結局、何をするの?知っておきたいお盆の5つのマナー

公開日:2018年8月10日

夏といえば、お盆!

お盆というとどんなイメージをお持ちだろうか。「お休みできる期間…。それ以外印象にない…。」なんて方もいるのでは?

お盆のキュウリとナス
定番のきゅうりの馬となすの牛

今回はそんなお盆について改めてどんな日であるのか、またどんなマナーがあるのかを、マナーコンサルタントの西出さんに教えてもらった。

お盆ってどんな行事なの?

お盆とは、ご先祖様や亡くなった方々が、地上に戻ってくる期間。そこで、ご先祖様や亡くなった方々の精霊をお迎えし、感謝と供養をおこなうとされている。

お盆の仏前
盆灯篭!お盆の時、おうちで見たことがある人もいるはず!

その期間は、大きく二通りにわかれている。一般的には、8月15日前後をお盆とし、この期間のことを、旧の盆と言う。

一方、関東などでは、7月15日前後とし、こちらを新の盆と言う。こちらは、旧暦か新暦の違いで、1ヶ月のずれが生じるもので、いずれも、13日に迎え火で精霊をお迎えし、16日の送り火で浄土へとお見送りするのだ。

お墓や仏壇の清め、きれいに整えて、盆棚や盆提灯などを飾る。そして家族や親戚などで集まり、お墓参りや仏壇にお供えものをし、お参りをするのが一般的。そして、みんなでご先祖様に感謝し、食を共にし、絆を深めるのだ。

「儀式については、その地方やご家庭によって、しきたりや風習は様々。よって、それらを教えてくれるご家族やご親戚などに伺うことが、もっともよろしいかと思います。」と西出さん。

お盆の由来

お盆の正式な呼び名は「盂蘭盆(うらぼんえ)」。仏教用語であり、インドのサンスクリット語「ウラバンナ(逆さづり)」という単語を漢字にしたものだ。

お釈迦様の弟子である目蓮尊者が、逆さまにされて苦しんでいる母を、お釈迦様の教えにしたがって救うことができた、という話がある。お盆はこの話に由来し、父母や祖父母など先祖に感謝し供養するという行事になった。

お盆の時期

お盆休みといえば一般的には8月15日前後というイメージがあるが、実際には地域によって異なることをご存じだろうか。

多くの地域に浸透している8月13日~16日は「旧盆」と呼ばれる。対して、関東の一部エリアでは、7月13日~16日の期間にお盆を迎え、こちらは「新盆」と呼ばれている。

本来の盂蘭盆は新盆の時期、つまり7月15日に行われていたが、明治時代に暦が変更となった際に、地域による捉え方の違いでズレが生じたのだ。旧暦の7月15日は、新暦になおすと8月15日前後に当たる。東京の一部エリアでは「月日の呼び名(7月15日)」を、そのほかの多くの地域では「盂蘭盆のもともとの時期」をそれぞれ尊重した結果である。

また、7月は農家の繁忙期でもあるため、その時期を外して翌月に設定した、ともいわれている。しかし月は違うもののいずれも、13日に迎え火で精霊をお迎えして、14日・15日の中日にはお墓参りに行き、
16日には送り火を焚いて浄土へとお見送りする形は同じだ。

ちなみに京都五山で行われる大文字は、毎年8月16日の夜であり、送り火の意味を持つ。

お盆の時に最低限覚えておきたいマナー5つ

お盆のマナー①:迎え火をしてお迎えする

お盆のマナー1:迎え火
迎え火って?

「迎え火」は、ご先祖様が迷わずにおうちにたどり着けるための目印になるもの。一般的には13日の夕方に迎え火をして、お迎えをする。家の門や玄関先に焙烙(ほうろく)と呼ばれるお皿を置き、おがら(麻の茎)を入れ、火をつけて焚き、煙を天へ上らせる。地域によっては白樺の皮を使うところもあるし、焙烙の代わりに耐熱皿を使ってもOKだ。

迎え火を焚いている時は、ご先祖様をお迎えする気持ちで合掌しよう。集合住宅などではベランダで行う場合もあるが、難しい場合には代わりに盆提灯をつるすだけでも大丈夫だ。

お盆のマナー②:お墓・仏壇の掃除をする

お盆のマナー2:整理整頓
気持ちよくご先祖様を迎えよう!

お盆は、お墓や仏壇をきれいに掃除するいい機会である。自宅に友人など来客を招く時と同じように、ご先祖様を迎える場所をきれいに掃除して整頓するのは当たり前のことだ。お墓には雑巾持参で行き、水をかけながら墓石についた汚れを落とす。仏壇はホコリを落とし、きれいな雑巾で乾拭きするといい。

お墓の掃除が終わったら供花や故人の好きだったものをお供えし、お線香を焚いて合掌しよう。お墓掃除の際は、真夏の暑い時期でもあるため、必ずしも真黒なフォーマルである必要はないが、華美な服装は避けるのがマナーだ。靴も歩きやすいものを選ぶといいだろう。

仏壇にはきゅうりで作る馬・なすで作る牛を一組、飾る家庭が多い。こちらに来る際は颯爽と走る馬に乗って、浄土へお戻りになる時はゆったりした足取りの牛に乗って、という思いが込められている。

お盆のマナー③:お供えものには、白い掛紙をかける

お盆のマナー3:お供え物
のし紙はNG!のしあわびは右上のイラストの黄色い部分!

仏壇には、基本的に「五供(ごくう)」と呼ばれるものと、野菜で作った馬や牛、そして故人の好きな食べ物や飲み物をお供えする。五供とは、香(線香)・花・灯(ロウソクや提灯)・浄水・飲食という5つの要素からなるお供えだ。

逆に、お盆参りで親類宅にお邪魔することもあるだろう。その際は、菓子折りや果物には「のし紙」をつけないのがマナーだ。のし紙とは、のし・水引・表書きなどを印刷した紙であり、贈り物にかける。お盆参りではその代わりに、真っ白い掛紙(かけし)をかけることを覚えておこう。のしは、もともと「のしあわび(薄く伸ばして乾燥させたアワビ)」のことであり、生物の殺生をイメージさせるため、お盆の供物には用いないのが常識だ。

お盆のマナー④:お金をお供えする場合は不祝儀袋に入れる

お盆のマナー4:不祝儀袋
水引の色に注意!

初めて迎える初盆(ういぼん)では、お金をお供えすることもある。初盆では多くの人がお参りにやってきて、お供えものでいっぱいになり、ご遺族がてんてこ舞いになる可能性も。それを避けるべく、品物ではなくお金をお供えしたほうが喜ばれるケースもある。

その際には不祝儀を使い、表書きは「御仏(佛)前」「御供物料」などを用いる。水引は黒白が基本だが、地域によっては黄白の結び切りを使うこともある。

「結び切りの水引には、何度も繰り返さない、という思いが込められています」(西出さん)

金額は、友人知人で3千円もしくは5千円程度が相場だ。初盆であれば、5千円から1万円ほど。気持ちを伝えるためのものなので、金額にこだわる必要はない。多すぎず少なすぎずの金額として、5千円がベストかもしれない。

お盆のマナー⑤:おがらを焚いてお見送りをする

お盆のマナー5:お見送り
お見送りは心を込めて!

送り火は、迎え火をした場所で行う。迎え火と同様に、おがらや白樺の皮を焚いて、ご先祖様の帰り道の道しるべとする。盆提灯の場合はそれを持ち出し、お見送りをしたあとに灯りを消そう。牛に乗ってゆっくりとご先祖様が帰っていくことを想い、迷わず浄土にいけるよう心を込めてお見送りしよう。

一人暮らしでも、精霊のお迎えってできるの?

あじさいと提灯の情緒ある風景
一人暮らしでもできる「精霊のお迎え」

もちろん一人暮らしでの精霊のお迎えは可能。仏壇や位牌がなくても、盆棚を作ってみるのをおすすめする。

小さな箱の上に、白い布をかぶせて、きゅうりとなすに爪楊枝をさして足をつくり、お水やお供えものをして準備を。「一輪でもいいので、お花を飾るといいですね」と西出さん。

迎え火や送り火の代わりに、小さな提灯でもいい。購入することが難しい場合は、玄関でお線香を焚いてお迎え・お見送りでもいいとのこと。大切なことは、ご先祖様や故人への感謝と偲ぶ気持ちなのだ。

ご先祖様は、私たちをいつも見守ってくださっている有難い存在。お盆に限らず、日頃からご先祖様や故人に感謝をする心は大切なことだ。

「皆様、それぞれのご事情もあると思いますので、お盆の時期にお墓参りにいけなくても、ご自宅や、お部屋で、静かにご先祖様や故人の方々に感謝を伝えてみてはいかがでしょうか。もちろん、お墓参りに行ける方は、お気をつけて行ってらしてください。」(西出さん)

※宗教や宗派、宗旨によって、お盆の考え方や儀式などは異なります。

教えてくれたのは?

西出ひろ子

マナーコンサルタント。美道家。ウイズ株式会社主宰。国会議員の秘書などを務めたのち、英国オックスフォードへ渡英。現地で独自のマナーコミュニケーション®︎(マナコミ®︎)を確立させ帰国。マナーはお互いを幸せにするためにあるものとし、相手の立場にたった思いやりの真心マナー®︎とおもてなし礼法®︎を提唱する第一人者。テレビや新聞などでは、マナー評論家としても活躍し、その出演は700本を超える。著書は、国内外で80冊以上。著者累計100万部を超える作家でもある。

ウイズ株式会社公式Webサイト:https://www.withltd.com/

2021年4月加筆=CHINTAI情報局編集部

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