INTERVIEW
自立は、住まいから始まる。
高校生の自立を支える住教育とは
- 東京学芸大学
総合教育科学系 生活科学講座 生活科学分野 准教授 - 萬羽郁子 さま

住まいから考える、これからの暮らしと学び

進学や就職をきっかけに、一人暮らしを始める予定の高校生は多くいます。けれど、賃貸契約や住まい選び、引っ越しの準備といった「住まいに関する知識」を体系的に学ぶ機会は、まだ十分とは言えないのが現状です。
こうした背景のもと、私は、CHINTAIが社会貢献プロジェクトの一環として全国の高校に提供した家庭科副教材『高校生のためのお部屋探し&一人暮らしガイド』の監修に携わりました。これは、住まいに関する実践的な知識を学ぶ機会を広げるとともに、「住教育」の重要性を社会に伝えていくことを目的とした取り組みです。
住まいは、単なる建物ではなく、人の暮らしを支える基盤です。日々の生活や健康、人との関係性まで含めて成り立つものであり、住まいを考えることは、生活そのものを考えることだといえます。だからこそ、若い世代が主体的に住まいについて考える機会を持つことが、これからの教育においてますます重要になると感じています。
自立とは「自分の生活に責任を持つ」こと

一人暮らしを始めることは、自立への大きな一歩です。しかしそこで求められるのは、単に生活できることではなく、「自分の暮らしに責任を持つ力」だと私は考えています。住まいを選ぶ際には、家賃や契約条件だけでなく、自分がどのように暮らしたいのか、どのような生活を実現したいのかを踏まえて判断する必要があります。こうしたプロセスそのものが、自立に向けた重要な学びになるのです。
また、防災や防犯、原状回復といった視点を持ち、自分の生活を守る意識を持つことも欠かせません。同時に、住まいは他者との関係の中で成り立つものです。騒音や生活マナー、近隣との関係など、周囲への配慮もまた自立の一部です。
さらに、困ったときに適切に相談できることも大切な力です。住まいを通して「自分」と「社会」との関係を理解すること。そして、その中でどう暮らしていくかを考え、実践していく力を育むこと。それこそが、自立した大人への第一歩になるのです。
住まいを学ぶことが、社会とのつながりをひらく

今回の副教材は、部屋探しから入居後の暮らし、さらには退去まで、一連の住生活を通して学べる構成になっています。住まいを「選んで終わり」にせず、その先の暮らしまで見据えて考えられる点が大きな特徴です。
また、地域ごとの住環境の違いや、実際の生活を想定したチェックポイント、初期費用の目安といった視点があり、生徒が自分ごととして住まいを考えられる工夫があります。限られた授業時間の中でも、主体的に考え、判断する力を育てる設計になっていますので、ガイドと合わせてご用意しているワークも、ぜひご活用いただきたいです。
住まいは多くの人に支えられて成り立っています。物件のオーナーや管理会社といった存在も含め、社会とのつながりの中で暮らしていることを実感することは、これからの生活を考えるうえで大きな意味を持つでしょう。住まいについて学ぶことは、暮らしを学ぶこと、そして社会との関係を学ぶことでもあります。この教材を通じて、高校生がこれからの暮らしを前向きに描き、理想とする住まい・住まい方を主体的に実現していけるようになることを期待しています。
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