「床上」「床下」浸水の違いとは?賃貸物件の補償はどうなる?

公開日:2021年4月9日

床下浸水と床上浸水の定義とは?

床上浸水1
床下浸水と床上浸水のそれぞれの定義を確認してよう

近年、大規模な台風災害が増えており、今までにないような浸水被害が起こることも珍しくなくなっている。アパートやマンションなどの集合住宅でも浸水被害が起こるリスクがあり、住んでいる階によっては床下もしくは床上浸水が起こる可能性も否めない。

浸水被害による保険の請求は、床下か床上など被害状況によって変わるので、まずはそれぞれの定義を確認しておこう。

浸水深と建物被害

床下浸水は、浸水深0.5mぐらいまでの高さで、床より下の部分まで浸水していることを指す。

一方、床上浸水は浸水深0.5m以上、部屋の床の上まで水が溜まってしまった状態を指している。

ただし、住居というのはすべて同じ高さで建てられているものではない。土を盛って高くしている家もあれば、道路よりも1階が低い家もあるため、床下か床上かというのはすぐに判断できないのだ。

そこで参考になるのが、国土交通省の川の防災情報に記載されている浸水深と浸水程度の目安だ。浸水深は浸水域の地面から水面までの高さのことで、この数値によって浸水程度の目安や建物被害の程度がわかる。

浸水深と浸水程度の目安

浸水深浸水程度の目安
0~0.5m大人の膝までつかる
(床下浸水)
0.5m~1m大人の腰までつかる
(床上浸水)
1.0m~2.0m1階の軒下までの浸水
2.0m~5.0m2階の軒下まで浸水
5.0m~2階以上の屋根などが浸水

参照:国土交通省 川の防災 浸水深と避難行動について

一般の家屋の場合、浸水深50cm未満で床下浸水、50cm以上になると床上浸水となる。賃貸物件の場合は浸水深が一般家屋と異なることがあるが、それでも床上浸水が発生してしまうと部屋や家具、建物に被害が出る可能性がある。

補償の内容を理解しておかないと損してしまうこともあるので、浸水被害に関する知識を持っておかなくてはいけない。

賃貸物件で床下浸水、床上浸水した場合建物の修理や家財の補償はどうなる??

床下浸水と床上浸水では被害の度合いは違うものの、不自由な生活を強いられたり、建物や設備に不具合が出たりするかもしれない。こういった場合、破損部分の修理や家財などの補償はどうなるのか、疑問に思う人もいるだろう。

自然災害は予測がつかないので、万が一被害にあったときに慌てないように、事前に賃貸物件に災害被害が起こった場合の補償について把握しておこう。

床下浸水、床上浸水での建物の損壊について修繕費は「大家さん負担」

床下浸水であれば何とか生活は続けられるが、床上浸水をしてしまうと生活ができなくなってしまう。生活できるようにするには、清掃や修繕はもちろん、設備の消毒などもしなくてはならなくなる。こういった費用はすべて自分で払わなくてはいけないと思っている人が多いようだが、建物の修繕費は大家さん負担となるのだ。

大家さんは賃借人に対して、「賃料と引き換えに利用可能な物件を提供する」という義務がある。自然災害による建物、設備の損傷で住めない状態になったとしても、建物すべてが損壊しない限り賃貸借契約は継続されている。

民法第六百六条においても「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とされていることから、大家さんは賃貸物件の建物の修繕をすべて負担しなくてはいけないのだ。そのため、床上浸水で建物や設備の損壊や故障があった場合は、自分でどうにかするのではなく大家さんに報告し、修理を依頼しよう。

例外として災害による建物の損壊が「入居者負担」となる場合もある

原則として、建物などの修繕は大家さんが全額負担しなくてはいけないが、中には例外があるので注意したい。

たとえば、台風が来るとわかっているのにベランダに洗濯物干しを出しっぱなしにしてしまい、窓ガラスが割れてしまった場合は賃借人に責任を負う必要がある。また、危険物を置いていて火災が起きてしまった場合も同様だ。

黙っていればわからないと思うかもしれないが、大家さんは火災保険や地震保険を利用して修繕費用を払うため、保険会社の調査が入る。保険会社は不要な支払いが出ないように細かく調査するため、責任の所在はすぐにわかってしまうことになるので、自分に非がある場合は最初に伝えておいた方がよいだろう。

家財や入居者のケガについては大家さんは補償してくれない?

建物の修繕は大家さんが負担してくれるが、入居者の家財道具や家電製品、所有物が壊れてしまった場合はその限りではない。入居者の所有物というのは大家さんのものではないため、補償する義務もないのだ。

たとえ、床上浸水によって冷蔵庫が故障しても、テーブルが使えなくなってしなっても、それらの修理や買い換えは自腹となる。浸水の度合いによっては、家財道具も甚大な被害を受けることがあり、すべて買い換えが必要となる可能性もある。

こういった場合に備え、ほとんどの物件で任意加入が義務となっている火災保険に入るときは、地震や水害による被害への補償も特約でつけておくといいだろう。火災保険では浸水被害は補償されないが、特約をつけておけばいざというときにカバーしてもらえる。

「火災保険」について詳しくは、下記の記事でチェック!

一人暮らしの火災保険の相場は?入らないとどうなる?

例外として災害による家財や入居者のケガについて「大家さん負担」となる場合もある

基本的に、災害による家財の破損や入居者のケガは自己負担となるが、大家さん負担となる例外もある。それは、大家さんが物件管理を怠っていた場合だ。

たとえば、雨漏りの修繕を依頼していたのに対応を怠り、そのせいで台風や豪雨により家財が損傷した場合が挙げられる。また、窓ガラスの破損をいつまでも直さず、そのガラスが割れてケガをしてしまった場合など、自然災害による被害ではなく怠慢な管理で被害にあった場合は大家さんに賠償請求をした方がよい。

状況によっては全額負担にならないかもしれないが、すべてを自己負担する必要はない可能性もあるので、信頼できる不動産会社などに相談してみよう。

賃貸物件が浸水してしまった場合、家賃はどうなる?

床上浸水2
万が一に備えて、賃貸物件が浸水してしまった場合、家賃はどうなるのかを事前に確認しておこう

もし、賃貸物件が浸水によって、修繕が終わるまで住めなくなってしまった場合は、復旧するまで家賃の請求はできないとされている。つまり、賃貸借契約が継続しているとしても、一時的に立ち退かなくてはいけない場合は、賃料を払う必要はないということだ。

文言は異なるが、民法六百十一条でも「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる」と定められていることから、借りている部屋で生活できるようになるまでは賃料は払わなくてもよいというのが一般的な解釈となっている。

ただし、立ち退き先がホテルだったとして、その宿泊代を大家さんに請求することはできない。その理由は、立ち退きの原因になったのは大家さんの落ち度ではなく、自然災害によるものだからである。いくら建物の修繕義務があるといっても、大家さんも被害者であり加害者ではないのだ。

ホテル代も払ってもらえると勘違いしていると、結果的に自分が高額の宿泊料を払うことになるかもしれないので注意してほしい。大家さんは物件を住める状態にするのが義務というだけで、入居者が一時的に立ち退く場所を用意する義務はないので、避難場所は自分で責任を持たなくてはいけない。

まとめ

台風や大雨によって万が一、浸水被害などにあう可能性はも否定できない。実際に災害が起こってしまうと、どうしていいかわからなくなってしまうことも多い。

有事の際に1から被害や補償の連絡先を把握するのは難しいので、事前にどこに連絡すればいいのか、どういった対応をすればいいのかなどを確認しておこう!

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CHINTAI編集部
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1992年創業、お部屋探しや生活の情報を発信してきた株式会社CHINTAIが運営するWebメディア。引越しに関する情報はもちろん、家事や家計、季節の楽しみなど日々を豊かにする知識を調査・ご紹介。
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