賃貸物件の壁紙を入居前に張り替えてほしい!大家さんは対応してくれる?【CHINTAI法律相談所】

賃貸物件の壁紙を入居前に張り替えてほしい!大家さんは対応してくれる?【CHINTAI法律相談所】

公開日:2022年12月6日

賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス

賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。

入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。

賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。

瀬戸仲男さん
瀬戸仲男 弁護士

「アルティ法律事務所」所長。東京弁護士会、および東京簡易裁判所・民事調停委員に所属。顧問弁護士業務や遺産相続など取扱分野は多岐に渡り、特に不動産問題に精通している。弁護士になる前に不動産会社に勤務しており、不動産業界・実務にも詳しい。テレビやラジオなど多数のメディアに出演し、不動産関係の講演も行っている。
アルティ法律事務所 公式HP

Q.壁紙が汚いから入居前に張り替えてほしいんだけど、対応してもらえる?

気になる賃貸物件を見つけて内見しに行った。全体的に良かったのだけど、一部分だけ壁紙が汚れていた。入居前に張り替えてほしい。大家さんに交渉したら、入居前に対応してもらえる?

A.生活に支障が出ないなら、壁紙を張り替えるかは大家さん次第

壁紙が汚いからと張り替えを要求しても、対応してくれるかどうかは大家さん次第だ。

大家さんには「使用収益させる義務」といって、入居者が問題なく生活できるようにする義務がある(民法601条)。そのため、壁紙が原因で異常な悪臭や刺激臭を放っている場合など生活に支障が出るレベルの汚れなら、大家さんは修繕対応しなければならない(民法606条、賃貸人の修繕義務)。

しかし、一部分だけ壁紙が汚れている程度では生活に支障が出ることはほとんどないはず。そうなると、壁紙の張り替えを要求されても、大家さんはそれに従う義務はない

仮に前入居者の退去時に壁紙の修繕費を受け取っていたとしても、それは前入居者と大家さんの間での話。「原状回復すべきだ」と訴えても、壁紙の張り替えは強制できないだろう。

結局、どの程度まで修繕・クリーニングするかは大家さんの判断による。大家さんが壁紙の汚れを認識した上で直さないなら、そういった“条件”の賃貸物件と考えるしかない。張り替えを要求しても、対応してくれるかは大家さんの裁量で決まるのだ。

壁紙の張り替えをカードに交渉するのはアリ

そうは言っても、壁紙の汚れが気になるなら積極的に交渉するべきだろう。ただ、契約後に断られたら不満が残るかもしれないので、内見時など契約前に相談するのがベストだ。

「壁紙を張り替えてくれたら入居を決める」といえば、大家さんも考慮してくれるかもしれない。また、生活には影響がなかったとしても汚れが重度だった場合は「家賃を下げてほしい」と交渉するのも良いだろう。

一方で「この部屋に住みたいが、どうしても汚れが気になる」という場合は、大家さんに自費での修繕を持ちかけるのも選択肢のひとつ。無料かつ無条件(必要費の請求、および有益費償還請求権・造作買取請求権は放棄)で部屋がキレイになるのなら、断る大家さんはあまりいないはずだ。

なお、壁紙の汚れをそのままに契約する場合は、退去時に壁紙の汚れを原状回復費用として請求されないように、写真や動画で撮影して証拠を残しておくことが重要になる。入居時に「現況確認書」の記載を求められたら、現状の傷や汚れをチェックリストに明記することも忘れずに。

ここがポイント!

壁紙の一部が汚れていて張り替えを要求しても、大家さんに修繕する義務があるケースはほとんどないでしょう。そのため、要求に応えてくれるかは大家さん次第となります。対応してくれる大家さんは少数派だと思いますが、ダメ元で聞いてみると良いでしょう。

覚えておきたい法律用語「使用収益させる義務」

賃貸物件を貸す際に大家さんは、入居者が問題なく住めるようにする義務を負う。この「使用収益させる義務」は民法第601条で定められている。その履行に関し、大家さんの修繕義務が民法606条で定められている。

民法第601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

民法第606条
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

民法 – e-Gov法令検索

例えば、トイレや浴室といった水回りなどに不具合があった場合には、入居者の生活に大きな影響が出ることが予測されるので、大家さんには修繕する義務が発生する。

一方で、壁紙の汚れは生活に不具合をもたらすことが少ないため、使用収益させる義務に反することは少ない。もちろん、強い刺激臭や虫が湧くなど、生活に支障を来たすレベルの汚れの場合は大家さんに修繕義務が認められるだろう。

取材・文=綱島剛(DOCUMENT)

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