


「々」のことを心の中でクマと読んでいます。なんか惜しいぜ、押居A太です。
ベランダいっぱいに広がる洗濯物。
これほど気持ちのいい光景ってなかなかないです。
「ベランダを見てごらん。
洗濯物が沢山見えたら、ここに世界一幸せな家族がいるよ、という目印よ」。
当時そんな話を母はしてくれた…。
ボクの母、ももえも洗濯好き。
ベランダには小さな家庭菜園。
行楽シーズン間近になると、キャンプ用品をベランダに陰干ししたり、ボクらは近所でも評判の仲のいい家族。
ベランダ、それは家族の憩いの空間。
ある日のボクと父は、菜園の水やりに夢中でした。
「ちょっと買い物にいってきます」と母。
「はっ、しまった」と父。しっかり者の母は、戸締まりを忘れない。
ボクらはベランダに閉じ込められたのだ。
父は何を思ったか、もぞもぞとキャンプ用品の点検をはじめた。
「よーし、三日はいける。大丈夫か!A太」
…大丈夫なのか?「寝たら終わりだぞ!」…父さん、まだお昼です。
母は間もなく帰って来た。ボクらの冒険は正味一時間。
父は少しがっかり…。
そして冬、クリスマス。
両隣の家族の電飾デコレーションを見て、父は闘志に火がついたらしい。
「おいA太、我が家もやるぞ!」。父が買ってきた電飾は、クリスマスの頭文字エックスを描いたところで長さが尽きた…。
巨大なバツ印は、むしろSOSにしか見えなかったけれど…。
またある日、母はいつものように戸締まりをして出て行った。
「同窓会、夜まで帰りませんよ」。
父は、もちろんベランダだ。「ももえの奴、二次会に出やがったな…」。
一時間に一回、急ピッチでタバコを点滅させる父。
そのSOS信号は冬の夜空に美しく輝いていた。