敷金償却とは?償却金の仕組みを理解して退去トラブルを回避しよう

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わかりにくい「敷金償却」とはどういうもの?契約前にしっかり理解しておこう

敷金償却1
敷金償却について契約前に確認しておこう!

敷金償却という言葉は主に西日本で使われており、賃貸借契約の特約事項に書かれていることが多い。敷金と似ているが、まったく違う性質を持っている。

敷金償却の意味を知らずに契約してしまうと、退去時に「敷金が返ってこない」と、トラブルになる可能性がある。そこで今回は、後々のトラブルを防ぐために、敷金償却の仕組みや退去時のトラブルを避ける方法などを解説していこう。

これから賃貸借契約をする人や、敷金償却の特約があるのを後から知ってしまったという人などは、ぜひ参考にしてほしい。

そもそも敷金償却とは

敷金とは賃貸物件の入居時に担保として預けるお金。物件や設備を故意に破損させたり汚してしまったりしたときの修繕費用や、家賃の支払いが滞ったときの費用に充てられ、残った分は退去時に返金される。一方、敷金償却とは入居時に支払った敷金のうち、指定された金額が退去時に返金されなくなる特約のことである。

このように、敷金と敷金償却は根本的に性質が異なる。敷金とは賃貸物件を借りるときに支払う一時金のこと、敷金償却は敷金に関する特約のことだ。

償却金とは

償却金とは、賃貸借契約の際に入居者から預かった敷金や保証金のうち、退去時に返金されないお金のことだ。「敷引き」と呼ばれることもある。

あらかじめ金額が設定されていることが多く、家賃の1ヶ月から3ヶ月程度が相場となっている。

敷金償却と礼金は別物!

退去時に返ってこないお金として、礼金というものがある。敷金と似ているが、その内容や性質は異なる。礼金とは、これから部屋を借りる際に、大家さんへのお礼のお金として支払うものであって、原状回復に使われるお金ではない。つまり、礼金は退去時にはまったく関係のないお金といえる。
一方、敷金償却は退去時の原状回復に関する特約のことを指す。両者には大きな違いがあるので、入居前にそれぞれの意味を把握しておいた方が良いといえるだろう。

敷金償却の特約は法律上問題ないの?

敷金償却2
難しい内容だからこそ、しっかり理解しておこう

敷金償却とは、敷金から決まった金額を差し引くという特約のこと。つまり、仮に家賃を滞納しておらず、退去時に修繕が全く必要ない状態だったとしても、敷金の一部が借主に返ってこないということが契約時点で定められているのである。

借主の立場からすれば、修繕費が発生しないのであれば敷金を全額返してほしいと思うものだが、平成23年の最高裁判決では、敷金償却の特約は「高額すぎない限り有効」という判決が下されている。具体的には、家賃2.5ヶ月~3.5ヶ月分程度までの償却金なら問題ないといわれている。

2020年の民法改正により、敷金をめぐるトラブルは減っていく?

以前は敷金の定義が曖昧で、退去時に敷金が戻らないことに加えて、さらに原状回復費用も不当に請求されるということが多発していた。これは大家さんと入居者の認識の違いによって起こったトラブルであり、裁判にまで発展することも少なくはなかった。

しかし、2020年4月の法改正により、敷金の定義が明確になった。改正民法第622条の2において「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義された。

この法改正により、敷金とは退去時に賃料滞納などの弁済に充てるもの、原状回復費用などを差し引いた額を借主に返さなければいけないものだということが明確となったのだ。

この法改正によって、敷金や原状回復費用をめぐるトラブルが減っていくことが期待される。

償却に関する特約はどこで確認するの?

賃貸借契約のときに、償却に関する説明を受けた記憶がないという人が多いのではないだろうか。特約などは、重要事項説明の際に聞き逃してしまうこともある。
退去時のトラブルを防ぐためにも、償却についての特約があるのか確認しておくことが大事だ。ここからは、その確認方法についてそれぞれ説明していく。

償却の確認方法①:物件のシートの特記事項

内見する際に物件シートを渡されるので、そのシートの特記事項に敷金償却の記載があるかどうかを確認しよう。特約については、小さな文字で書かれていることも多いので注意が必要だ。

償却の確認方法②:不動産屋さんに直接聞こう!

物件シートを見てもよくわからないという場合は、内見の際に不動産会社に聞いてみよう。賃貸借契約の際、初期費用の金額を確認することは誰もが行うものだろう。しかし、退去費用についても把握することが、後々のトラブルを防ぐことになる。

契約の前に敷金償却の金額確認を!

償却に関する特約を確認している女性
トラブルを避けるために、しっかり確認しよう!

退去時になって、戻ってくるはずの敷金が戻ってこないという事態にならないよう、契約の前に敷金償却についてよく確認しておくようにしよう。敷金償却について確認すべき項目は以下だ。

  • 敷金償却の有無
  • 償却金の月数
  • 借主負担になっている原状回復の内容

金額や借主負担の原状回復の内容があらかじめわかっていれば、金額の計算がしやすくトラブルも起きにくい。なお、敷金償却については契約後の変更はできない。その内容についても基本的に触れることができないため、契約の前に必ず確認しておくようにしよう。

敷金償却の際は退去時二重請求に注意しよう!

敷金償却の意味を理解していないと、二重請求されても気づかないということが起こり得るので注意をしよう。

敷金償却金は本来、物件の原状回復に充てられるお金だ。そのため、退去時に原状回復費用を別に請求された場合、入居者は原状回復費用を二度支払ってしまうことになる。これが、敷金の二重請求だ。

特に、敷金・原状回復費・補修費など複数の名目で請求されている場合には二重請求されている可能性が高い。まずはしっかりと内訳を確認し、その内容を確かめなければならない。

敷金償却金は退去時に返却されないため、礼金と同じような意味と説明されることもあるが、前述の通り、この2つはそれぞれ違う意味を持つものだ。敷金は償却金も含め、退却時の原状回復のために支払ったお金であることを押さえておこう。ただし、原状回復費が敷金の額を超えた場合には、追加請求を受けることになるので注意が必要だ。

また、敷金償却の相場は家賃の1ヶ月〜3ヶ月分程度だ。4ヶ月以上などの高額な償却費が設定されている場合は、契約時に不動産会社にしっかり確認する必要がある。

万が一契約してから気づいたという場合は、宅建協会や不動産協会、国民生活センターなどに相談してみよう。
ただし、家賃滞納分が敷金の金額を超えている場合は、敷金償却を超えた請求があるので注意が必要だ。

ここからは、原状回復費はどこまで入居者の負担になるかご紹介する。

原状回復費はどこまで入居者の負担になる?

敷金償却は、主に賃料延滞の弁済や原状回復費用に充てられる。賃料延滞については、入居者が滞納した額なのでわかりやすいが、問題は原状回復費用だ。

原状回復費用については国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従って決められている。

ガイドラインによると「原状回復とは、賃借人の住居、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失・善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されている。

つまり、入居者が原状回復のために負担する費用は、故意や過失で壁に穴を開けてしまうなどの部分で、生活による自然劣化などは大家さんの負担になるということだ。この部分を把握しておかないと、トラブルの原因になるので注意しよう。

原状回復費が多くかかる3つの事例

賃貸物件で飼われている犬
原状回復費が多くかかってしまうケースとは?

ここからは、原状回復費用が高額になる事例を3つ紹介する。

ペットを飼育していた場合

ペットを飼育している場合、壁紙の剥がれや建具・フローリングの損傷などが起きやすい。ペットによる壁紙や建具の傷みの修繕費用は、退去時に借主負担の原状回復費として請求されることになる。

また、ペット可物件では、賃貸借契約の際に、ペット飼育による償却金として特約がある場合がある。その際は、当然退去時に敷金から引かれることとなるが、ペットによる部屋の損耗以外に入居者本人が故意に損耗した部分は別で請求される可能性が高い。契約の際に、特約の範囲をしっかり確認すると良いだろう。

DIYでリフォームした場合

賃貸物件をDIYでリフォームした場合、基本的に退去時には原状回復してから引き渡すことになる。もちろん原状回復にかかる費用は借主負担だ。

仮に古い物件を新しくリフォームしたとしても、入居者は退去時に原状回復の義務がある。大家さんや管理会社に無断でDIYリフォームを行ったり、原状回復できないようなリフォームをしたりしないよう、十分に気をつけよう。

タバコなどで部屋全体に臭いや黄ばみがある場合

室内で喫煙していた場合、部屋に臭いが染みついて取れなかったり、壁紙が黄ばんでしまったりするといったトラブルが発生することがある。退去後、臭いを除去するには業者による清掃が必要になるし、壁紙の張り替えも行わなくてはならないだろう。このような費用も、原状回復費としてその部屋を借りていた人の負担となる。

いずれの場合も、原状回復に必要な費用が敷金および敷金償却金の額を超えた場合には、返ってくる敷金の額が少なくなる。自分自身の負担を少なくするためにも、部屋の状態をきれいに維持するのが鉄則だ。

敷金償却を理解して退去時のトラブルを回避しよう

今回は敷金償却の意味や、退去時のトラブルを避ける方法などを解説した。敷金償却の内容を知らずに契約してしまうと、退去時にトラブルが発生する可能性がある。

退去時のトラブルを防ぐために、敷金償却についてしっかり理解して、契約前に敷金償却の金額を把握しておこう!

CHINTAI編集部
CHINTAI編集部

1992年創業、お部屋探しや生活の情報を発信してきた株式会社CHINTAIが運営するWebメディア。引越しに関する情報はもちろん、家事や家計、季節の楽しみなど日々を豊かにする知識を調査・ご紹介。
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