【医師監修】花粉の種類と飛散時期まとめ!知っておきたい花粉症の基礎知識

公開日:2022年6月13日

花粉の種類によって飛散時期は異なる?

今や国民病とも呼ばれている花粉症。原因となる代表的な植物として、スギやブタクサなどが挙げられる。しかし、花粉を飛散させる植物はほかにも数多くあり、さらに同じ科の植物でも飛散時期が異なることがある。実際に症状につながるかは別として、一年中何らかの花粉が飛んでいるともいえるのだ。今回は、花粉症の基礎知識と飛散時期について確認していくので、毎年花粉症に悩んでいるという方はぜひチェックしてほしい。

今回は、アレルギー科にも対応する日暮里内科・糖尿病内科クリニックの院長・竹村俊輔先生にお話を聞いた。

「日暮里内科・糖尿病内科クリニック」院長 竹村俊輔先生
竹村俊輔先生(医学博士)

日暮里内科・糖尿病内科クリニック院長。
2010年、東海大学医学部卒業。2012年、済生会川口総合病院初期研修医修了。2012年、東京女子医科大学糖尿病・代謝内科入局。2019年、東京女子医科大学大学院内科学(第三)卒業。2019年、東京女子医科大学糖尿病・代謝内科助教。2021年より現職。
https://nipporinaika-clinic.com/

毎年、花粉症に悩んでいる方は多いと思います。花粉症が酷くなる前に対策をすることが重要です。

花粉に関する基礎知識をおさらい

杉の花粉が飛ぶ様子

多くの人が罹患している花粉症だが、「花粉症ってどんな病気?」と聞かれると難しくもある。「飛んできた花粉によって鼻水や目がかゆくなる病気」といったように、やや抽象的に答える方も少なくはない。

まずは、今さら聞けない花粉に関する基礎知識をおさらいしてみよう。

花粉症とは

日本で初めて花粉症患者が発見されたとされているのは、1960年代。その後、花粉症患者は増え続け、代表的な原因の一つであるスギ花粉の有病率(疾病を有している人の割合)は国民の20%を超えるともいわれている。

参考)厚生労働省サイト:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html

花粉症の厄介なところは、突然罹患してしまうことと、症状が出るとなかなか治らないところ。花粉症は花粉のアレルギーによって起こる病気のため、外出するだけ・窓を開けるだけでくしゃみや目のかゆみに襲われることも少なくはない。

花粉症になると、一般的に以下のような症状が現れるといわれている。

  • くしゃみ、鼻水
  • 鼻づまり
  • 目のかゆみ、充血
  • 喉のかゆみ
  • 頭がぼーっとする
  • 集中力がなくなる ・睡眠不足

鼻づまりや目のかゆみなど「花粉症」といえば思い浮かぶ症状以外にも、頭がぼーっとする、集中力がなくなる、睡眠不足など、仕事や日常生活のパフォーマンスに影響を及ぼす症状もあるようだ。

花粉症が引き起こされるメカニズム

花粉症は、どのようなメカニズムで引き起こされているのだろうか。

まず、体の中に花粉という「異物」が侵入すると、排除しようと免疫機能(リンパ球)が働き、花粉に反応する物質を作り始める。この物質を「IgE抗体(あいじーいーこうたい)」という。

IgE抗体が作られると、鼻や目の粘膜にある「肥満細胞」の表面にくっつく。体内に花粉が再度侵入すると、IgE抗体が花粉と結合し、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質を分泌して花粉を体外に放出しようと働き出す。
花粉を排除するためのこれらの反応が、くしゃみや鼻水などの症状となって現れているのだ。

花粉の量は天候や時期によって変わる

日本では数多くの花粉が一年中飛散している。人によって反応する花粉はそれぞれ異なり、「春よりも秋に花粉症に悩まされている」という人も中にはいるだろう。

春に花粉の飛散がピークを迎える代表的な植物といえば、スギやヒノキ。飛散量のピークはスギが3月、ヒノキが3月下旬~4月となっており、タイミングが若干ずれている。

また、夏から秋に花粉が飛散する植物では、ブタクサやヨモギが9月、イネ科の植物(カモガヤ・ネゾミホソムギ・ススキなど)が5~6月と8~10月頃にピークを迎える。

このように花粉症の症状が出るタイミングから、原因となっている花粉を推測することもできそうだ。花粉の種類と飛散時期については、詳しくは後述する。

また花粉の飛散量は一定ではなく、天候によっても変わってくる。
一般的に、下記のような日には花粉が飛散しやすいと言われている。

  • 快晴で湿度が低い日
  • 前日が雨で、その翌日がよく晴れた場合
  • 風が強い日

花粉の種類と飛散時期まとめ

ここからは、人体に影響のある花粉の種類と飛散の時期について解説していこう。

ハンノキ属(カバノキ科)

あまり知られていないが、カバノキ科に属するハンノキも花粉症と関係の深い植物だ。ハンノキは、スギと飛散時期がほぼ重なるため、ハンノキ花粉症に気づかないこともあるが、スギ花粉症と併発することもある。

ハンノキ花粉症の症状としては、スギ花粉と同様にくしゃみや鼻水、鼻づまりなどのほか、喉の違和感やかゆみが特徴だ。

ハンノキ花粉の飛散時期とピーク時期

エリア飛散時期比較的飛散量が多くなる時期
北海道3月中旬~5月中旬飛散量は少ない
東北1月中旬~6月中旬飛散量は少ない
関東1月中旬~5月3月中旬~4月中旬
東海1月中旬~4月中旬飛散量は少ない
関西1月~6月中旬3月中旬
九州1月中旬~5月飛散量は少ない
参考:【花粉症環境保健マニュアル2022】

1月頃から症状が出始めて、喉に違和感があるという場合は、ハンノキ花粉症かもしれない。

スギ

スギ花粉は春先に飛び始めるのが一般的だが、前年の秋から飛散することもある。

スギ花粉の飛散時期とピーク時期

エリア飛散時期比較的飛散量が多くなる時期
北海道3月~5月上旬飛散量は少ない
東北1月下旬~6月、8月、9月下旬~12月2月中旬~4月
関東通年(8月を除く)2月~6月上旬
東海1~5月上旬、10月下旬~12月2月中旬~4月中旬
関西1月中旬~5月上旬、10月~12月2月~4月中旬
九州通年(夏の一部の時期を除く)2月~3月
参考:【花粉症環境保健マニュアル2022】

時期外れにスギの花が咲いてしまうこともある。スギの花粉飛散量はあまり多くないが、花粉に敏感な人は11月頃から症状が現れることもあるので注意が必要だ。

ヒノキ

ヒノキは飛散距離が長く、広範囲に花粉を撒き散らすことが特徴だ。また、スギと併発して花粉症の症状が現れると重症化しやすいので注意が必要だ。

ヒノキ花粉の飛散時期とピーク時期

エリア飛散時期比較的飛散量が多くなる時期
北海道4月下旬~6月飛散量は少ない
東北3月上旬~5月3月中旬~5月中旬
関東1月下旬~7月上旬2月前半、3月~5月下旬
東海3月中旬~5月中旬3月中旬~4月中旬
関西1月下旬~5月3月中旬~4月
九州3月~5月中旬3~4月中旬
参考:【花粉症環境保健マニュアル2022】

スギ花粉と同じ時期に飛散するヒノキだが、少しだけスギよりも遅れて飛散することが多い。花粉に苦しむ人の中には「スギが終わるとヒノキがやってくる」と嘆く人もいるようだ。

イネ科

カモガヤ・ハルガヤ・ムギ・イネ・ススキ・アシなどが挙げられるイネ科の植物は、川沿いや堤防、水田などに多く見られるが、背が低いため飛散する距離が短い。また狭い範囲でしか飛散しないため、距離をおくことで症状の発症を回避することができる。

しかしイネ科のアレルギーがある場合、小麦の摂取量が多くなるとアナフィラキシーショックを引き起こすこともあるので注意が必要だ。

イネ科花粉の飛散時期とピーク時期

エリア飛散時期比較的飛散量が多くなる時期
北海道5~9月6月中旬~6月末
東北3月下旬~10月、12月下旬5月~6月中旬、8月~9月
関東2月中旬~12月4月中旬~10月中旬
東海3月下旬~10月飛散量は少ない
関西1月、2月下旬~11月4月下旬~5月、8月中旬~9月上旬、10月上旬
九州2月中旬~11月中旬、12月下旬4月中旬~6月中旬、8月下旬~9月上旬、10月上旬
参考:【花粉症環境保健マニュアル2022】

イネ科の花粉は、種類によって年に2回飛散のピークを迎える。ただし、これらのほとんどは5~6月が飛散時期となる。

ブタクサ(キク科)

繁殖力が強いブタクサ花粉は、秋花粉症の発生源として知られている。そんなブタクサの花粉は、スギ花粉に比べると約半分の大きさなので、吸い込むと体の奥まで入り込んでしまうことがある。粒子が小さい花粉は網戸などを通過したり、洋服の中に入り込む量も増えるので、防ぐことが難しいものともいえる。

気管支まで入り込んだブタクサの花粉が粘膜を刺激して、咳などの症状を引き起こすことがある。そのため、喘息などの疾患をもっている人は症状を悪化させる原因となる。

ブタクサ花粉の飛散時期とピーク時期

エリア飛散時期比較的飛散量が多くなる時期
北海道ほとんど生育していない       ―
東北8月中旬~10月中旬9月
関東7月中旬、8月~12月8月中旬~10月上旬
東海9月中旬~下旬9月後半
関西8月下旬~10月中旬9月中旬~下旬
九州9月初旬~10月9月下旬
参考:【花粉症環境保健マニュアル2022】

ヨモギ(キク科)

ヨモギはブタクサ同様に花粉の大きさが小さいため、喘息など気管支が弱い人は特に注意が必要となる。

ヨモギアレルギーの方は、特定の食べ物を食べると唇が腫れるなどの口腔アレルギーを発症することもある。口腔アレルギーの人は、ヨモギの他にもメロンやスイカ、セロリやニンジンなどを食べると症状が現れることもあるため、これらはできるだけ避けるようにしてほしい。

ヨモギ花粉の飛散時期とピーク時期

エリア飛散時期比較的飛散量が多くなる時期
北海道8月~9月飛散量は少ない
東北8月中旬~10月9月上旬~中旬
関東7月下旬~11月中旬、12月中旬8月中旬、9月中旬~末
東海8月中旬、9月中旬~10月中旬飛散量は少ない
関西8月下旬~11月中旬9月中旬~10月上旬
九州8月中旬~11月上旬9月下旬
参考:【花粉症環境保健マニュアル2022】

草餅の材料としても知られているヨモギは、春のイメージがあるが、秋に花粉を飛散させる植物だ。

カナムグラ(アサ科)

アサ科のつる草で、繁殖力が強く日本中に生息しているカナムグラ。道端や電柱、庭などあらゆるところで見かける植物である。

カナムグラ花粉症は、くしゃみや鼻水、鼻づまりなど一般的なアレルギー性鼻炎が中心だが、目のかゆみといったアレルギー性結膜炎の症状が出る場合もある。また、ブタクサなどと同様に口腔アレルギーを合併することもあるので注意が必要だ。

カナムグラ花粉の飛散時期とピーク時期

エリア飛散時期比較的飛散量が多くなる時期
北海道ほとんど生育していない       ―
東北8月下旬~10月中旬9月
関東8月中旬~11月中旬8月中旬~10月
東海9月中旬~11月上旬飛散量は少ない
関西8月上旬、9月中旬~11月中旬10月上旬
九州8月下旬~11月初旬9月下旬
参考:【花粉症環境保健マニュアル2022】

花粉症は早めの対策が大切!

人体に影響を与える花粉の種類は多く、地域によって飛散時期やピークが違うので、自分がどの花粉によって症状が出ているのかを見極めることが大切だ。重症化を防ぐには「単なる花粉症だ」と放置せず、早めに医師の診断を受ける必要があるといえる。

仕事や生活のクオリティを下げないためにも、日々の花粉症対策に力を入れるようにしてほしい。

「アレルギー検査」は採血をするだけでどんなアレルギーをもっているのか調べることができます。対策の一つとしてぜひお気軽にご相談ください。

「日暮里内科・糖尿病内科クリニック」院長 竹村俊輔先生
竹村俊輔先生(医学博士)

日暮里内科・糖尿病内科クリニック院長。
2010年、東海大学医学部卒業。2012年、済生会川口総合病院初期研修医修了。2012年、東京女子医科大学糖尿病・代謝内科入局。2019年、東京女子医科大学大学院内科学(第三)卒業。2019年、東京女子医科大学糖尿病・代謝内科助教。2021年より現職。
https://nipporinaika-clinic.com/

文=CHINTAI編集部

参考)東京都福祉保健局「東京都アレルギー情報navi.」https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/index.html

リンクをコピー
関連記事関連記事