AFRO FUKUOKA編集長&紀伊國屋書店の書店員オススメ! 福岡が舞台の本8選

公開日:2018年4月17日

この街にきっと住みたくなる! 書店員&街情報誌編集部が推薦する物語とは?

街の情報を知り尽くした街情報誌の編集部と、その街の書店員に、読んだらその街に住みたくなる本を紹介してもらうこの企画。

今回はJR博多駅のバスターミナルにある紀伊國屋書店の書店員と、福岡のライフマガジン『AFRO FUKUOKA』の編集長に、福岡がもっと好きになる、オススメの街本を教えてもらった。

書店員が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

紀伊國屋書店福岡本店 高倉史朗さん
JR博多駅のバスターミナルにある紀伊國屋書店福岡本店。ワンフロア1000坪もあり、約70万冊という豊富な品ぞろえで福岡人をむかえる。

紀伊國屋書店福岡本店 高倉さんの推薦本①:ライオンズ、1958。(著・平岡陽明)

ライオンズ、1958。

1958、西鉄黄金時代奇妙で温かな男たちの友情

主人公・木屋淳二は西九州新聞社で西鉄ライオンズの番記者を務めている。ある日、木屋はひょんなことから、面倒見の良いヤクザの田宮と知り合い、意気投合する。2人の奇妙な友情を軸に、西鉄の花形選手・大下や孤児院の野球少年との交流など、人間ドラマを生き生きと描き出す。

西武ライオンズの前身で、博多っ子の誇りでもあった西鉄ライオンズの黄金時代に、不思議な縁で交わった男たちの物語。ヤクザと新聞記者、野球選手がそれぞれ己を信じて一直線に生きる姿がすがすがしく描かれている。

ノスタルジックやハードボイルドという言葉だけでは語りきれない、福岡という世界が読むほどに広がっていくこと間違いなし。(高倉さん)

紀伊國屋書店福岡本店 高倉さんの推薦本②:ローカルブックストアである――福岡ブックスキューブリック(著・大井実)

ローカルブックストアである: 福岡 ブックスキューブリック

書店が“街”を変える! ある書店の15年間の物語

福岡で2001年に船出した小さな総合書店「ブックスキューブリック」の店主が、本屋になるまでの経緯や本への思いを綴った一冊。けやき通りにあるその店は、今や本好きが集まる全国的に有名な書店である。

はじめは素人同然からスタートした書店づくりだったが、街の商店主を巻き込み、本を媒介に「人」と「街」とがつながるコミュニティ構築へと展開していく。

「書店とは町に不可欠の文化的インフラだ」と言い切る著者は、トークイベントやブックフェス「ブックオカ」を開催し、本の魅力を伝え続けている。その姿に、ローカルブックストアのあり方、ひいては「本のある暮らし」について考えさせられる。大井さんの15年間にわたる本屋稼業を詰め込んだ一冊。(高倉さん)

紀伊國屋書店福岡本店 高倉さんの推薦本③:山よ奔れ(著・矢野隆)

山よ奔れ

激動の幕末は博多で、祇園山笠に命を賭けた男たち

舞台は慶応元(1865)年の博多。幕末の世の中でも、祇園山笠に命を賭ける男たち「のぼせもん」がいた。一方、尊王攘夷派と佐幕派に藩論が二分した黒田藩では筑前勤王党が起死回生を狙っている。「のぼせもん」の大工・九蔵と、筑前勤王党の中心人物・月形洗蔵は、身分は違えど互いを友と認めていた。しかし、時代の荒波とともに2人は互いの間にある隔たりを感じることに―。

祇園山笠が舞台の小説は珍しく、福岡出身の著者が地元愛を込めた渾身の一作。尊王攘夷の嵐が荒れ狂う中、博多の男たちが暴れまくる姿にスカっとさせられること必至! 

活気ある博多弁、祭りの熱気、男同士の友情……雄々しい魅力にあふれた一冊だ。(高倉さん)

紀伊國屋書店福岡本店 高倉さんの推薦本④:福岡「地理・地名・地図」の謎(監修・宮崎克則)

福岡「地理・地名・地図」の謎  意外と知らない福岡県の歴史を読み解く! (じっぴコンパクト新書)

知れば知るほど面白い!福岡の地理・歴史トリビア

「大宰府にかつて存在した謎の宿泊施設の実態とは!?」や、「官営八幡製鉄所の建築地として『八幡』が選ばれたワケ」、「篠栗新四国霊場、九州にあるのになぜ四国?」など福岡県の地理や地名、地図に隠された意外な歴史のエピソードを紹介した雑学ネタ本。

一時期、「福岡の謎」というテーマの本が何冊も出版されたことがあったが、その中でも最も読まれていたのがこちら。県民ですら知らなかったディープなネタが満載の本作。福岡をより深く知ることのできるテキストとして最適の一冊といえるだろう。

福岡に興味がある県外の方はもちろんのこと、県民の方にもぜひ読んで福岡の魅力を再発見してもらいたい。きっと新しい福岡が見えるはず。(高倉さん)

編集部が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

AFRO FUKUOKA 編集長 川崎雅宣さん
福岡の今がつまったライフマガジン『AFRO FUKUOKA』。ファッションやグルメ、各種イベント情報やプレゼント情報などを発信している。
web:http://afro-fukuoka.net/

AFRO FUKUOKA 編集長 川崎さん推薦本①:白仏(著・辻仁成)

白仏 (集英社文庫)

辻仁成のルーツを覗く死と生命の物語

小さな島の鍛冶屋から身を起こした鉄砲屋の稔は、島中の墓の骨を集め仏像を造る事業に晩年を捧げる。その陰には、早逝した少年期のあこがれの女性への終生変わらぬ愛があった―。明治大正昭和を生きた、著者・辻仁成の祖父をモデルに描く物語。

今よりも死が身近にあった時代、鉄砲屋を生業とした主人公の視点を通し、静かに丁寧に描写されていく死生観は読みごたえ抜群。島の景色や風土も緻密に描かれ、島に吹く風さえ感じるようなリアリティだ。

死と対話し続けた主人公、その集大成として先祖である島民たちの遺骨を集めつくり上げたという白い骨仏。これは物語の舞台になっている大野島・勝楽寺の納骨堂に祀られている。(川崎さん)

AFRO FUKUOKA 編集長 川崎さん推薦本②:親不孝通りディテクティブ(著・北森鴻)

親不孝通りディテクティブ (講談社文庫)

悪友・鴨ネギコンビが博多の街で大暴れ!

中洲の屋台でバーを営むテッキと、結婚相談所の調査員・キュータ。腐れ縁の通称「鴨ネギコンビ」が、どういうわけか物騒な事件に関わっていく。タクシー強盗と港の火事、そしてスーパーの警報騒ぎ。同時に起こった事件の意外な関連とは……。博多を舞台にしたハードボイルド・ミステリー。

知的で冷静なテッキと博多弁丸出しのやんちゃなキュータの掛け合いが軽妙で、サクサク読み進められる。作品名の「親不孝通り」とは、福岡市・天神にある実在する通り。

イメージが悪いからと2000年に「親富孝通り」に名称が変更されたが、町おこしの一環で17年ぶりに「親不幸」の名称が復活。ぜひ本作を読んで、熱気あふれる博多の街を感じてほしい。(川崎さん)

AFRO FUKUOKA 編集長 川崎さん推薦本③:嫌われ松子の一生(著・山田宗樹)

嫌われ松子の一生(上) (幻冬舎文庫)

哀しくも愛おしい、ある女の波乱万丈の人生

30年前、中学教師だった松子はある事件で教職を追われ、故郷から失踪する。そこから彼女の転落し続ける人生が始まった―。一人の女性の生涯を通して、愛と人生の光と影を炙り出す感動ミステリ巨編。

映画や舞台化もされたタイトルの原作小説。流されるように転げ落ちていってしまう松子の救いようのない人生は映画版とほぼ同じだが、原作には映画のようなコミカルさは見られない。映画版の明るい演出がより切なさを際立たせているようにも感じるので、両方比べてみるのもオススメ。

実は、主人公・松子の出身地は『白仏』の舞台と同じ福岡県大川市大野島。2冊合わせて読むと、作品の解釈もまた変わってくる。(川崎さん)

AFRO FUKUOKA 編集長 川崎さん推薦本④:えいや!っと飛び出すあの一瞬を愛してる(著・小山田咲子)

えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる 新装版

飾らない日常を綴る真摯で瑞々しい筆致

2005年にアルゼンチンを旅行中、車の事故により死去した著者が22歳から24歳の間に綴ったブログをまとめた一冊。身辺のこと、バイト、就職活動、音楽、演劇、写真、読書、旅などの多岐にわたった事柄が、著者独自の観察眼を経て描き出される。

福岡出身である小山田咲子さんが遺した、才能あふれる作品集。目まぐるしく移り変わる日々の何気ない一瞬一瞬でさえも、聡明で思慮深くユーモアに富んだ言葉で瑞々しく切り取られている。全力で生きたその軌跡には、飾りつくされた言葉とは異なる美しさがあることを感じずにはいられない。

これからの未来ある若い人にぜひ読んでもらいたい、心からオススメできる作品だ。(川崎さん)

本を読めば、街がわかる!

今回は本のプロたちに福岡という街の雰囲気や魅力が伝わるオススメの本を紹介してもらった。

ぜひプロが選んだ物語を読んで、作品の視点から福岡という街を見てみてほしい。きっと新しい発見に出会えるはず!

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※「CHINTAI2017年9月号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています
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CHINTAI編集部
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