【弁護士さんが解説】生活保護の受給条件は?手続きの方法や支援窓口を知ろう!

【弁護士さんが解説】生活保護の受給条件は?手続きの方法や支援窓口を知ろう!

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お金がない、働けない……困っていると感じたら、生活保護が申請できる

生活保護は、国民の誰もが権利として申請することのできる制度だ。「お金がなく生活が苦しい」とき、一定の条件を満たすことで受給対象となるものの、「どのような時に受給できるのか知らない」という人も多いのではないだろうか。

今回はそんな生活保護について、数多くの生活者の相談にのってきた、あかり法律事務所の弁護士・小久保哲郎先生にきいた。少しでも今の生活に不安がある方はぜひ参考にしてほしい。

弁護士・小久保哲郎先生
弁護士・小久保哲郎先生

1995年大阪弁護士会登録。 野宿からの居宅保護を求めた佐藤訴訟など、野宿生活者や生活保護利用者の法律相談や裁判に取り組んできた。
あかり法律事務所

小久保先生:“自分が生活保護なんて……”と抵抗感を感じる方も多いかと思います。でも、生活保護は、生活に行き詰まったときに、とても頼りになるセーフティーネットです。まずは制度のことを知って利用を検討してみてください」

※公開時から同日中に一部修正いたしました(編集部)

しんどさを人と比べる必要はない。遠慮せず申請・相談を

もしこの記事を読んでみても「自分が対象になるかわからない」という場合、「生活保護の受給は難しいかもしれないが、就労や生活で困っていることがある」などの場合は、福祉事務所などの公的機関や、NPOなど支援団体の相談窓口を利用しよう。

専門的な知識を持つ人に相談したり、同じ悩みを持つ人とつながったりすることで、新たな選択肢が見つかることもあるかもしれない。

民間の相談窓口の例

  • 全国の相談窓口一覧(生活保護問題対策全国会議):http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-category-22.html

  • 生活保護とはどんな制度?

    2021年8月、厚生労働省が下記のようなTwitter投稿を行い、話題になった。

    生活保護とは、生活困窮者の程度に応じて必要な保護を行い、「健康で文化的な最低限の生活を保障する」制度のこと。申請が通るかどうかは審査の結果次第だが、申請自体は国民の誰もが法律(生活保護法)保障された権利として行うことができる。

    その際、申請先は地域を所管する「福祉事務所の生活保護担当」となるが、現在住まいがない場合でも「今いる場所の福祉事務所」へ申請できる。

    小久保先生:「残念ながら“水際作戦”(=「申請」させず「相談」扱いで追い返すこと)をする福祉事務所もありますが、そんな時にはハッキリと「生活保護の申請をします」と言ってください。「申請」すれば原則14日(最大30日)以内に調査・決定しなければならず、これをしないのは明確に違法です。申請書の書式は問わないので、日弁連(日本弁護士連合会)パンフレットの書式を活用していただいても構いません」

    日本弁護士連合会によるパンフレット:「あなたも使える生活保護」

    生活保護の種類と内容

    生活保護の制度は、生活をするうえで必要な費用を支給し、受給者である国民の暮らしをサポートする目的で存在する。主な保護の種類と内容は以下の表の通りだ。

    生活するうえで生じる費用扶助の種類支給内容
    日常生活に必要な費用
    (食費・光熱費・被服費など)
    生活扶助食費などの個人的費用光熱費など世帯共通費用を合算して算出。
    特定の世帯(母子など)には加算あり。
    アパートなどの家賃住宅扶助定められた範囲内で実費を支給
    義務教育を受けるために必要な
    学用品費
    教育扶助定められた基準額を支給
    医療サービスの費用医療扶助費用は直接医療機関へ支払う
    ※本人負担なし
    介護サービスの費用介護扶助費用は直接介護事業者へ支払う
    ※本人負担なし
    出産費用出産扶助定められた範囲内で実費を支給
    就労に必要な
    技能の修得等にかかる費用
    生業扶助定められた範囲内で実費を支給
    葬祭費用葬祭扶助定められた範囲内で実費を支給

    参照元:厚生労働省「生活保護制度」より

    小久保先生:「生活保護を利用すれば、生活費・住宅費・教育費など生活の基盤がささえられ、病院にも費用負担なく通えます。保護を利用すると皆さん、ホッと一息ついて穏やかな表情になりますし、ガマンしていた病院にも通えて病気の発見や治療にもつながります」

    上記のように、生活保護ではさまざまな費用に対応して扶助が行われる。
    ここからは「生活保護を受給できる人」の条件について説明していく。

    生活保護が受給できる人の条件

    申請を行った後、生活保護が受給できるかどうかの条件は、主に「世帯収入」がポイントになる。ここからは、受給できる条件をチェックしていこう。

    主にポイントとなる「世帯収入」とは?

    世帯収入とは「生計を一緒にしている家族全員の所得合計」のこと。親族関係や住民票の異動の有無にかかわらず、「同一の住居に居住し、生計を一にしている者」は原則として同一世帯と認定される。

    小久保先生:「単身赴任の夫婦など、別居していても同一世帯とみなされる場合もありますが、離婚調停予定など夫婦関係が破たんしている場合には別世帯と認定されます。また、あくまで“生計が同一(サイフが一緒)”かどうかが重要なので、親せき・知人宅に一時的に居候している場合には、一緒に暮らしていても単身世帯として認定されます」

    受給できる人の条件①:収入が最低生活費に満たない人

    条件の中でも重要なのは、厚生労働省が定めている「最低生活費」よりも世帯全体の収入が少ないことである。たとえば東京都で一人暮らしをしている場合、その最低生活費は約13万円と定められている。
    そのため、この場合は「月の世帯収入額が13万円以下」であれば生活保護の収入基準をみたす。

    「13万円」という最低生活費は居住地域や世帯人数によって異なる。
    基本的には、最低生活費=「生活扶助と住宅扶助の合計」という計算なのだが、算出するには「居住地の等級」とそれに準じた生活扶助の金額、住宅扶助の金額を調べる必要がある。最低生活費の計算式は厚生労働省のサイトで確認できるが、要素が多く複雑な内容に見える。

    厚生労働省サイト:最低生活費の算出方法

    小久保先生:「この間、生活保護基準の引下げが相次いでいて、“経過措置”もあるため計算が複雑で分かりにくくなってしまっています。引下げが落ち着けば計算もしやすくなるのですが……」

    また支給の検討に際しては障害者加算や母子加算があるので、条件に合致している人は生活保護の対象になる可能性が高い。最低生活費を自分で算出するのが難しいときは、福祉事務所に相談してしまうのが安心だ。

    受給できる人の条件②:財産・資産が一定以下の人

    生活保護を受けるには、すぐ換金できる財産や資産(預貯金や生命保険など)が最低生活費の1か月分を下回っていることも条件となっている。それ以上の財産や資産があれば、世帯収入が最低生活費を下回っていても、生活を維持することができるとみなされる。

    小久保先生:「最低生活費の半分を超える預貯金等は収入認定されてその分保護費が減額されてしまいます。ですから、預貯金等が最低生活費の半分以下になったところで生活保護の申請をすることをお勧めします

    すぐ処分できない資産(居住していない不動産など)については、生活保護を利用開始後、処分できた段階で、それまで受けていた保護費を返すことになる。

    小久保先生:「自動車を持ったまま生活保護を利用することについては現状厳しい制限がありますが、事業用、交通不便地・障害者の通勤・通院・通学等のためには保有が認められる余地があります。125㏄以下のバイクは任意保険に入っていれば原則保有が認められます。詳しくは以下のQ&Aパンフレットをご参照ください。」

    参考サイト:自動車保有問題Q&A2021年7月発行 (lolipop.jp)

    受給できる人の条件③:働く能力を活用すること(仕事を探しても見つからないこと)

    病気やケガ、心身の不調などで働けない人は問題なく生活保護が利用できる。一方、働く能力がある人は、その能力を「活用」することが生活保護の条件となるが、仕事を探しても見つからない場合には生活保護が利用できる。

    また、働いていても、収入が世帯の最低生活費に満たない場合は、差額について生活保護を受給できる(就労収入の場合は、“基礎控除”があって手取りは最低生活費より少し増える)。

    受給できる人の条件④:親族からの金銭的援助は受給条件ではない

    よく誤解されているのが「家族や親せきがいれば、まずそちらに援助を求めなければならない」という情報。これは誤りで、親族から援助を受けられるかの確認は生活保護の受給条件ではない実際に扶養(仕送り)がされたときは、収入認定されてその分保護費が減らされるという意味にすぎない。

    ただし、生活保護を申請するときには、申込者に対して家族や親族の有無の確認が行われる「扶養照会」という仕組みがある。生活保護担当者は申込者の戸籍を取り寄せ、扶養(仕送り)が期待できる一定の範囲の親族に対し書面で「扶養照会」を行う場合がある。

    親族への問い合わせや扶養照会は拒否できるようになった

    しかし、人によっては家族や親せきに頼れない、もしくは頼りたくない事情がある人もいるだろう。そういった場合は、申請時に「親族への連絡を拒否したい」と伝え、「扶養が期待できる状態でない」ことを担当者に説明しよう。適切な説明をすれば照会を止めることができる。この対応は、2021年春に厚生労働省から出された通知によって、全国の福祉事務所に実質的に義務付けられるようになった。

    それでも「ちゃんと断れるか、説明できるかが心配」という人は、「扶養照会に関する申出書」と「申出書添付シート」を提出しよう。これらの書類を使えば親族に連絡が行くことを拒否する意思表示ができる。

    生活保護問題対策全国会議:扶養照会に関する申出書

    これまで生活保護の申請に際しては、本人が希望しない場合も扶養照会が行われてしまっていた。拒否ができるようになったとはいえ、意思表示を積極的に行わないといけないのは負担かもしれない。しかし、家族や親せきへ連絡がいく可能性を理由に申請を悩んでいる方は、この申出書を活用してみてほしい。

    小久保先生:「この申出書に親族ごとに仕送りが期待できない事情を書いて出せば、ほとんどの場合、扶養照会を阻止できています。福祉事務所にとっても扶養照会は労多くして実りがないので「ムダな仕事が減って助かる」と逆に喜ばれることもあるようです」

    生活保護の申請後におこなわれる調査

    生活保護を申請すると、受給条件を満たしているかチェックするための調査が行われる。なお、調査内容は以下のようになっている。

    • 銀行や生命保険会社などへの資産調査
    • 売却可能な資産の有無
    • 働ける能力の有無
    • 援助できる親族の有無(親族照会は拒否できる)
    • 年金や社会保障制度などほかに活用できる制度の有無

    こういった調査においては小久保先生の先述のコメントにもあった「水際作戦」と呼ばれる対応が問題になることもある。もし窓口の担当者や福祉事務所とのやり取りで疑問や心配に思うことがある場合は、支援団体やホットラインを活用して申請をサポートしてもらおう。

    小久保先生:「申請させてもらえないなど不当な扱いがあった場合には、支援団体などに気軽に相談なさってください。申請同行や不当な処分に対する不服申立て(審査請求)について弁護士が本人負担なく代理人になる法律援助事業もあります

    全国の相談窓口一覧(生活保護問題対策全国会議):
    http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-category-22.html

    家賃の支払いに活用できる生活保護「住宅扶助」とは

    生活保護によって支給される扶助はいくつかあるが、この記事では特に家賃とかかわりの深い「住宅扶助」を解説する。住宅扶助とは、家賃や補修費など住宅維持費を給付するもの。賃貸と持ち家で支給内容が変わるので確認しておこう。

    賃貸の場合の住宅扶助

    住宅扶助の金額を超える家賃の部屋に住んでいる場合、その差額を生活費の扶助から支払わなくてはいけない。また、高額な賃貸物件だと、ケースワーカーから転居指導を受ける可能性もある。これから物件を借りるという場合は、扶助額内で払える家賃の物件を探すのがベストだ。

    また、賃貸物件に引越す必要があるとき、敷金や仲介手数料、引越し費用なども保護費から支給される場合がある。しかし、転居先の家賃が住宅扶助額の限度内でなければ支給されないため、あらかじめ限度額の範囲をチェックしておこう。なお、住宅扶助で賃貸物件を借りるとなると、「家賃の支払いが滞る可能性がある」などの理由で断られることもあるので、事前に不動産会社に相談するといいだろう。

    小久保先生:「家賃を滞納して立ち退きを迫られている場合や、病気療養上環境条件が著しく悪いと認められる場合などにも生活保護から転居費用等を出してもらえます。

    持ち家の場合の住宅扶助

    持ち家に住んでいる場合、ローンが完済しているのであれば、よほど高額でない限り、そのまま住むことができる

    一方、ローンを支払っている状態の場合は、原則として生活保護の利用は難しい。ただし、住宅ローンがあっても滞納している場合には、住宅扶助以外の生活保護を受けることができる。家が競売になって出ていかなければならないときには、賃貸住宅への転居費用も支給される。

    困りそうなときは、困る前に生活保護を使おう!

    生活保護を申請~受給するにあたっては、精神的に高いハードルがあるともいわれている。また、申請条件も細かく決められているため、「申請しても通らない」と思っている人も多いかもしれない。

    しかし、日本国籍を有する人には誰でも、生活保護を申請する権利がある。外国籍の方も一定の在留資格があれば生活保護法が準用される。少しでも生活が苦しいと感じている方はぜひ、生活保護をはじめ、ほかにもたくさんある公的な制度や支援団体を利用してほしい。

    小久保先生:「生活保護のことが少しは身近に感じていただけたでしょうか?より詳しくは以下のサイトや書籍なども参考にしていただき、ぜひ生活保護の利用を積極的に検討していただければ嬉しく思います」

    ▼いのちとくらしを守るQ&A:
    http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-431.html#1-q5

    ▼「法律家・支援者のための生活保護活用マニュアル2019年度版」(生活保護問題対策全国会議編):
    http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-329.html

    ▼全国の相談窓口一覧(生活保護問題対策全国会議):
    http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-category-22.html

    編集部がこの記事を制作している中でも

    ×働ける人は生活保護は利用できない
    〇仕事を探しても見つからない場合や収入が低ければ利用できる

    ×住民票がないと申請できない
    → 〇家がなくても、近くの福祉事務所で申請できる

    など、誤解していたことがたくさんあった。

    人生には色々なことが起こる。誰しもさまざまな悩みや不安を抱えながら生きている。そこで大切にされるべきは、「何かあったときに助けてもらえる社会」ではないだろうか。

    困っていること、しんどさを誰かと比較する必要はない。自分がこの瞬間に「困っている」と感じたら、制度に、専門家に、誰かに頼ってほしい。

    小久保先生、ありがとうございました!

    教えてくれたのは?

    弁護士・小久保哲郎先生
    弁護士・小久保哲郎先生

    1995年大阪弁護士会登録。 野宿からの居宅保護を求めた佐藤訴訟など、野宿生活者や生活保護利用者の法律相談や裁判に取り組んできた。
    あかり法律事務所

    取材・文:CHINTAI編集部
    協力:生活保護問題対策全国会議

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