アパートのお隣さんがベランダでたばこを吸っていたけど、規約違反じゃないの?【CHINTAI法律相談所】

アパートのお隣さんがベランダでたばこを吸っていたけど、規約違反じゃないの?【CHINTAI法律相談所】

公開日:2022年11月18日

賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス

賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。

入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。

賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。

瀬戸仲男さん
瀬戸仲男 弁護士

「アルティ法律事務所」所長。東京弁護士会、および東京簡易裁判所・民事調停委員に所属。顧問弁護士業務や遺産相続など取扱分野は多岐に渡り、特に不動産問題に精通している。弁護士になる前に不動産会社に勤務しており、不動産業界・実務にも詳しい。テレビやラジオなど多数のメディアに出演し、不動産関係の講演も行っている。
アルティ法律事務所 公式HP

Q.お隣さんがベランダで喫煙! これって規約違反では? やめてもらいたい!

アパートのお隣さんがベランダでたばこを吸っているのを見た。ベランダの喫煙って規約違反じゃないの!? たばこの臭いが洗濯物にうつり、とても迷惑をしている。喫煙をやめて欲しい! 

A.ベランダでの喫煙自体は規約で禁止されていないなら問題視できない

まずベランダでの喫煙は、各賃貸物件で定められた規約によって可否が異なる。ベランダは共用部分に該当するが、「共用部分は火気厳禁」などと明記されていたら当然NGだ。一方、規約で明記されていなかったらOKと考えるのが良いだろう。

加えて民法や消防法、健康増進法においても、ベランダでの喫煙自体は禁止されていない。そのため、隣人がベランダでたばこを吸っているのを見たからといって、喫煙をやめさせることはできないだろう。

ただ、今回のようにたばこの臭いが洗濯物にうつるなどした場合は、ベランダの喫煙を迷惑行為とみなすことができる。また、ベランダで一日に何十本もたばこを吸うなど「受忍限度」を超えている場合も同様だ。

受忍限度とは、社会生活を営むうえで我慢するべき限度のこと。一日数本たばこを吸う程度であれば受忍限度内と言えるが、数十本と吸っていた場合も迷惑行為として問うことが可能だ。

迷惑をしている場合は大家さんや管理会社に対応してもらおう

さらに、受動喫煙によって健康への悪影響が認められる場合は、不法行為として損害賠償を請求することができる(民法第709条、710条)。実際ベランダでの喫煙は、不法行為として認められたケースもあるのだ。

2012年12月に行われた名古屋地裁の裁判では「他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながら喫煙を継続し、何らこれを防止する措置を取らない場合には、喫煙により損害賠償義務を負う場合がある」(要旨)との見解が示された。

とは言っても、これは裁判にまで発展した極端な事例だ。現実的な解決策としては、大家さんや管理会社に相談するのが第一となる。「迷惑している」と被害状況を伝え、時間帯や風向きに気を付けたり、喫煙本数を減らしたりしてもらうなど、互いが納得のいく妥協点を探ろう。

そのうえで被害を証明する証拠を集め、まるで改善されない場合は弁護士への依頼も検討すると良い。もちろん、アパートやマンションなど共同住宅においては他の入居者への配慮や理解が大切。規約上NGでないのであれば、過度に喫煙を責めたり、無理にベランダでの禁煙を求めたりするのは禁物だ。

ここがポイント!

ベランダでの喫煙は賃貸物件によって可否が異なります。ただ、迷惑をしているなら、その可否に関わらず、大家さんや管理会社に相談しましょう。第三者を交えて、冷静な話し合いをするのが解決の近道となります。また、完全な禁煙を求めるより「互いが心地よく暮らせるルールを設ける」ことを心がけましょう。

覚えておきたい法律用語「不法行為による損害賠償」

所有物の破損や財産の損害だけでなく、健康や精神への被害も賠償責任を要求できる。「不法行為による損害賠償」については、民法709条、710条で以下のように定めている。

民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法 – e-Gov法令検索

共用部での喫煙や騒音トラブルなど過度な迷惑行為があった場合、不法行為とみなすことが可能。精神的な被害を受けた場合には慰謝料を請求できる(民法710条)。

ただ、喫煙による健康被害で慰謝料の支払いを求める場合、被害を受けた客観的な証拠が必要であり、その立証は難しい。2012年12月に行われた名古屋地裁の裁判でも、健康被害は認められず、精神的ストレスによる被害のみが認められた。

取材・文=綱島剛(DOCUMENT)

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