退去立会いって行かないとダメ? 欠席したらどうなる?【CHINTAI法律相談所】

退去立会いって行かないとダメ? 欠席したらどうなる?【CHINTAI法律相談所】

公開日:2022年10月18日

賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス

賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。

入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。

賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。

瀬戸仲男さん
瀬戸仲男 弁護士

「アルティ法律事務所」所長。東京弁護士会、および東京簡易裁判所・民事調停委員に所属。顧問弁護士業務や遺産相続など取扱分野は多岐に渡り、特に不動産問題に精通している。弁護士になる前に不動産会社に勤務しており、不動産業界・実務にも詳しい。テレビやラジオなど多数のメディアに出演し、不動産関係の講演も行っている。
アルティ法律事務所 公式HP

Q.退去立会いの日に用事が! これって行かないとダメ?

引越しを控えている。退去の立会い日を不動産会社から指定された後に改めて確認したら、重要な用事がある日だった。正直面倒だし、立会いしたくないんだけど、参加しないといけない?  欠席したら、どうなるの?

A.法的な義務はないが、立会いには参加すべき

退去時の立ち合いは、賃貸借契約の解約後、すべての荷物が搬出されて室内に何もない状態で行われる。管理会社と借主(入居者)が一緒に借りていた物件の状態を確認し、修繕する箇所について話し合うのだ。

賃貸物件では退去立会いが当然のように行われているが、実は法律で実施が定められた行為ではない。「立会い必須」と賃貸借契約書の特約も記されていない限り、貸主(大家さん)にも借主にも退去立会いを行う義務はなく、立会いを要求されても従う必要はない。

では、なぜ賃貸物件の退去時には立会いが行われるのか? その主な理由としては「原状回復・修繕費のトラブル防止」が挙げられる。仮に立会いが行なわれなかったら、傷や汚れの有無を確認できないまま、借主は修繕費を請求されることになる。そうなると納得できないだろうし、トラブルも発生しやすくなる。

つまり、退去立会いは、大家さんと退去者がそれぞれが負担する修繕範囲を確認し、納得した上で修繕費を決めるために行われているのだ。逆に言うと、退去立会いは借主にとって不当な請求をされないための“権利”。欠席しても罰則はないが、リスクを抱えることになる。立会いには可能なかぎり参加するのが望ましい

どうしても出席できない場合は代理人を立てよう

だからといって、用事がずらせない場合もあるだろう。そういった場合は、立会い日を変更できないか大家さんや管理会社に交渉しよう。貸主側もトラブルを避けたいので、多くの場合は対応してくれるはずだ。

さらに、立会い日直前での日程変更など立会日をずらせない場合は、代理人を立てられないか相談してみると良い。代理人が責任を持って立会うと伝えたり、委任状を作成して提出したりすれば、代理立会いを断られることは少ないだろう。

もちろん、代理人が了承した事項は、後から覆すことはできない。代理人を立てるなら信用できる相手にお願いするのが鉄則。費用はかかるが、建築士やリフォーム業者など住宅設備に詳しい人に同行または代理してもらうのも良い。

もし立会いにも参加できず代理人も立てられないようなら、部屋の壁や床などを撮影して、後から確認できるように記録しておこう。もちろん、代理人も部屋の撮影もあくまで緊急対応。退去立会い日と用事が重なったなら、早めに貸主側に事情を説明し、日時を調整しよう。

ここがポイント!

退去立会いは入居者に与えられた権利です。修繕費を把握するためにも、日時を変更してもらうなどして、できるだけ参加しましょう。日時変更が難しい場合は、信頼できる代理人を立てるのも有効です。立会の時のやり取りを録音しておくのも良い方法でしょう。

覚えておきたい用語「退去立会い」

退去立会いに関する法律は存在しない。実施する義務はないが、退去立会いは賃貸物件の貸主と借主が負担する修繕費用を決定する場として実施される。

立会いは荷物などを運び出し終わった後に行われ、所要時間は一人暮らしの場合は30分程度が一般的。当日は貸主や管理会社、場合によってはリフォーム業者も一緒に物件内を見て回る。修繕箇所を確認したら、互いが負担すべき内容を決定する。

その際、敷金(解約)精算書へのサインを求められることもあるが、必ずしもその場でサインをする必要はない。修繕費用の負担額に納得いかない場合は後日でのサインでOK。リフォーム業者に相場を確認するなどし、納得できてからの返事で問題ない。

取材・文=綱島剛(DOCUMENT)

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