毎日一編ずつも良し、一気に楽しむも良し。短編小説のススメ

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アンソロジー集から逝去した名作家の作品まで、3冊をセレクト

読書は楽しいけれど、集中すると意外と体力を使うもの。忙しい日々の中、長編小説を読むのは辛いけれどもちょっと気分転換をしたい、そんなときにうってつけなのが短編小説集。

1日一編ずつ読み進めたり、お気に入りの話や作家を見つけて読み返してみたり。そんな気軽に楽しめる3冊をご紹介しよう。

短編小説のススメ1.『読まずにいられぬ名短篇』北村薫・宮部みゆき編

読まずにいられぬ名短篇 (ちくま文庫)

名作家はときとして、優れた“読み手”でもあるもの。この本の選者、北村薫と宮部みゆきは日本ミステリー界を代表する作家であるのは言わずもがな。実は稀代の読書家としても知られている2人なのだ。

そんな彼らが、自分たちがこれまで読んできた数多の作品の中から「名短篇」をセレクトしたというのだから、面白くないわけがない。実はこの本、ちくま文庫の名物シリーズとなっていて、2014年に発行されたこの『読まずにいられぬ名短篇』で5冊目となる。

この本の魅力はなんといっても、カテゴリを超えた古今東西の作品の中から作品がセレクトされていること! 今作の収録作家をざっと並べてみても、幸田文、江國香織、山本周五郎、ジャック・ロンドン、松本清張、倉本聰……そう、あの名脚本家のシナリオも収録されているのだ。

なぜ短篇集にシナリオ?と思うかもしれないが、収録されている松本清張の短篇『張込み』、これをなんと時代劇に仕立てた倉本聰の『武州糸くり唄』が続けて収録されているという仕組みに。

そして。このシリーズの最大のポイントは、巻末に北村・宮部両者の対談が付いていること! 2人がなぜこの作品を選んだかという理由はもちろん、実は作品の背景はこうで、この作家のこんな作品が他にもあって……など、これまで読んできた作品がより深く味わえること間違いなし。「1冊で二度美味しい」短編集だ。

短編小説のススメ2.『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

先日、91歳で亡くなった作家・田辺聖子。大阪に生まれ育ち、市井の人々の生活を大阪弁、つまり“上方言葉”で生き生きと描いた作品で知られただけでなく、他にも古典の現代語訳やエッセイなど、多彩な分野で活躍した存在だった。

それだけに、とにかく著作の数が膨大! 今回の訃報で興味を持ち「読んでみたい」と思った人も、何から読んだものか途方にくれてしまうだろう。そんな人にまず「田辺聖子入門」の1冊としておすすめしたいのが、この『ジョゼと虎と魚たち』。2003年に妻夫木聡と池脇千鶴で映画化もされたので、そちらで知っている、という人もいるかもしれない。『ジョゼと虎と魚たち』は、今作に収録された一短編だ。

収録されている作品はどれも、恋愛を描いたもの。仕事を持ち、自立した女性が主人公のものが多いせいだろうか? エネルギーに満ち溢れ、ただ無邪気に永遠を信じることができる“若い恋”と違い、もっと複雑な感情が彼女たちの周りにはつきまとう。単純に言語化できない思いはもやもやとしているものの、なんともエロティックで甘美。柔らかな関西の言葉で描かれてるのも、そう思わされる理由の1つかもしれない。そう、田辺聖子は恋愛小説の名手でもあったのだ。

寝る前に1編読み、作品世界の余韻を楽しみながら眠りにつく。そんな楽しみ方をしたい1冊だ。

短編小説のススメ3.『SF JACK』角川書店

SF JACK

最初に紹介した「名短編シリーズ」もそうなのだけど、いろいろな作家の短編小説を集めたアンソロジー集の楽しみは、自分の知らなかった作家との出会いがあること。というわけで、3冊目はSFというジャンルに特化した短編集をご紹介。

まずは、この執筆陣を見てほしい。映画化された『天地明察』『十二人の死にたい子どもたち』の冲方丁、『リング』『パラサイト・イヴ』で話題となった瀬名秀明、『陰陽師』シリーズの夢枕獏をはじめ、新井素子、上田早夕里、小林泰三、今野敏、堀晃、山田正紀、山本弘、吉川良太郎、そしてミステリー作家のイメージが強いが、実はSFのジャンルでも活躍している宮部みゆきという総勢12名。日本SF界を代表する執筆陣、さながらアベンジャーズ状態だ。しかも収録作はすべて、各作家による書き下ろしという豪華さ!

そんな盛りだくさんの1冊を読んでみて思ったのは「日本SF界のバラエティ豊かさ」。いきなり造語がてんこ盛りの冲方丁『神星伝』で幕を開け、続いてはフランス革命の時代、撥ねられた少女の首と猫との会話というどう説明したものだが途方に暮れる吉川良太郎『黒猫ラ・モールの歴史観と意見』で呆気にとられる。かと思えば空手にまつわる奇妙な出来事を描いた今野敏『チャンナン』、“あたし”の一人称にのせられするする読んでいくと、最後にいろいろ考えさせられる新井素子『あの懐かしい蝉の声は』のような作品も。

普段SFを読まない人でも、この1冊で好みの作家を見つけられるのでは。そんな出合いが期待できる1冊だろう。

「何を読んだらいいかわからない」人でも、必ず好きな作品が見つかる

忙しい毎日でも、自分のペースで読み進めることができるのが短編集のいいところ。

また、『読まずにいられぬ名短篇』『SF JACK』のようなアンソロジー集の場合、気になった作家の別の作品を今度は手にとってみる、という広がりも期待できる。「新たな作品と出会いたい」という人にもおすすめだ。

文=川口 有紀
ライター、編集者。演劇雑誌の編集部員を経てフリーに。 現在は主に演劇、映画、芸能、サブカルチャーの分野で取材・執筆活動中

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