【おすすめ妖怪漫画2019年版】残暑にひんやり気分！？　妖怪・幽霊が登場するマンガ

幽霊、妖怪、呪い……“目に見えないもの、人ならざるもの”を描いた漫画3選

秋も到来とは言え、まだまだ暑い日が続く今日このごろ。

じゃあ、妖怪や幽霊、呪いなど“人ならざるもの”が登場するマンガでちょっと涼しい気分を味わう、なんていう趣向はどうだろうか？　

シリアスなストーリーものからギャグ漫画まで３作品をセレクトした。

妖怪・幽霊が登場するマンガ1.『百鬼夜行抄』今市子

不可思議な力を持っていた幻想作家・飯嶋蝸牛。その孫である飯嶋律（りつ）と従姉の飯嶋司、広瀬晶は祖父からの遺伝で魑魅魍魎と触れ合う能力を持ってしまう。物語は基本的には律を主人公に、彼が“見てしまったもの”や、人の目には映らぬ世界に住むものたちとの関わりを描いていく。

現在単行本26巻、文庫版16巻が刊行されており、これまで舞台化やドラマ化もされた人気作。その魅力はなんといっても、作家・今市子の端正で繊細な絵柄で描かれる物語の切なさ。律たちに関わる人々はときに思いがけなく妖魔に魅入られ、ときに自身の愚かな行動ゆえに妖魔が入り込まれてしまう。

物語は１話完結でハッピーエンドで終わるものもあれば、ほろ苦い後味を残すものも。しかしそれがまた、えも言われぬ余韻を残す。

また、妖魔が原因となり命を落とした律の父・孝弘の体を借りた妖魔青嵐（あおあらし）、庭の桜の木に住む酒好きな使い魔・尾黒、尾白という狂言回し的な存在がなんとも魅力的！　

主にコメディリリーフとして登場する彼らの愛らしさが、物語にホッとできる空気を与えてくれる。独特の幻想的な雰囲気に、つい引き込まれてしまうこと間違いなし。

妖怪・幽霊が登場するマンガ2.『こじらせ百鬼ドマイナー』南郷晃太

実は、四国が妖怪王国であることをご存知だろうか？　この『こじらせ百鬼ドマイナー』は、そんな四国にあるという“妖怪たちが通う学校”を舞台にしたギャグ漫画だ。

東京育ちの渡海隼人は、どういうわけか四国の妖怪たちが通う学校へ転入することに。そこに通う妖怪たちはみな、その認知度の低さゆえ色々こじらせていた……。脇の甘すぎる秘密主義者･飴宮さんを筆頭に、クセだらけの面々とのこじらせ学園生活が繰り広げられていく。

このマンガの凄いところは、マイナーでありながらも“実際に四国に伝わる妖怪”たちが次々と登場するところ。例えば「嘗女」。例えば「勝賀瀬の赤頭」。例えば「首吊り狸」。よほどのローカル妖怪マニア以外は知らないような（しかしちゃんと伝承としては残されている）妖怪たちが次々と登場、そしてそれぞれの理由で“こじらせ”ている彼らがなんともカワイイ！　

主人公が振り回される姿を笑いながら読んでいるうちに、個性的なキャラクターたちをつい好きになっているはず。日本のローカル妖怪の奥深さとともに楽しめる作品だ。

妖怪・幽霊が登場するマンガ3.『呪術廻戦』芥見下々

現在、週刊少年ジャンプにて好評連載中の作品。類稀な身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁（いたどりゆうじ）は、病床に伏せる祖父の見舞いを日課にしていた。だがある日学校に眠る「呪物」の封印が解かれ、化物が現れてしまう。

取り残された先輩を救う為、校舎へ乗り込む虎杖。呪いに取り込まれそうになる先輩を助けるため、虎杖は特級呪物「両面宿儺の指」を自らの身体に取り込んでしまう。呪物を取り込んだことで呪術師の討伐対象となってしまった虎杖は、この世に残る「宿儺の指」を全て取り込んで死ぬことに。呪術師が集まる“都立呪術高専”での生活が始まってゆく。

「呪術」というものの存在と、思いがけない事態でそれらに関わらざるを得なくなった主人公。虎杖の中の「宿儺の指」をめぐり次から次へと強敵が現れていく様と展開の速さはまさに王道ジャンプ作品！　といったところ。テンポの良さとかつてない設定に、一度読み出すとページを捲る手が止まらないはず。

また、主人公・虎杖の飄々としたキャラクターもなんとも面白い。死を宣告されるもそれを受け入れ、化物を呼び寄せる「宿儺の指」を探し自らの身体に宿すという過酷な選択をする虎杖。しかし彼の様子に悲壮感はない。この軽やかさがこの作品の大きな魅力なのだろう。また、呪術高専の個性的な登場人物たちとの日常描写にも注目だ。

ついつい日常でも「この世ならざるもの」を探してしまうかも？

また新たな妖怪ブームが到来している昨今、妖怪や“この世ならざるもの”をモチーフにしたマンガも数多く登場している。少女・女性マンガから少年・青年マンガまで幅広いジャンルにわたっているので、いろいろ読み比べても楽しいはず！　

文＝川口 有紀
ライター、編集者。演劇雑誌の編集部員を経てフリーに。 現在は主に演劇、映画、芸能、サブカルチャーの分野で取材・執筆活動中