ヤマト屋書店の書店員とLuccica編集長オススメ! 仙台がもっと好きになる本8選

公開日:2018年4月13日

この街にきっと住みたくなる! 書店員&街情報誌編集部が推薦する物語とは?

街の情報を知り尽くした街情報誌の編集部と、その街の書店員に、読んだら街を好きになる本を紹介してもらうこの企画。

今回は仙台市にあるヤマト屋書店の書店員と、仙台の地域密着型フリーペーパー『Luccica』の編集長に、読んだら東北がもっと好きになるオススメの本を教えてもらった。

書店員が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

ヤマト屋書店仙台三越店 鈴木典子さん
仙台市にある書店チェーン「ヤマト屋書店」。仙台三越店のほか、宮城県に7店舗を構える。県内にはカフェ併設の書店も。書店員歴22年の鈴木さんは児童・文庫棚のコーナーを担当。

ヤマト屋書店仙台三越店 鈴木さん推薦本①:無伴奏(著・小池真理子)

無伴奏 (集英社文庫)

全共闘世代の男女を描く甘く危険な恋物語

1960年代後半、杜の都・仙台。荘厳なバロック音楽の流れる喫茶店で出会い、恋に落ちた野間響子・17歳と堂本渉・21歳。多感で不良っぽい女子高生と、男からも女からも愛される不思議な雰囲気を持った大学生の、危険で美しい恋。そして、2人の恋をひっそりと見守る渉の友人、関裕之介。3人の微妙な関係は、ある事件を引き起こす―。

2016年に映画化もされた、直木賞作家・小池真理子の半自叙伝小説。学園紛争、デモ、フォーク、反戦集会……70年代前後の仙台が舞台で、その頃に青春時代を送った人にはとてもリアルな作品だろう。

仙台ホテルや丸光デパートなどの当時の仙台を思い起こさせる場所や、金港堂書店など今も残る街並みが登場する。(鈴木さん)

ヤマト屋書店仙台三越店 鈴木さん推薦本②:キッチン・ミクリヤの魔法の料理(著・吉田安寿)

キッチン・ミクリヤの魔法の料理~寄り添う海老グラタン~ (双葉文庫)

仙台の小さな洋食店での心温まる“おいしい”物語

仕事と恋人を同時に失ったまどかは、失意の中、幼馴染で「キッチン・ミクリヤ」のシェフ・御厨にオムライスをご馳走になる。懐かしいその味に心から癒やされたまどかは、そのまま「ミクリヤ」で働くことに! ドSな天才シェフやチャラい年下パティシエに囲まれ、まどかは今日も“魔法のように人を幸せにする料理”をお客様に運ぶ。仙台を舞台にした、心もお腹も幸せになる人気シリーズの第一作。

おいしいものを食べると元気になるように、読むと気持ちが明るくなる一冊。主人公のまどかをはじめ、個性豊かなイケメンたちなど、キャラクターが魅力的。また

昔ながらの洋食の描写がたまらなくおいしそう! 仙台には洋食屋が少ないので、実際にこんなお店があったら通いたい。(鈴木さん)

ヤマト屋書店仙台三越店 鈴木さん推薦本③:日和山(著・佐伯一麦)

日和山 佐伯一麦自選短篇集 (講談社文芸文庫)

作家の人生と併走し紡がれ続けた小説世界

新聞配達中の早朝の街で、暗天に閉ざされた北欧の地で、染織家の妻と新たな暮らしを始めた仙台の高台の家で、そして、津波に耐えて残った小高い山の上で―。「私」の実感をないがしろにしない作家のまなざしは常に、「人間が生きて行くこと」を見つめ続けた。

仙台在住の私小説家・佐伯一麦の短編集。表題作の「日和山」では、震災後の仙台について描かれている。日和山とは仙台・石巻にある標高56mの小さな山のこと。山頂からは石巻市が一望でき、かつての景色を偲ばせる眺望となっている。

仙台在住の著者による独自の視点で描かれた、観光的ではない、地元民の目からみた仙台の魅力に気づかされる1冊。リアルな仙台を感じることができる。(鈴木さん)

ヤマト屋書店仙台三越店 鈴木さん推薦本④:ぼくらの七日間戦争(著・宗田理)

ぼくらの七日間戦争 (角川文庫)

いつまでも色あせない「ぼくら」シリーズ第一作

明日から夏休みという日、下町の中学校1年2組の男子生徒たちが突如行方不明になる。事故か誘拐かと親たちは懸命に探すが全く見つからない。実は彼らは河川敷の廃工場に立てこもり、大人たちへの“反乱”を起こしたのだった! テレビや警察、市長選挙汚職事件までも巻き込んだ、七日間に及ぶ大人たちとの大戦争。中高生たちの熱い支持を受け続けるベストセラー。

30年以上前の作品だが、まったく古さを感じさせない、今もなお新鮮な作品。表向きは子ども向けの本だが、60年代の学生運動がモチーフになっていて、大人でも深く考えさせられる内容はさすが。

東京下町を思わせる舞台だが、著者によればモデルとなったのは仙台の青葉区なのだそう。(鈴木さん)

編集部が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

株式会社仙台ぱど Luccica編集部 編集長 小野千怜さん
月1回発行の地域密着型フリーペーパー『Luccica』。グルメやレジャーなどさまざまな特集を組み、仙台の情報を発信している。web:https://luccica-sendai.jp

株式会社仙台ぱど Luccica編集部編集長 小野さんの推薦本①:アヒルと鴨のコインロッカー(著・伊坂幸太郎)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

物語の裏に隠された切ない真実に涙する

主人公・椎名は引越し先のアパートの隣人・河崎に「本屋で広辞苑を盗まないか」と誘われる。そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか椎名は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまっていた……!? 衝撃のラストを迎える傑作ミステリー。

一冊の広辞苑を盗むために本屋を襲うという、ちょっとふざけた話から物語が始まり、ページをめくる手が止まらなくなるほど没頭してしまう作品。

著者の作品には仙台が多く登場する。東北大学への進学をきっかけに来仙し、今も仙台在住という著者はインタビューで「仙台は川や山や海が近いから」小説の舞台にしやすいと語る。その言葉通り、作中では仙台の多数のスポットが描写されている。(小野さん)

株式会社仙台ぱど Luccica編集部編集長 小野さんの推薦本②:青葉繁れる(著・井上ひさし)

新装版 青葉繁れる (文春文庫)

魅力あふれるキャラクターたちのドタバタ青春劇

青葉繁れる城下町・仙台市を舞台に、「東北一の名門校・仙台一高」の落ちこぼれ4人組と、「日本一の名門校・日比谷高校」から仙台一高に転校してきた俊介らが巻き起こす、明朗青春劇。

著者の井上ひさしが仙台一高に在学中(1950~1953年)の青春の日々を描いた半自伝的小説とされている本作。妄想癖のある主人公・稔のまぬけでほろ苦いエピソードの数々に、笑いと懐かしさがこみあげる。

仙台一高のある連坊地区は陸奥国分寺に近く、連坊小路は青葉城下から続く街道だった場所で、今では地下鉄東西線の駅もできた。二女高(現・二華高)のヒロインも登場したように、今でも一高生、二華高生たちの青春の雰囲気がただよう街は、作品と深くリンクする。(小野さん)

株式会社仙台ぱど Luccica編集部編集長 小野さんの推薦本③:ポラーノの広場(著・宮沢賢治)

ポラーノの広場 (新潮文庫)

美しい言葉で彩られるイーハトーヴォの世界

 
役所勤めのキューストは、ある日農夫の子ファゼーロに出会った。ファゼーロが探している伝説の広場「ポラーノの広場」を、キューストも一緒に探すことになり―。(表題作)宮沢賢治の短編童話17編をまとめた作品集。賢治のつむぎだす美しい言葉の数々を堪能できる一冊となっている。

宮沢賢治といえば岩手県のイメージがあるが、この物語は主人公が在住のモリーオ市(盛岡市?)のほか、センダート市という仙台市を彷彿とさせる地名も登場する。とにかく幻想的な印象を受ける作品だ。

東北が誇る作家・宮沢賢治の作品に、仙台から派生しているであろうセンダート市が出てくるのは仙台市民にとってうれしいこと。夢心地になれる美しい作品をぜひ。(小野さん)

株式会社仙台ぱど Luccica編集部編集長 小野さんの推薦本④:ツアコン!(著・相戸結衣)

ツアコン! (宝島社文庫『日本ラブストーリー大賞』シリーズ)

新人ツアコン・南とめぐる仙台おもてなしの旅

主人公・香月南が勤めているのは、ちょっと変わった旅行会社・けやきラウンジ。婚活ツアーや被災地巡りツアーなどを通して、南はツアコンの極意を学んでいく。そんな折、急きょドバイから100人以上の観光客がやってくることになり!?

仙台の旅行会社で働く主人公の奮闘ぶりを描いた作品。ツアーコンシェルジュという職業がテーマなだけあって作中では多くの観光名所が登場し、旅行気分が味わえる。さまざまな難題に立ち向かう主人公の物語を通して、仙台・宮城の新たな魅力に気づくことができる作品だ。

さらに宮城だけでなく、東北各地の観光地も多数登場。ぜひ宮城を拠点に、東北に足を運んで色々な魅力を発見していただきたい。(小野さん)

本を読めば、街がわかる!

今回は仙台の書店員と街情報誌の編集長にオススメの街本を紹介してもらった。

心温まるストーリーから懐かしい青春時代を彷彿とさせる作品まで、幅広い物語が東北を舞台としていることがわかった。東北をもっと知りたい、東北に住むことが決まっている人は、今回オススメしてくれた本を頼りに、街を巡ってみるのもいいかもしれない。

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※「CHINTAI2017年9月号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています
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CHINTAI編集部
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