コワーキングスペース付き賃貸物件が増加中! 新時代のトレンドとなり得る魅力とは?

コワーキングスペース付き賃貸物件が増加中! 新時代のトレンドとなり得る魅力とは?

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「コワーキングスペース付き賃貸物件」について調査

賃貸物件や暮らしに関するニュースを深掘り。賃貸ユーザーが知って得する情報をお届けする。

今回は「コワーキングスペース付き賃貸物件」をピックアップ。その魅力や、近年増加している背景など気になるポイントを調べた。

【ニュース】都市部でコワーキングスペース付きの賃貸物件が増えている

コワーキングスペース

コワーキングスペースを共用部に備える賃貸物件が増えている。コロナ禍によってテレワーク需要が増加。そんなニーズに応えるように、さまざまな不動産開発会社がコワーキングスペース付きのマンションを建設している。

例えば、2021年10月に竣工した「ブランズタワー豊洲」、2022年5月竣工予定の「ブリリアシティ西早稲田」、2022年6月竣工予定の「The Parkhabio SOHO 大手町」など、コワーキングスペースを備えた大型マンションの設立が相次ぐ。

さらにリノベーションでコワーキングスペースを設置する物件もある。築30年を超える「DeLCCS(デルックス)文京神楽坂」の共用部を、2021年9月に改修。日本初のテレワーク特化型賃貸マンションとしてオープンした。

上記はすべて東京の賃貸物件だが、コワーキングスペースを備える物件は大阪や名古屋などの都市部でも散見されている。近年シェアオフィスは都市部を中心に増加していることを踏まえると、コワーキングスペース付きの物件も都市部から徐々に増えていくはずだ

コワーキングスペースで付加価値の向上が狙い

コワーキングスペース2

マンションの共用部は入居者が共同で利用できるスペースで、エントランスやエレベーター、駐輪場などが該当する。建物のオーナーが所有し、マンションの場合は管理会社に手入れを依頼しているケースが多い。

共用部は、入居者への付加価値としてアピールされることもある。高級マンションではコンシェルジュやゲストルームなど豪華な設備を導入することで、プレミアム感を演出。物件の価値や入居率を高める狙いがある。

どのような設備を設けるかは当然、住民のニーズに合わせて設計される。コワーキングスペースを設置する物件が増えているのはコロナ禍によるテレワークの増加が要因と考えるのが妥当だ

【深掘り】コワーキングスペース付き物件は今後も増えていく?

DeLCCS文京神楽坂担当のミサワホーム石井孝宏さん
DeLCCS文京神楽坂担当のミサワホーム石井孝宏さん

コワーキングスペース付き物件は今後も増えていくのだろうか? ミサワホームの石井孝宏さんに聞くと「現段階では、どちらとも言えません」と語る。

共用部にコワーキングスペースを設ければ、テレワークで働く人に強くアピール可能。集客効果が高まり、長期的には物件価値の向上も期待できる。しかし、需要が高い新築・築浅のうちは、通常の物件より利益が少なくなると予想される。

コワーキングスペースでなく居室を設けた方が最大入居者数を増やした方が、家賃の総額は大きくなります。つまり建ってから数年は、コワーキングスペース付き物件は通常の物件より利益が上がりづらいんです。テレワークの今後が不透明な現状で、コワーキングスペース付き物件に注力するかは不動産会社によって判断が分かれると思います。

一方で、石井さんは「おそらく、コワーキングスペース付き物件は増えていくでしょう」と予想する。ミサワホームでは、プライベートな空間と職場、友人との交流の場を一体化する「住まいのマルチプレイス化」を掲げている。今後は「場所にとらわれない新しい暮らし方」が求められると考えているのだ。

新型コロナウイルス感染症が完全に終息しても、テレワークや働き方改革がなくなるわけではない。そうなると他の不動産会社もミサワホームと同様、多様な暮らし方に対応する物件を増やしてくはず。社会の流れを踏まえると、コワーキングスペース付き物件が増える可能性は少なくないだろう。

入居率の向上=コワーキングスペースが受け入れられる証

カフェとしても営業するDeLCCS文京神楽坂のコワーキングスペース
カフェとしても営業するDeLCCS文京神楽坂のコワーキングスペース

石井さんがコワーキングスペース付き物件の増加を前向きに推測するのは、DeLCCS文京神楽坂での成功があったからだ。

ミサワホームでは築古の賃貸物件を買い取ってリノベーションし、物件価値を向上させる事業を実施している。DeLCCS文京神楽坂がコワーキングスペースを設置したのも、この“賃貸物件再生事業”の一環だ。

DeLCCS文京神楽坂は部屋のほとんどがワンルームで、単身の社会人が多く住んでいた。中にはテレワークで働く人もいたが、オンライン会議などの声が室外に聞こえてしまうといった問題もあったという。

そこで、空きテナントになっていた1階部を改修し、入居者以外の人も利用できるカフェ&コワーキングスペースとして設置した。コンシェルジュサービスも併設して入居者が便利に使えるようにした結果、DeLCCS文京神楽坂の入居率はコワーキングスペースの設置で10%以上も高まったそうだ

コワーキングスペースは、入居者の皆様に満足いただけているだけでなく、地域の方々にも好評です。中にはDeLCCS文京神楽坂が気に入って、そのまま居室を内見していったお客様もいらっしゃいました。

コワーキングスペースを外部利用可能にすれば、部屋数が減った分の収益をカバーできる。その上で賃貸物件への集客効果も得られる。このようにコワーキングスペースを上手に活用する事例やノウハウが積み重なれば、コワーキングスペース付き物件が増える可能性は高まるかもしれない

【ポイント】コワーキングスペース付き物件でテレワークが快適になる

コワーキングスペース付き物件は、テレワークしやすい

今後のトレンドとなり得るコワーキングスペース付き物件は当然、テレワークしやすいのが利点だ。近所のコワーキングスペースを借りるよりも移動が手間でなく、費用も節約できる。

ただ、それはコワーキングスペース付き物件でなく、テレワーク用の設備を居室に設けた場合でも同様だ。しかし、ミサワホームの石井さんは「共用部にコワーキングスペースを設けた方が、入居者様にとってメリットが大きいでしょう」と説明する。

居室にテレワーク用の設備を設けると当然その分、ほかの生活スペースが狭くなります。そもそも狭い部屋にテレワーク用の設備を取り付けるのはスペース的に難しい。結果としてテレワーク用の設備がついた居室は広くなって、家賃が高くなります。対して共用部にコワーキングスペースを設ける場合は居室を圧迫せず、ワンルーム・1Kといった単身者用の物件にも設置できます

また、コワーキングスペース付き物件は生活する場所と仕事する場所を明確に分けられるのが魅力。テレワークで働く人にとっては下記のようなメリットが想定される。

メリット1:生活のオンオフをつけやすくなる

コワーキングスペースにいるときは仕事、居室に帰ったらプライベートと明確に分けることが可能。テレワークでもメリハリがある生活を送りやすい。特に、自宅で働き続けるのにストレスを感じる人は、コワーキングスペースの方がオススメだ。

メリット2:居室部分を自由に使える

居室にデスクやチェアを用意しなくていいので、居室を広く使える。専有面積が少ない部屋なら、特にありがたいだろう。また、仕事用の家具を置かなくていいので、インテリアのコーディネイトがしやすくなるのも大きなアドバンテージだ。

メリット3:時短や節約もつながる

同じ建物内ならコワーキングスペースに移動しても、さほど時間はかからない。一方で、家で仕事をしないので自宅を汚さずに済み、掃除の頻度を抑えられる。電気代も抑えられるので、時短&節約効果も期待できる

メリット 4:法人登記できる

物件によっては、法人登記可のコワーキングスペースもある。法人登記できる賃貸物件は非常に少なく、登記用に事務所やバーチャルオフィスと契約しなければならないケースが大半だ。共用部のコワーキングスペースで登記できるのは、若手起業家にとって好ましいだろう

メリット5:外部との打ち合わせがしやすい

コワーキングスペースなら、対面での打ち合わせにも対応できる。ミーティングルームが設置されている場合は複数名での会議も開催可能。打ち合わせのために場所をわざわざ変える必要もなくなる。自宅をオフィスにする起業家やフリーランスの場合は、自室に招き入れたりせずに済むのも助かるはずだ。

【まとめ】コワーキングスペース付き物件は自分の暮らしに合っていることが重要

コワーキングスペース付き物件

選択肢が増えつつある、コワーキングスペース付き物件。賃貸ユーザーにとってはうれしい流れだが、どのように自分に合った物件か見極めれば良いのだろうか? ミサワホームの石井さんは「コワーキングスペースの仕様や利用方法に注目してください」と説明。気になるチェックポイントは次の通りだ。

  • コワーキングスペースの利用に料金がかかるか
  • 居室からコワーキングスペースまで行き来しやすいか
  • 仕事に集中できる環境か
  • スペースは混雑していないか
  • 通信環境やコンセントの数など設備が充実しているか
  • スペース内で他のサービスを受けることができるか
  • 席の予約制度はどうなっているか
  • スペース内に会議室・ブースはあるか
  • コワーキングスペースで法人登記は可能か

これらの条件だけでなく、本当に仕事をする上で問題ないか自分の目で確かめることが大切だ

さらにコワーキングスペース付き物件を検討する際は、通常の物件と同様、居室部や他の共用部などの内見も忘れないように。多くの物件を総合的に見比べ、自分の住まい方・働き方に合っているか判断しよう。

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ミサワホーム

住宅の製造・販売などを行っている大手ハウスメーカー。戸建住宅の販売以外にも、賃貸住宅の経営をはじめ、土地を活用した建築プランニングや、医療・介護・保育施設の建築・運営など不動産に関する事業を多角的に展開している。

ミサワホーム公式サイト:https://www.misawa.co.jp
DeLCCS文京神楽坂公式サイト:https://teleworker.site/sp_contents/gensen/delccs
AndWorker神楽坂公式サイト:https://teleworker.site/aw-kagurazaka

取材・文=綱島剛(DOCUMENT)

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