、数分前の出来事どころか、知人ののことすら忘れてしまう認知症の症状を示している。さらに、劇中の会話および出来事、言い換えれば記憶の断片からは、やがて「真実」が見えてくるようになる。そこには「パズルのピースを集めて完成させる」ような謎解きの面白さもあるのだ。明確には描かれていない「余白」を考えると、さらなる感動があることだろう。
『ファーザー』(2020)の情報
監督:フローリアン・ゼレール
出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス ほか
1時間 36分
9:『ある少年の告白』(2018)
本作で描かれているのは、同性愛などの特定の性的指向を「治す」ことを目的とした矯正治療をめぐる「実話」だ。閉鎖的な環境にて複数人での問答(というよりも人格否定)を繰り返し、さらには「神」の教えをも借りて、根源的な愛情や生き方をも「間違ったもの」と信じ込ませようとした、おぞましい事実が描かれている。原作本の著者が劇中の矯正治療を受けたのは2004年の19歳の時であり、決して遥か昔の話というわけではないというのも衝撃的だ。
施設に疑問と憤りを感じる主人公が行動を起こす様はサスペンスフルで、母と父との関係が変わっていく様もドラマチックに描かれている。両親は「息子のため」に矯正治療を勧めていおり、矯正治療を行うカウンセラーも「彼らに正しい人生を歩ませるため」に仕事をしているなど、劇中の登場人物が往々にして「正しいことをしていると思い込んでいる」ことにも恐ろしい。観終わった後には、きっと観た人それぞれが世界の見方を、もっと言えば他人への接し方をも見つめ直すきっかけになるだろう。PG12指定相当の性的なシーンもあるのでご注意を。
『ある少年の告白』(2018)の情報
監督:ジョエル・エドガートン
出演:ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ ほか
1時間 55分
のめり込んで観られるミステリー日本映画2選
ここからは、エンターテインメント性に特化した、豪華キャスト陣の熱演も楽しめる、日本映画の底力を感じさせるミステリー2作品を紹介しよう。普段あまり日本映画を観たことがないという方にこそチェックしてほしい。
10:『罪の声』(2020)
昭和最大の未解決事件をモチーフにした、塩田武士による小説の映画化作品だ。物語は、テーラーを営む男性が、父の遺したカセットテープに録音された、幼い頃の自分の声を聞くことから始まる。その音声は、かつての誘拐事件に使われたものと同じだったのだ。真相を論理的に推理するミステリーとしての面白さもさることながら、己の信念や正義を通すドラマにも感動がある。小栗旬と星野源というスター俳優の豪華共演と、その「ブロマンス」な関係性もたまらない。
劇中で松重豊演じる上司が主人公の記者に「(事件について)エンタメとして消費する以上の意義を見つけてこい」と言うシーンがある。これは、本作がまさにエンタメを超えた、普遍的な「悪意に巻き込まれた人のための物語」になっていくことを示すセリフだろう。こじつけでもなんでもなく、長い年月を、世代を超えて、巨大な悪意に苦しめられてきた人たちが戦う物語には『鬼滅の刃』に似た精神性があった。ドラマ『アンナチュラル』の野木亜紀子による脚本は、2時間22分という長めの上映時間でも退屈することはないだろう。
『罪の声』(2020)の情報
監督:土井裕泰
脚本:野木亜紀子
出演:小栗旬、星野源、松重豊 ほか
2時間 21分
11:『騙し絵の牙』(2021)
廃刊の危機に立たされた雑誌編集長が、起死回生のための奇策に打って出る最中、さまざまな人間の思惑が交錯する姿を描く群像劇だ。予告編では騙し騙されのどんでん返しが売りのように見えるが、実際に展開するのは「利益」や「面白さ」などの目的で揺れる、価値観が異なる人間同士でぶつかり合うパワーゲーム。原作者である塩田武士が「あてがき」した主人公をそのまま演じた大泉洋をはじめ、佐藤浩市、宮沢氷魚、池田エライザ、國村隼、リリー・フランキーなど、豪華なキャスト陣が一度観たら忘れられないほどインパクトがある役を演じている。
監督は『桐島、部活やめるってよ』(2012)や『紙の月』(2014)などの吉田大八。その作品で一貫しているのは、「脆く儚い、何かの価値観にすがって生きている人」の物語であること。今回の『騙し絵の牙』でも、出版業界の中で何とか己の信念をただただ突き通そうとする人々の姿を慈しむように描きつつも、相手の裏をかいて出し抜くという痛快さも込みの面白さがあり、一筋縄な結論に落とし込まない驚愕のクライマックにはシビれるような感動があった。さらにはコメディとしても面白く、特に松岡茉優のとある「ツッコミ」には吹き出してしまう方もいることだろう。
『騙し絵の牙』(2021)の情報
監督:吉田大八
出演:大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚 ほか
1時間 52分
コメディだけどコメディだけじゃない日本映画3選
ここからはジャンルとしては「一応」はコメディである日本映画を3作品紹介しよう。いずれもただ笑えるだけはなく、それ以上のドラマや「仕掛け」こそが面白い、風変わりでありながらも痛快さもある作品だ。
12:『まともじゃないのは君も一緒』(2021)
「変人」な男女が織りなす、クスクスと笑えるラブコメディーだ。人とのコミュニケーションが苦手な予備校の講師の成田凌と、恋愛の知識はあっても経験がなく何もわかっていない女子高生の清原果耶という、実力派の俳優ふたりのボケとツッコミ、ある意味での「夫婦漫才」には、ずっと見ていられるほどの面白さがあった。うさんくさい講演をする男に小泉孝太郎というキャスティングも良い意味で意地悪かつハマってて、そこでもニヤニヤしてしまう。
さらには「普通」をめぐる寓話としても面白く、主人公2人は普通(の恋愛)をそれぞれ目指すのだが、結局はその普通が何かがよくわからずに堂々巡りをする。その小さい話が、その人の特徴や魅力を肯定する、大きな人生讃歌となっていくことが素晴らしい。「普通に生きられない悩み」を持つ人にとっては「私のための映画だ!」となるかもしれない。また「誰かのために本気で怒ること」は、ラブストーリーにおいて(現実でも)もっとも誠実で感動的な愛情表現なのだと思うこともできた。
『まともじゃないのは君も一緒』(2021)の情報
監督:前田弘二
出演:成田凌、清原果耶、泉里香 ほか
1時間 39分
13:『ドロステのはてで僕ら』(2020)
人気劇団の「ヨーロッパ企画」によるオリジナル長編映画だ。カフェオーナーの男が、モニターから「2分後の自分」が話しかけくる様を目の当たりにすることから始まる物語であり、その2分後の出来事と矛盾がないように奔走し、予想外の展開に翻弄されていく。驚愕すべきは「全編がほぼ(擬似)ワンカット」かつ「リアルタイム進行」の映画であることだ。70分という短めの上映時間の中にたくさんのアイデアが詰まっており、それぞれを尋常ではない努力で実現したキャストとスタッフに心からの拍手を送りたくなる。「子どもから大人まで楽しめる日本の実写映画」というのも貴重だろう。
そして、「未来を知る」ドタバタ劇からスタートしたこの物語には、未来のことを知り得ない、タイムトラベルなどできない現実の私たちに向けた、とてつもなく感動的なメッセージが用意されていた。サイエンスフィクションとしてのSFだけでなく、『ドラえもん』でおなじみの藤子・F・不二雄が提唱した「ありふれた日常の中に紛れ込む非日常的な事象」をテーマとしたSF(すこし・ふしぎ)にリスペクトを捧げていることも素晴らしい。なお、タイトルにある「ドロステ」とは、「同じイメージが再帰的に繰り返される視覚効果」を意味している。どのようにそのドロステの効果があらわれるのかは、劇中で丁寧な解説がされるので、ぜひ確かめてほしい。
『ドロステのはてで僕ら』(2020)の情報
監督:山口淳太
脚本:上田誠
出演:土佐和成、朝倉あき、藤谷理子 ほか
1時間 10分
14:『ミセス・ノイズィ』(2020)
大音量の音楽を流すなどして騒音を出し続け、「騒音おばさん」の名前で有名になった実際の事件をモチーフとした作品だ。とはいえ、事件を再現する実録ものではなく、劇中で展開するのはフィクションのオリジナルストーリーであり、序盤は「お隣さんとの仁義なきバトル」がコメディとして描かれている。特にとあるモノをお隣さんが持ち出した瞬間は爆笑ものだし、「バカバカしいことを真剣にやる(その姿を客観的に見る)」笑いの基本をやり切っているとも言える。
ところが、物語が進むに連れて次第に「笑えない」事態になっていく。日に日に増していく騒音と嫌がらせのせいでストレスはたまり続け、夫ともギクシャクするなど、主人公の心の平穏が奪われていく様はほぼほぼホラーだ。さらに「SNS炎上」や「メディアリンチ」など、現代ならではの問題をはらんだ社会派サスペンスへと展開していく。その後にはネタバレ厳禁の驚愕の展開が待ち受けており、さらにさらに思いがけない感動も待ち受けていた。なお、実際の事件を笑いものにする意図はなく、それどころか「その時の世間の反応」に誠実に向き合った作品でもあることも断言しておく。
『ミセス・ノイズィ』(2020)の情報
監督:天野千尋
出演:篠原ゆき子、大高洋子、長尾卓磨 ほか
1時間 46分
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